第2話 誕生
「おぎゃああ!おぎゃああ!・・・・」
蠟燭で灯された一室に生まれたばかりの赤子の鳴き声が響き渡る。
鳴き声を上げる赤子をそっと優しく抱き上げ母親は笑顔を見せ語りかける。
「生まれてきてくれてありがとう。あなたの名前はニュクス、ニュクス=カフカ。カフカ子爵の長男よ。」
バン!!
扉が勢いよく開き一人の男性と少女が入ってきた。
「ナターリア無事か!子供は!」
「あなたそんなに慌てないで。私はもちろん赤ちゃんも無事よ。」
「お母さま、私にも赤ちゃんを見せてください!」
「リオンも落ち着いて。見るだけよほらあなたの弟ニュクスよ。」
「わぁ~ちっちゃーい。この子が私の弟・・・うん。お母さま!私、弟を守れるよう立派に成長します。お父さますぐに特訓しに行きましょう!」
「お、おい。おれにも見させてくれよ。それにもう外は暗くなってるから明日からにしよう。」
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それから数年たち俺は成長して現在7歳だ。
え?成長の過程はって?そんなもん覚えてるわけないだろ。お前たちも保育園・幼稚園ぐらいの記憶なんてちょっとしか記憶になくて自分がどう行動してたなんか少しも覚えてないだろ?
とりあえず今の状況を説明しよう。うちの家はカフカ子爵家という貴族で当主はダルタン、俺の父さんになる人で母さんがナターリア。兄弟はおらず姉が一人いてリオン姉さまという。
父さんは生粋の貴族だが母さんは元冒険者らしくAランクまで上り詰めた凄腕の冒険者らしい。その遺伝子のおかげか姉は貴族としての頭に冒険者の力を併せ持った万能超人のような人になってしまったらしい。
年齢は俺より5歳上の12歳で地球なら小6か中一ぐらいなのだがうちの兵士と正面からバチバチにやりあえるほど武にたけているらしい。それに加えて頭がいいので父さんの仕事を少しずつ覚え書類整理などを手伝っているらしい。
この世界では女性でも貴族の当主となることができるらしく最初の子が女性であればその子が継承権第一位となる。そのおかげでうちはリオン姉さまが次期当主になる予定なので俺は自由に過ごさせてもらっている。といっても必要最低限の勉強はしているけどね。
それでも前世の記憶があるため文字や歴史といったこの世界固有のもの以外は楽勝で今更勉強しなくても全問正解なので勉強を一部免除してもらってる。
そしてここからが大事なのだが、うちの領地は神様が言っていた通り海がすぐ横にある街になっており毎日海へ漁師たちが魚を捕りに漁へ行っている。そして海があり船が出ているということはこちらへ入ってくる船もあるため貿易も盛んになっておりいろいろな国や地域の商品が市場に出ているらしい。
らしいというのは俺がまだ家の敷地内から一度出たことがなく実際に自分の目で見たことがないからだ。そのためもらったスキルの一つである釣りがまだできていないのである。それ以外のスキルは既に使用実験は済んでいる。
まず魔素喰いだがこれは説明通り霞のように魔素が食えるというもだった。ただ食べた魔素は体に蓄積され体を強化したり仙術を強化することができる。もちろんおなかだって膨れるので一日に貯められる魔素の量は限られている。
そして仙術だがこれははっきりって創造魔法と何ら変わりない。自分の思い浮かべたことを現実に起こすことができるのだ。例えば水の入った樽にデコピンをすれば中身を酒にすることだってできてしまうし、雷を落としたり火を出したりと攻撃魔法の真似事だってできてしまう。
一つ問題点があるとすれば使用したい術を使う際に事前に術として作らなければいけないのだがその対価が魔素であり、強さや内容の複雑さに比例して消費魔素が増えていくのだ。一度作ってしまえばそのあとは何の対価もなく何度も使用できるからいいのだが一日の摂取魔素量が限られているので何でもかんでも術を作ることができず今の自分に必要なものをしっかりと吟味しなければいけないのだ。
今俺が覚えている術は、指炎・硬化・危機感知の3つ。
指炎は指から炎を出す術で生活するうえで簡単に火を起こせるのはかなり役に立つのだ。というのは建前でぶっちゃけBL〇〇CHのバズ〇ーに憧れただけです、すみません。
硬化はそのままで、体を固くする術。硬くしても動きはそのままなの覚えてからずっと使い続けているのでケガとは無縁の生活をさせてもらってます。強度的には今のところ鉄の剣で切られても少し痛いかな?ぐらいで血は全くでない。
危機感知は自分に危機が迫れば教えてくれるもので、命の危険から自分にとって不都合なことまで知らせてくれる。
以上術と現状の紹介なのだが、今日はこれから初めての外出を行う。見たいところというか物がたくさんあるので今日一日で回り切れないだろうが大いに楽しもうと思っている。
俺の準備はもう終わっているのだが父さんと護衛の兵士の準備がまだかかるらしく庭に座り込んで待っている。
「おーい!ニュクス。どこにいるんだ!」
父さんの声だ、おそらく準備が終わったんだろう。ようやく出かけられそうだ。
「外にいるよ!」