第十話 グッドナイト
「ここをこうして、次にここを折るの。で、こうやって整えたら……ほら! ツル!」
ミアウは完成した折り鶴をみんなに見せる。一緒に作っていたはずなのにまだ出来上がていないツルが多い。
教えてくれと言ったエリックは完成しそうなツルで、ベディーのは最初から間違っているらしく、シックが笑っている。ウィルジウスは作らずエリックの隣で教えている。そしてシックの手には完成された綺麗なツルがある。
「んふふ、最初から折りなおしてごらん? 私が教えてあげるから」
シックは子供を扱うように激おこベディーの頭を軽く叩く。
「あとでミアウに教えてもらうからいい。ねー、ミアウー、今夜暇だよね?」
ベディーは机に折ったツルを置いて立ち上がろうとしているミアウに聞く。
「無理。疲れてるから。シックで十分でしょ」
きっぱりと断られた。
「もう寝るのかい? 今日ぐらい髪を洗え」
エリックは満足した顔を自分の作ったツルに向けながらミアウに言う。ミアウは毎日バスタブには浸かるが、一週間に一度髪を洗うかどうかだ。前までは。
「わたし、人間界に行ってから毎日髪を洗っていたの。ここでも続けるわ。だから心配しないで」
意外な言葉にミアウが去った後のリビングルームは急に静かになった。
『みんな聞いて? ブロンドハーティンからメールをいただいたわ。最初の挨拶はわたしもびっくりするような定型文だけど、内容はクレーマーおばさんね。学園のクイーンもここまで来たか。あ、クイーンはⅯの代役だっけ? わたしを怒らせたらどうなるかわかってる? 明日の入学式で新しく一年生になる子たちもわたしのサイトを読んでるのよ。その子達からどう思われるかな。覚悟してて。ハーティン・ムーン』
ハーティン・ムーンは動き終わったタイプライターを見つめる。
今きたフィクションタイムのサイトのメールの他に、カノジョから個人メールが来ている。
タイプライターから紙を抜き取り、乾いていない髪を巻いていたタオルを床に投げ落とす。そしてベッドに寝転ぶ。
『こんばんわ、クレーマー様。明日の入学式で貴方から貰った手紙を新入生に送ることにしました。楽しみにしてて。明日は貴方にとって、イェーニット最悪の入学式になるかもね。心配しないで。新入生にとっては良い入学式にするから。わたし、いろいろとコネがあるの。ま、校長室に呼ばれるのはハーティンだけだけどね。覚悟してて』
読み終わって紙を破り、首から下げている鍵で棚の一番上の引き出しを開ける。
「アンノウン。やっぱり、わたしたちの学校にいるのね。覚悟するのはあんたのほうよ」
ハーティンは中から名簿を出す。そして新一年生の名前を一気に消す。二年生の名前の欄にはミアウがいた。ハーティンはミアウの名前も消す。
「ミアウはなし。いなかったから。わたし達が馬鹿にされた半年間」
次回 シック




