第8話 海運ギルド
冒険者ギルドを後にすると最後の目的地である海運ギルドへと向かう。
「父さん海運ギルドって何をやってるところなの?」
冒険者・商業ギルドは異世界の定番だからなんとなくわかるけど海運ギルドなんてものはあまり見かけない。名前からして船に関して何だろうけど商業ギルでもぶちゃけよくないかと思うわけですよ。
「海運ギルドはな港町のみにあるギルドで船の管理と荷物の確認がメインなんだが海の魔物の間引きもやってくれてるんだ。漁師たちが安心して仕事ができるよう強い魔物がいないような環境を作ってくれる大事なギルドなんだぞ。」
海の魔物か・・・そりゃあ地上にいて空にいるんだから海にもいるよな。でも海の魔物ってどうやって倒すんだ?潜られて船底から攻撃されたら何にもできないよな。
「海の魔物って倒せるの?」
「不思議か?海運ギルドには国から雷の魔道具が支給されてるんだ。それさえ使えばあとはしびれて浮き上がってきた魔物を槍で突くだけなんだ。話を聞くだけだと簡単だろ?でも海の魔物も馬鹿じゃないから反撃はしてくるしうまくよけたりとなかなかに強いんだよ。そうだな~海運ギルドの職員は冒険者ギルドでいうCランクぐらい、つまり中堅どころの実力がないと入れないほど凄腕集団なんだぞ。」
船の上は足場が悪いだろうから低いランクの人だと戦えないんだろうな。それにしても雷の魔道具かどんなものなんだろう?うちに火と水と光の魔道具はあるけどほかのものは見たことないからぜひ見てみたい。属性から考えてほかにもたくさんの種類があるだろうからいつか全属性集めてみたいものだ。
そうそう僕は仙術のせいで魔法が使えないんだけど魔道具は使えるんだ。だから仙術が十分にそろっていない今の状況ではなるべくいろいろ持っておきたいんだよね。
「そろそろ着くぞ。」
海運ギルドの見た目は木造の長屋だった。中を覗いてみると様々な船がつけてあり商人から船乗り、職員とたくさんの人がひしめき合っていた。
「はぐれるとまずいから手をつなぐぞ。ギブソン注意しておけよ。」
「わかりました。ニュクス様スリにはお気を付けください。何か貴重品などはお持ちになっていますか?お持ちでしたら私が預かります。」
「何も持ってきてないから大丈夫だよ。それにしてもそんなに治安が良くないんだね。」
「人が集まる場所にはそういう輩も集まってきます。見つかり捕まればただではすみませんがそれだけ実入りがいいので犯罪の件数が少なくないのです。」
「まじめに働けばいいのにね~。」
「そうなんですがスリを行っているのは成人していない子供たちが多いんですよ。成人していない子供は働ける仕事が少ないですからね、どうしても孤児なんかの子はそういった悪事に手を染めてしまうんです。」
仕事に就けないか・・・僕が何か初めて従業員として雇えば少しは減るかな?孤児院もあるだろうけど全部が全部救えるわけじゃないけど自分の住む領地の人たちにはなるべく安全で安心な生活を送ってほしいからやれそうなことはやってみようか。
「ダルタン様も対策は行っているみたいですのでニュクス様やリオン様も大きくなったら手伝ってあげてください。」
「おーい、話は終わったか?奥に行くぞ!」
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人が多く行きかう区画を抜けると小さな事務所が見えてきた。小窓が一つあったのでそこから覗いてみると山のように書類が積まれた机に頭を抱えうずくまるつるつる頭の男性が一人さみしそうに座っていた。
なんだか入りずらい雰囲気なのだが、そんなことは気にしないと父さんは扉をバンッ!と開け中へ入っていた。
「あんだよ!仕事の邪魔をしに来たのか。」
「何言ってんだよシャフト、いつ見に来ても頭抱えて固まってるじゃないか。仕事なんて大してやってないだろ?」
「馬鹿言え!俺だってちゃんと仕事してるときはあるんだよ!。」
「じゃあ今何やってたんだ?詳しくいってみ。」
「・・・・・・家計簿。」
「ほら見ろ!仕事なんてしてないじゃないか。家計簿なんて家でやるもんで仕事場でやるものじゃないだろ~?」
すごい仲がよさそうだ。今までの人とは接し方が全く違う。
「ねえギブソン、二人って大の仲良しなの?」
「子供のころからの付き合いらしいですよ。付き合いとはいっても貴族としてではなく町の悪ガキとしてだそうですが。」
悪ガキか、父さんにもそんな時代があったんだな。それにしても家計簿ね~あの人仕事しなくてもいいのかな?