第三十四話 くたばれ!イェーニット学園!
「ハーティンもウィジも仲直りしたとこだし、新入生歓迎パーティーを楽しみましょう?」
ミアウはウェイターを止めて二人にグラスを渡し、自分のグラスも取る。
「ウィジの学園生活に」
ハーティンもウィジもミアウに続いてグラスを上げた。
『乾杯』
「君も新入生かい?」
「そうよ」
後ろから声をかかれれたシュリーユは返事をする。振り向くと顔馴染みがいた。
「シヤ? やだー! 知らないふりはやめてよ、もう」
ウィルディッシヤ王子だ。シュリーユがタメ口を使っただけで悪態を吐いてきたタルト王子の弟。
今日の新入生歓迎会のほぼ主役だ。
「ごめんごめん。ちょっと嫌なことがあって……」
「魔王様関連だ? そうでしょ」
シュリーユはウェイトレスからグラスを二つ取りシヤ王子に渡す。
「あぁ。父上関連だ」
シヤはそれ以上は言わずグラスを揺らす。
「魔王を父に持つって大変そうね」
「大変だよ。でも父上は僕の誇りだ。父上はどうか分からないけど。ほら、これまで魔王の息子はずっと主席で合格してたじゃないか。僕はそれができなかったし……」
「これまでは買収でもしてたんじゃなあい?」
「ありえるな、でも兄上は主席だった」
「じゃあタルト王子は入学してから頭が悪くなったんだ?」
ウィルタルト王子は高等部に主席で入学したが、二年生の今となっては成績面でも性格面でも問題児だ。
「兄上は受験だけ頑張ったんだろ、たぶん」
「信じるよ、タルト王子とはまだちゃんと話してもないから。噂通りの人ならフィクションガールにネタ流す」
シュリーユの言葉にシヤは兄の不正行為が記事の見出しいっぱいになっている様子を想像する。
「……君と話すのはここら辺にしておく。これ以上ネタにされたらたまったもんじゃない。君も上級生と縁を作ったほうがいいぞ、その性格ならすぐに気に入られるだろうから」
嫌味に気付かずシュリーユにはただお礼を言う。シヤは彼女の頭を掴む前に席を立つ。
「シヤ! 見つからないから来てないのかと思ったぞ!」
シヤが席を立ったところにタルト王子が駆けつけてきた。魔王と同じ噂通りの金髪だが彼は根本が黒い。
「ウィルタルト王子ですか? 初めまして、新入生のシュリーユです」
シュリーユは左手で録音の魔術具をオンにして後ろで手を組む。
「うわー美人さんだ。生粋のウァニュ家なんだって? とんだ尻軽女なんだろうな」
タルトはジョークのように言ってシュリーユの腰に手を回した。しかし弟に引っ叩かれ顔を顰める。
「シヤはあっちに行っとけ、彼女と話す」
「兄さん、気をつけて。彼女ゴシップ好きだから」
そう言ってシヤはその場を去った。弟の後ろ姿を見てタルトは口角を上げながらウィジの隣に座る。彼は通りかかったウェイターのトレーからグラスを二つ取り、シュリーユに渡して乾杯した。
「君の瞳に」
シュリーユは胃から上がってきそうなものをジュースと一緒に飲み込んだ。
次回 破滅への序曲




