第二十三話 学園の王子
『あれ? イェーニット学園にまだ王子様が来てない? だれかわたしに情報ちょうだい! ~フィクションタイム~』
「これを……ミアウ・ウァルティーニ様にですか?」
「あぁ、よろしく頼む」
ウィルタルト・ウィルディーは従者にお礼をして校門を通る。もう入学式が始まっているというのに何十人かの野次馬が集まっている。休み明けだからか、次期王候補会議が始まるからか。
「会議の影響はすごいですね。出席されるミアウ様は液体をかけられ、ハーティン様もアダーステルト様もそのような状態だったと聞いています」
「ミアウも大変だな。シュウウィジディー令嬢は?」
ウィルタルトはバックを自分で持ち、扉も自分で開ける。従者は資料を見ながら話す。
「御令嬢は人が集まるだけで特にこれといったことは。ウィルタルト様、頭に粉が」
従者の彼はウィルタルトの頭に手を伸ばす。タルトはそれを制して頭の粉を取り、舐めてみる。周りの学生は目を見開いていた。
「大丈夫だ。ただの粉だ」
彼はホッとしながら足を止めた。
「では、ここまでです」
「あぁ」
ウィルタルトは頷く。そして一人で校内を歩く。ここは記者が来れないのでシャッター音はないと思ったが、学生の中でも魔法の目を向けている者がいる。きっとアンノウンに流すのだろう。
「タルト?」
後ろからウィルタルトを呼ぶ声が聞こえる。野次馬ではなさそうだ。咄嗟に振り返る。
「ミアウ!?」
タルトは驚いて間抜けな声を出してしまう。母に習った行儀作法も咄嗟には出来ない。
髪がぼさぼさのミアウ・ウァルティーニはウィルタルトに近づいてくる。
「久しぶり。帰ってきたの」
「そっ、そうだったな。あの、ミアウ……」
「あら? ウィルタルト王子。ミアウはこれから入学式に行くところよ?」
ウィルタルトの言葉を遮った勇気のある子はハーティン・ムーンだ。彼女はミアウに伸ばしたタルトの手を叩いて、お辞儀をしながらミアウを連れて行く。
「ちょっと、ハーティン?」
「いいから入学式行くわよ。あんたがトイレ行ってて遅くなったのよ? また怒られちゃうわ」
タルトはその様子を見ながら首を傾げる。
「広場はあっちか?」
従者もいない中、タルトの言葉に答える者はいなかった。
『みんなありがと。WT王子は遅刻した分際で呑気に広場に向かってるみたい。その様子をお父さんが見たらどう思うかな? いつもの王子を見せて。じゃあねみんな。またアンノウンの元に帰って来て! ~フィクションタイム~』
次回 父と子 ~対立しちゃうよね~




