第十話 見つかる前に
前書き
拠点を作り、焚き火を確保した。
しかし、ここが安全だと決めつけるのは早い。
俺はこの森の支配者じゃない。
俺はただの、外から迷い込んだ異物に過ぎない。
そして、またしてもあいつが現れた。
「……また、あいつか」
俺は静かに草陰に身を潜め、目の前の光景を凝視した。
遠くに見えるのは、転生初日に遭遇したあの獣人のようなモンスター。
黒い体毛に覆われ、筋骨隆々の体格。
鋭い爪を持ち、獰猛な目つきをしたそれは、明らかに俺より上位の捕食者だった。
初日に遭遇した時は、俺はただ逃げるしかなかった。
戦うなんて考えすら浮かばなかった。
しかし、今の俺は違う。
「……倒せるか?」
前回の俺なら、迷わず逃げる選択をしていただろう。
けれど、今は考えてしまう。
もしかすると、今の俺なら倒せるんじゃないか、と。
この森に来てから、俺は変わった。
食料を確保し、拠点を作り、火を手に入れた。
何より、大型の鳥を倒して喰ったことで、確実に体の調子が変わっているのを感じる。
力がみなぎり、足取りが軽い。
今なら、あのモンスターに勝てる可能性がある。
「……いや」
すぐに、その考えを振り払う。
闇雲に突っ込んだところで、勝てる保証はない。
一撃でも爪を食らえば、俺の体は裂けるだろう。
武器がいる。
今の俺には、モンスターと戦うための決定的な武器がない。
手持ちの槍はあるが、枝を削っただけの頼りないものだ。
あれで勝てるとは思えない。
「もっと強い武器が必要だ……」
俺は草陰に身を潜めたまま、じっとモンスターの動きを観察した。
あいつは鼻をクンクンと動かしながら、ゆっくりと森の中を進んでいる。
まるで何かを探しているようだった。
「拠点が見つかる前に、どうにかしないと……」
このまま、またどこかへ行ってくれるならいい。
だが、もし拠点の近くに居座られたら、俺は安心して眠ることもできない。
今はまだ、戦えない。
まずは、戦うための準備をしないといけない。
「……武器を作る」
俺は静かにその場を離れ、拠点へ戻った。
このまま逃げ続けるわけにはいかない。
倒せる可能性があるのなら、俺はその手段を確保するべきだ。
そして、俺は新たな武器の考案を始めた。
ついにアレンがモンスターとの戦いを決意。
しかし、今の装備では勝てないと判断し、まずは武器を作ることにした。
次回、新たな武器を考案する回となる。
お楽しみに。




