第九話 魔王の子供たち
「ウィルディッシヤ、ミアウって人知ってるか?」
第一王子、ウィルタルトはナイフでお肉を切っている十五の弟に質問する。
「タルト兄さん、誰でも知ってるよ。次期王候補の人でしょ? 兄さんと戦う人って聞いてるよ」
シヤは口にお肉を入れながら呆れた顔でウィルタルトを見る。成長しきっていない声は部屋中に響いた。ウィルタルトを含め、部屋にいる人たちはシヤがフィクションタイムを知らない事に胸をなでおろす。
「なんで兄さんはミアウをお嫁にしないの? 僕達王子の言葉ならお父さんも聞いてくれるんじゃない?」
「それは……」
僕達の父は魔界の王だ。だからと言って、歴代の王たちのように意味の分からない王命はしないし、体調が悪いからか、僕達にも会ってくれない。
「ねえ、兄さん、夕食を食べ終わったら父さんの部屋に行こう? 絶対、体調良くなってるよ。でも僕だけで行くのは怖いから、兄さんも。ね?」
ウィルタルトは急に視線を感じてナイフとフォークを置き、後ろを振り返る。ウィルタルトとウィルディッシヤの母親、ウァーニャリーがいた。
「お母さん!」
シヤは目を輝かして椅子から立ち上がり、母の元に向かう。
「よしよし、久しぶりね。二人とも。いい子にしてた?」
「うん! 兄さんが一緒にご飯食べてくれたの!」
「まぁ。よかったわね。じゃあ、わたしはお父さんに用事があるから。もう行くわね」
母はシヤをどけて、入ってきた扉に戻る。シヤが追いかけようとしているのがウィルタルトの横目で見えた。そして止めようとする。
「シヤ、待て……」
「お母さん! 僕たちも父さんの部屋に行きたい! 連れてって」
遅かった。ウィルタルトは母にすがっているシヤに伸ばした手を膝の上に戻す。
「だめよ。次期王候補たちが集まる会議に向けて大人の話し合いがあるの。ウィルタルトも出る会議だから少しの失敗でも許されないわ。分かった?」
シヤはまだ下を向いている。母はウィルタルトの目を見る。どうにかしてほしいのだろう。ウィルタルトも会議で失敗したくない。
「お母さん、もう行っていいよ。シヤ、父さんに会うのはまた今度にしよう」
シヤは少しうなずく。それを確認してお母さんはシヤの頭を撫でた後、部屋を出て行った。
「お母さん……」
「もう部屋に戻ろう」
ウィルタルトは聞き分けの悪いシヤを引き連れて自室に向かう。
後ろについてくる使用人たちを巻いて、部屋に戻ろうとしたとき、父さんの部屋に入っていく茶とブロンドのメッシュの仮面の背の高い男の人が見えた。
シヤがタルトの袖を引っ張る。「兄さん、あの人……」部屋に入っていく人を指差した。ウィルタルトは足を止める。
「きっと会議に必要な人さ」
次回 グッドナイト




