第十六話 入学式 前半
「新入生、入場!」
教頭の声で合わせて門が開かれる。新一年生が全員席に着いたところでハーティンの肩を叩く者がいた。
「ごめん、ハーティン。遅くなった」
ミアウだ。
「いいの。アンノウンが写真付きで投稿してたわよ。彼女にとって人生最悪の登校だろうって。早く復讐するわよ」
「うそ……」
ミアウは下にいる新入生達を見てすぐに顔をしかめた。「なに?」ハーティンが聞くとミアウはもっと深刻そうな顔になった。
「新入生の中に子供のころ一度だけ会った彼女がいるわ。やだ、どうしよ」
「ちょっと! ここまで来てやめるは無しよ!」
「ここまでって。いつから計画してたのよ」
ミアウはハーティンの横に置いてある箱のようなバックに目をやった。
「なに? それ」
「あぁ、これ? 復讐のためのものよ。寝る時間を削って書いたの。内容は……」
「新入生代表! シュウウィジ・ディー、前へ」
新入生代表として呼ばれた容姿の整っている女子生徒はステージに上ってきた。ステージのカーテンの裏にいるハーティン達にとってはひやひやする出来事だ。
「あの子がⅯの言った子?」
ハーティンは面白がるように言う。
「ちがうわ。一番前に座ってるブロンドの子よ。目が茶色い子」
ミアウは真剣に一人の一年生を指差した。
ハーティンはようやく気付いたのか、「あぁー、きれいなブロンドね」と皮肉っぽく言う。
ミアウたちのブロンドへの悪口が終わったところでハーティンのミニターから小さい音が鳴った。ミアウと話している間にずっといじっていたのが終わったのだろう。
「今、マーメイナとチーナティーに合図を送ったわ。Ⅿ、始めるわよ!」
「えっ! そんな、急に!?」
「今よ! 早く来て!」
ハーティンはミアウを連れてすぐ横にある階段を上り出した。ミアウは必死についていく。キャットウォークを上り終えたら行動全体を見渡せる観客席があった。
「こんなところで何するの?」
「この紙をばらまくの。新入生みんなに」
ハーティンは持ってきた箱をミアウに見せる。中は手紙でパンパンだった。一つ一つに名前が書いてあって、ハーティンがどれほど苦労したのかが伺える。
ミアウはその中の一つ選んで取って中を見た。ハーティンはミアウの選んだ手紙に疑問を持ち、宛名を見る。
「シュリーユ・ヴィルダーバッドティン? その子が言ってた子ね?」
「えぇ、ほんとやな子」
ミアウは照明室を見る。
「外部進学一位の子でしょ。わたし、先生たちより一年のこと知ってるわ。事前に調べたの」
ハーティンは下のステージ影を見る。
「チーナティーはオッケーよ」
Mは照明室のチーナティーを見る。
「マーメイなからも来たわ」
Hもステージ影のマーメイナを見る。
「じゃ、やるわよ。Ⅿ、そこに箱を置いて。わたしは操作するから」
ミアウは不思議に思いながら吊らされている板の上に落ちないよう慎重に箱を置く。ハーティンはそれを確認して手を挙げた。子分たちへの合図だ。
その瞬間、講堂の電気が消え、オペラカーテンが開いた。
新入生代表がマイク越しに可愛く怖がる声と共にハーティンの機械の操作音が聞こえた。先生たちは一年生に椅子に座りなおすように指示している。
「落とすわ!」
ハーティンの声がしたと思ったらバサバサッと紙が落ちる音が聞こえる。
「ハーティン! 緊急事態よ!」
「なに? なんなの!?」
ミアウは手に持ってる手紙をハーティンに突きつける。ハーティンはため息を吐いた。
「シュリーユの手紙、箱に戻してなかったわ! どうしよ!」
次回 入学式 後半




