第6話 冒険者ギルド
商業ギルドを出て冒険者ギルド前までやってきました。
商業ギルドより大きい建物だが少し汚れが目立つ作りの建物だ。使用者の違いだろうがここで魔物の解体をしているだろうし、酒場も併設されているようで外からでも笑い声が聞こえてくるから見た目よりも機能重視なのだろう。
「ビビってんのか?ギブソンに抱っこしてもらって入るか?」
「ビビってないよ!建物を見てただけさ。」
「そうかそうか、てっきり怖くて固まってるかと思っちまった。安心しろ父さんたちがついてるからな。入るぞ。」
父さんに手を引かれ中へと入っていく。入ってすぐこちらの姿を確認した受付の男性がこちらに小走りでやってきた。
「これはダルタン様、本日はどんな御用で。」
「顔見世だ、サントスいるか?」
「こちらへ。」
男性に連れられ奥へと歩いていく。その間周りの様子を見ると皆の目線がこちらへと向いていた。
「ニュクス様あまり周りをじろじろと見ないほうがよろしいかと。今回の顔見世はあちらにいる冒険者の方々に知ってもらうためでもあるんですよ。もし今後外に出ることがあっても絡まれないように貴族の一員であると見せつけているんです。」
「絡まれるの?」
「どこにでもアホなものはいますからね。今日この場にいても私たちがいなければ絡む輩もいます、安全は絶対に保障されたわけではないので警戒を怠らないよう気を付けてください。」
はーテンプレは回避できたわけではないと。それにしても想像通りって感じだな。依頼書の張られたボードに酒を飲むむさいおっさんたち、それから受付嬢に絡むガラの悪いやつ。これまた厄介ごとか?
「どうしてランクが上がらないんだ!規定通りの依頼数はこなしたはずだ!」
「依頼の達成数は規定数こなされていますがギルドの評価が足りません。要は信用です。依頼主からの評価はすべて低く名指しで避けられているぐらいですので心を入れ替えてもうしばらく経験を積んでいただく必要があるかと。」
「うるせえ!こんなちまちました依頼なんざ誰が二度とやるか!俺は戦闘が得意なんだ、討伐依頼をよこせば最高評価でやってやるよ。」
「討伐ですとゴブリンかホーンラビットが常設されていますのでそちらを受けていただければよいかと。」
「そんなもん大した評価にならねだろ!もっといい依頼はないのか。」
「あることはありますがランクが足りません。」
「じゃあ今すぐおれのランクでもできる依頼を用意しろ!」
めちゃくちゃ横暴ですやん。それにしてもランクを上げる条件に依頼の評価が必要とはしっかりしてるな。上位のランクならそれくらいあるだろうけど見るからに冒険者初めて1年ぐらいですって見た目だもんなおそらく低ランクだろう。
(・・・・ったくうるせえな。)
ん?なんか受付嬢が小声で何か。
「あ?なんか言ったか?」
「だからうるせえって言ったんだよ!」
まさかの受付嬢からの鉄拳炸裂!くらった男は殴り飛ばされお手本のように飛んだあと地面に倒れる。
頬を押さえ何かを言おうとした男の言葉を遮り罵声を浴びせる受付嬢。
「てめぇ大した力も度胸もないくせに偉そうにしてんじゃねぇよ!こっちが女だからってさっきから舐めた態度取りやがってもう我慢の限界。何回言ってもわかってねぇ馬鹿な脳みそにもわかるようもう一度だけわかりやすくいってやるよ。冒険者向いてねぇんだよそんなに戦闘がしたけりゃ傭兵にでもなりやがれ!いやなら真面目に依頼こなせや!」
受付嬢の強い口調に頬を押さえたまま固まる男性、あまりの迫力に心が折れたのか心なしか体が小さくそれと震えているような。わかるぞその気持ち、優しい人ほど起こるときは怖いからな。
「いいぞ~ニルちゃん!」
「雑用もまともにこなせねぇのにランクなんて上がるわけねえだろ。」
「冒険者になって半年のやつがうぬぼれるんじゃねえよ。」
ギルド内は歓声に包まれていた。あ~たまにこの光景が起きてるんだろうな。明らかに恒例行事の一つとして定着してる感じだ。ギブソンの言ってたアホなやつとはあの男のことを言うんだろうな。明らかに絡んできそうだ。
「で、どうすんだよ。」
「へ。」
「どうするか聞いてるんだよ!真面目に冒険者やるのかこの町出て傭兵に転向するかを!」
「ぼ、冒険者でやらせてください。まじめにやりますんでお願いします。」
ちょっとは根性あるな。逆切れして傭兵になるかと思ったけど冒険者にとどまるとは。
「だったら今すぐ常設依頼こなしてこい!」
「はい!行かせてもらいます。」
男性はすくっと立ち上がり全力疾走でギルドを出ていった。姉に始まりレーレンの姉御に受付嬢、この町の女性は強い人ばかりだな~。
「えーっと、皆さまお騒がせしました!」
受付嬢は頬を掻いた後慌てて受付奥の部屋へ隠れていった。
「あんな感じで絡まれますので要注意を。」
「うん、ギブソンの言った意味が分かったよ。注意しておく。」