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第十一話 血を流させる槍

獣人のようなモンスターを倒すために、

俺は新たな武器を考えることにした。

ただ刺すだけでは、あいつを仕留めることはできない。

「……血を抜く」


考えたのは、出血による死を狙う武器だ。

太い木を貫けるような膂力があれば別だが、俺にはそんな力はない。

ならば、急所に刺さなくても、確実に相手を弱らせる方法を取るしかない。


戦闘の基本は、敵を動けなくすること。

人間同士の戦いならば、関節を極めたり、意識を刈り取ったりする方法もある。

しかし、モンスター相手にそんなものが通用するとは思えない。


俺は、生物の倒し方について改めて考えた。


人間や動物が致命傷を負う原因にはいくつかのパターンがある。

脳や心臓といった急所を直接攻撃する。

内臓を破壊して機能不全にする。

または、大量の出血によるショック死を引き起こす。


このうち、急所を正確に狙うのは難しい。

俺に剣術の心得があるわけでもなく、モンスターの解剖図があるわけでもない。


ならば、確実に機能する方法を選ぶしかない。


「出血死……これなら、俺にもできる」


どれだけ強靭な肉体を持っていようと、

血がなくなれば、生物は生きていられない。


問題は、そのための武器だ。


「素材は……」


俺は森の中を歩きながら、適した木を探した。

この辺りには、竹のような木が生えている。

しなやかで軽く、それでいて折れにくい。


「これならいけるな」


一本を選び、根本から切り倒した。

長さは俺の肩ほど、太さは握りやすい程度。

まずは先端を鋭く削り、槍の形を作る。


「……いい感じだ」


だが、ここからが重要だ。


槍の先端だけではなく、そこに小さな穴をいくつも開けていく。

刺した瞬間、そこから血が流れ続けるようにするためだ。


挿絵(By みてみん)


「この加工がどれだけ効果があるか……試してみるしかないな」


道具はないが、石を使って少しずつ削り、細かい穴を開けていく。

時間はかかったが、ようやく槍は完成した。


「……さて、試す相手を探すか」


獣人のようなモンスター相手に、いきなり実戦は無謀だ。

まずは、もう少し手頃な相手で試す必要がある。


その時、俺の視界に、森の中を歩く四足の影が入った。


「……ちょうどいい」


猪のような姿をしたモンスターだ。

大きさは普通の猪よりもやや巨大。

だが、獣人に比べれば遥かに戦いやすいはず。


俺は静かに息を整え、槍を握りしめた。

まずは、この武器が本当に使えるかどうか。


「試させてもらうぞ……」


猪型モンスターは地面を嗅ぎながらゆっくりと歩いている。

まだ俺の存在には気付いていないようだ。


チャンスだ。


俺は足音を殺しながら、慎重に距離を詰める。

一撃で仕留められなくてもいい。

狙うのは、脚か首。

そこに刺さりさえすれば、血は流れ続け、やがて動きを鈍らせるはずだ。


「……いける」


あと五歩。

四歩。

三歩。


その瞬間、俺の足元で枯葉がカサリと鳴った。


猪型モンスターが一瞬でこちらを向く。


「まずい!」


俺は反射的に槍を構えた。


猪型モンスターは低い唸り声を上げ、突進してきた。


挿絵(By みてみん)


「くそっ!」


横に飛び退る。

地面がえぐれるほどの勢いだった。

まともに食らえば、確実に内臓が潰れて死ぬ。


「……こいつ、結構やばいな」


だが、怯んではいられない。

今の俺には、この槍を試すしか選択肢がない。


俺は素早く立ち上がり、猪型モンスターが再び突進してくるのを待った。

こっちを完全にロックオンしている。


「狙い通り……!」


俺は突進してくる猪型モンスターの側面へと回り込み、

全力で槍を突き刺した。


グサッ!


「……よし!」


槍が深く刺さる。

しかし、猪型モンスターはそれでも止まらず暴れ回る。


「くそっ……!」


だが、数秒後――

猪型モンスターの動きが鈍くなった。


槍に開けた無数の穴から、血がとめどなく流れている。

出血量が明らかに多い。


「……いける」


そのまま、俺は槍を押し込み、さらに深く突き刺した。

すると、猪型モンスターの足がもつれ、ついに崩れ落ちる。


「……やった」


俺は槍を引き抜き、深く息を吐いた。

見事に、狙い通りの効果を発揮してくれた。


この槍なら、戦える。


獣人のようなモンスター相手にも、通用するかもしれない。


「……もう少し改良が必要か」


より深く刺さるようにするには?

もっと出血させるには?

まだ工夫できる余地はある。


「でも、これで一歩前進だな……」


俺は血で染まった槍を見つめながら、小さく笑った。

ついに初めてのモンスター討伐に成功したアレン。

血抜き槍は確かな効果を発揮した。

しかし、まだ改良の余地があると考えたアレンは、さらに武器を磨き上げることを決意する。

次回、より強力な槍へと進化させる。

お楽しみに。

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