第二十話 危険なお誘い
シュウは広場まで続く廊下を早歩きで過ぎる。
『ほら、君、かわいいから』
シュウは先ほど言われた言葉を頭の中で繰り返す。背中に汗が流れる。寒気を感じ、腕をさする。前を見ると校長室があった。何人かいて、少し騒がしい。
「もう! Ⅿ、わたしを見捨てたわね?」
「いいじゃない。なにも罰なかったんでしょ? 幸運よ」
「そうよ! ハーティン!」
「うんうん!」
シュウは聞いた名前に足を止める。
「ミアウ……。ミアウ・ウァルティーニ?」
シュウは口に出したことを後悔した。さっきまで話していた二年の声が聞こえなくなり、近づいてくる足音が聞こえてきたからだ。
「あの、入学式、妨害した人ですよね? よければ、広場での入学式……見に行かれませんか?」
シュウは咄嗟に言葉を作る。すべて嘘だ。彼女たちから離れたい一心の。だが期待とは裏腹に一人が背の低いシュウを見下ろしていた。
「新入生代表よね? えーっと……シュウウィジ・ディーだっけ?」
「え? あ、はい、そうです」
話しかけたのはミアウだった。戸惑いを隠そうとシュウはミアウの背後の校長室に目を向ける。
「ティシュー校長との話は今からですか?」
「いいえ、終わったとこよ」
ハーティンがハキハキとした口調でわざとらしく言う。シュウは自分が嫌われていることに気付きながらも笑顔を作る。
「そうですか。では一緒に広場に行きましょう? 二年生も広場でしたよね。上級生とも話がしておきたかったんです」
シュウの言葉にハーティンは「わたしこの子嫌い」とミアウに呟く。
ミアウは「じゃあ前の手、使ったら?」とため息を吐く。
シュウはそれに首を傾げ、後ろの二人を見る。たしか、マーメイナとチーナティーとかいう名前だったはずだ。
昨日の夜、二年の名簿と写真を覚えさせられた。ハーティンとミアウは雑誌で出てくるので覚えなくても分かった。
「ねえ、あんた」ハーティンはシュウに笑顔を見せる。怖さが隠れていない笑顔を。
「なんでしょう」シュウは笑顔で聞き返す。
その態度にイラついたのか、ハーティンは眉間にしわを寄せ、シュウの髪形を見た。
「何、その髪。だっさ」
急な嫌味に対抗できるほどシュウはメンタルが強くなかった。少しばかり肩を落とす。それに気づいたのか、ミアウがシュウの肩を撫でた。
「あなた、わたしたちのグループに入んない?」
「そう、わたしとミアウの」
後ろのマーメイナとチーナティーはコクコク頷いている。
「それはいいですね。上級生たちの友達ができますし、ミアウ・ウァルティーニのグループに入ったと聞いたら父上が喜びます。断る理由がありません」
シュウは営業スマイルを浮かべ、手を合わせる。
「これからもよろしくお願いします! 先輩」
校長室のドアからその光景を見ていたティシューは「まあ」と驚いた。
「シュウウィジ・ディーさん、入学式はもう始まっていますよ? 皆さんも早く広場へお行きなさい」
校長の言葉でみんなは廊下を早歩きで去る。
ハーティンはミアウにシュウの悪口を言っている。上級四人の後をついていきながら聞こえていないふりを五分もする羽目となった。
次回 二度目の入学式もゴシップだらけ♡




