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リッチガール ~fiction time~  作者: 華小雪
シーズン1 M
33/36

第三十二話 ウァルティーニ家の地獄の朝食

『知ってる? ウァルティーニ当主は休みの日は家族水入らずで朝食を取ってるみたい。でも今日の朝食は違うようね。Wウィルジウス・W騎士様もウァニュ家のCシック様も執事もどきのBベルディーナウトも。

 もちろん家族になったばっかりのSウィジも。Mミアウは大変だね。前までパパと二人きりの朝だったのに。でもね、大人数もいいわよ? 朝からパーティーみたいにはしゃいで。

 わたし、今日は新入生歓迎パーティーたのしみよ。Hハーティンはなにをやらかすの?今日もいっぱいゴシップが届きそう!

 ウァルティーニ家の食卓の話は屋敷の者からのリークよ。だれも屋敷の住人とは言ってないわよ。またね。~フィクションタイム~』



「パパ、これはどういうこと? なんで家族の朝食にシックたちがいるのよ」


 ミアウ・ウァルティーニは自分の椅子に座りながら不満をぶつける。


「別にいいだろ? 嫌なら追い出すが」


 上座にいるのはウァルティーニ家当主、エリック・ウァルティーニ、ミアウの父だ。


「あら、これは家族の食事会だったのですか? では、ボクはここで」


 立ち上がろうと椅子を引くボクっ子、シュウウィジディー。


「ちょっとまて、ウィジ、待て」

「なんですか? ウァルティーニ様」

「君は家族だ。養子縁組もしただろう?」


 ウィジは少し考える。


「しましたね。でも今までウァルティーニ様とミアウで朝食を取っていたのでしょう? ボクがいたら家族水入らずになりませんよ」

「いや、君はもう家族だよ。これからは三人で朝食を……」

「四人よ。シックが見えない?」


 ミアウが口をはさむ。


「シックは今から追い出すから。だから、これからは三人で……」

「ウェーイ! 朝からパーティーだあー! シックのワイン、みんなで飲も!」


 居候のベルディーナウトが参戦してきた。


「ちょっと、ベディー! シックに怒られるって!」


 涙目のウィルジウスがベルディーナウトを追いかけて来た。

 状況を理解していないエリックが席を立つ。


「ウィルジウス、どういうことだ……」

「なにしてくれとんねん! このクソベディー!」


 ベディーの頭にシックの革靴が飛ぶ。


「やだ、汚いじゃない、シック!」

「いいだろ! このくらい! あれはパパからもらった俺のワインだ!」


 シックはもう片方の靴をミアウの後ろに投げる。


「“パパ”って……。どっちのだよ」


 ベディーが呟く。

 シックは自分のブローチをベディーに命中させた。


「やましいことがない、普通の親のほうを言ってるんだよ!」

「なんだよ、いちいちうるっせえな! もう一つの意味合いでもあるのかよ!」

「……ねえよ! 早くワイン返せ!」


 ベディーとシックがワインを取り合う。


「そんなにしたら落ちちゃうよ?」


 ウィルジウスの言葉は無意味だった。


 無数のガラスが飛び散る。

 白い大理石の床に広がるワインレッドはとても美しかった。




「じゃあ学校行ってくるわね」

「ミアウさん、待って! 僕も行きます」


 階段を駆け下りるウィジを待たずミアウは玄関を出る。

 窓からは早々に走り去る馬車が見えた。


「待ってくれなかった……。馬車、まだありますかね?」

「どうだろうね。朝のこの時間は取られちゃうから早く行きなさい」

「はい、では行ってきます。えーっと……お父様」


 エリックはウィジに父と呼んでもらえたことが嬉しく、満面の笑みで見送る。


「いってらっしゃい」



「なんでこんなことになるんだよお」


 シックは一人、布巾で床をこする。


「大丈夫です、ベディーは磔にしときました!」


 ウィルジウスはシックから布巾を奪い、床を拭く。


「ベディーの罪とかどーでもいいから。僕はただこのワインが飲みたかったんだ。

 このワインはね、僕が生まれた年の物なんだ。それを二十五の誕生日で父にもらって」

「そうなんですね。シック様は二十五以上なんですか」

「……それでね、今夜飲もうと思って、父をここに呼んだんだ。ないと知ったら、悲死んじゃうよお」


 シックは床にへたり込む。


「シック様のお父様は、ザック・ウァニュですか?」

「うん? そうだけど」


 ウィルジウスは一人呟く。


「あの、ザック・ウァニュ……」

次回 上流社会

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