第十三話 遅刻の常連さん
ミアウは馬車の紙にイェーニット学園と書き、速度の欄に激早と書く。
幸い、馬車の中にはミアウ以外誰もいない。昨日の護衛がいると思ったが、後ろから馬車が付いてきているのでそれに乗っているのだろう。
ミアウはもう一度ハーティンに電話をかける。するとすぐ繋がった。
『あんた、今どこにいんの! これからアンノウンに攻撃するとこなんだけど、あんたの叔父様いる?』
ミアウは訳のわからないことを言われて、聞き直す。
「どういこと? シックの事?」
『だーかーらー、あんたの叔父様に繋いで!』
ハーティンは主張を変えない。どころか、ミアウが説明してと言っても叔父様を呼べとしか言わない。
「もう馬車の中なの。だから呼べないわ。あと、今日の予定……」
『うっそ! ミアウがもう馬車の中⁉︎ いっつも遅刻してばっかりなのに。ま、今日は入学式だから特別よね。じゃあ、学校に呼んでくれる?』
「無理に決まってるじゃない。次こそ退学よ。あと、今日の予定を断ってまで何する気よ」
ミアウが不満たっぷりの声を押し出すとハーティンはハキハキと言う。
『さっき言ったでしょ? フィクションタイムの管理者に復讐するの。あんたも加わる?』
ミアウは返答に困る。
「いやー、わたし、彼女に特に何もされてないし……」
『されたじゃない! 落第寸前お馬鹿さんって』
ハーティンは面白がるように言う。その言葉にミアウは少しイラッとし、ため息を吐く。
「わたしもやる。場所は?」
ハーティンは電話を聞いて笑みを深める。
「講堂のステージ裏よ。先生達にバレないように気をつけて」
「どういうことだ! なんで寝坊なんかするんだ!」
「うぅ、だって、イェーニット卒業してから十二時間睡眠を決めこんで……。誰も起こしてこれなかったし。ごめんなさいっ!」
ウィルジウスは眉を下げて怒るシックに深く頭を下げる。しかしシックは無視して玄関へ向かう。
「馬車に乗るぞ。急げ」
「えっ、シックも行くのですか?」
ウィルジウスが慌てて問いただすとそれ以上に慌てたものが来た。エリックだ。
「シックは入学式が始まる直前に私と行くはずだろう? なぜウィルジウスと行くのだ」
「ミアウが教室にいると思うか? いつもいく場所や学園寮についても話しておきたい。エリックはあとで来てくれ」
シックはエリックを納得させ、ウィルジウスに向き直る。
「私の分の朝食も持ってきてくれないか? 私は着替えを持ってくるから。……寝巻きで護衛は無理だろう?」
ウィルジウスは忘れていた。
「ひぃっ! 見ないでっ」
自分が寝起きであることを。
次回 Hの思惑




