第3話 初めてのお外
「ニュクス準備はできてるか?」
「もちろん!いつでも出られるよ。」
「それじゃあ今から町に向かうが俺もしくは護衛の騎士から離れないようにしろよ。うちの領地は比較的安全だが外の世界には危険なことがいっぱいある。安全は絶対じゃないんだ自分の力で回避できるものはよけておかないとな。」
「うん、絶対にはなれないようついていく。」
「ギブソン、頼んだぞ。」
「はい。」
父さんの隣にいた赤髪長身の男性が敬礼をした。
ギブソン君はうちの騎士団に入ってまだ3年目だが非常に優秀でいつも姉さまと模擬戦をしている武闘派の騎士なのである。そしてこのギブソン君なんとレアスキル持ちなんだ。
そのスキルとは操剣、手を触れなくても剣を自由自在に操ることができ何本何十本と一度に扱うことができるとんでもスキルなのだ。
「ニュクス様、私が必ず守りますので安心してついてきてください。」
ようやく外に出ることができる。3人で家の門を出るとまず目に飛び込んできたのは透き通るほどきれいな海に真っ白な海岸だ。まだまだ距離があるはずなのにここからでも透けて見えるなんて近くで見たらどれほどきれいなのだろうか?
地球のように汚染されていない水はここまできれいになるのかと感心していると頭を突かれた。
「おーい、景色に見とれるのはいいが用事を済ませてからだ。そのあとだったらいくらでも見せてやるから戻ってこい。」
いけない、あまりのきれいさに固まっていたようだ。しっかりしなくては。
「まずはどこに行くの?」
「最初は商業ギルドだ。その次に冒険者ギルド、最後に港の海運ギルドの順番で顔を出しに行く。ニュクスの顔を覚えてもらうだけだからすぐに終わるけどな。わはは。」
最初の外出が挨拶回りか~面倒だな。別にこの領地を継ぐわけではないし、姉さんの顔さえ覚えてくれていれば何の問題もないと思うんだけどな。
「そんなに面倒か?」
父さんの言葉に思わず驚いた。
「へ!声に出てた?」
「いえ、顔が一瞬クシャっとなっていましたよ。」
ギブソンの指摘にあちゃ~と思いながら頭を押さえる。今まであんまり気にしたことはなかったけど顔に出やすいタイプだったか。無表情の練習でもしようかな?無表情になる術を作ったほうが手っ取り早いか?
「おーい、また固まってるぞ!」
「 ダルタン様、もうほっといてこのまま運びましょう。」
「そうするか、ギブソン頼んだ。」
固まるニュクスをわきに抱え商業ギルドへ向かって歩いていく。
~~~~~~~~~~
よし!表情固定の術ができたぞ。これでどんなことがあっても眉一つ動くことのない鉄仮面を作ることができる。愛想笑いだってお手の物だ。とりあえず無表情にして父さんたちの反応を見よう。って痛!
「痛て!」
「お前がずっと固まってるのが悪いんだろ!何度も声をかけてるのに反応しないしとっくにギルドについてるぞ。」
「え?もうギルドについたの?いつの間に。これが商業ギルドかおっきいな!」
「あの、ニュクス様。声の抑揚はあるのに表情がピクリとも変わらないのは気味が悪いので元に戻してもらっていいですか。それから変な術を作らないでください。」
「なっ!お前術を作るのは大変だとかなんだか言ってたのにそんなくだらない術を作ったのか。もっと身になる術を作れよ。」
「十分身になってるよ。見てよこの表情筋一つ動かない顔を。これでどんなことがあっても感情を読み解かれることはないんだよ。」
「あのな~表情が変わらなくて利益があるのは商人か悪いことをしてるやつのどっちかだぞ。よーく考えてみろ話しかけたやつの表情が全く変わらなかったら普通不信に思うだろ。それに少しレアだが読心術ってスキルがあるからそんなもん無駄だぞ。」
なんてこった、そんなスキルがあるなんて。この術を作った意味がない。でも作ったからにはどこかで役に立つだろ。
「わかったらはやく術を解除しろ。」
術を解き顔の筋肉をよくもんだ後百面相をしたら父さんにグーサインを出す。
「それじゃあ入るぞ。」