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リッチガール ~fiction time~  作者: 華小雪
シーズン1 M
1/36

プロローグ

 始まりは一通の手紙から。



 ミアウは大量の紙袋を持ちながらスクランブル交差点を歩く。ポケットからミニタイプライターを出す。ここでは『スマホ』のような役割の。ミニタイプライター、通称ミニターを操作し、メールを送る。制限がかかり、また送れない。

ポケットにミニターを戻そうとすると耳から何かを下げている人とぶつかった。


「っ!」


 手からミニターが滑り落ちる。振り返って探そうとしても人が多すぎる。何かを踏む音が聞こえる。信号は点滅して変わりつつある。人が少なくなり、やっとしゃがんでミニターを取れた。走って信号を渡り終える。周りを見渡しても隣にいた友達はいない。



「ミャウミャウ~!」


 後ろから声がした。振り返るとエミがいた。人間界でできた友達だ。


「はぐれちゃったね、ん? それ、どうしたの?」


 エミはミアウの持っている凹んだミニターを指差す。ミアウは凹んだ部分を撫でる。


「ミニター。これは無理かも」

「……そうだね、一回電源付けてみたら?」


 ミアウはエミの言葉に頷いて魔力を流し、電源を入れてみる。光らない。


「どうなの? これ、付いてる?」


 エミは不思議そうな顔で尋ねる。ミアウはため息を吐く。


「ダメ。これが捨てられるゴミ箱はない?」

「ゴミ箱? 捨てちゃうの? 直せるよ!」


 エミはミアウの手からミニターを取り、ハンカチを取り出し、拭いていく。

ミアウは目を見開く。「大丈夫なの?」ミアウが不安たっぷりの声で聴くと「大丈夫だよ直るよ」とエミは笑った。


「人間界のスマホ買おうとしてたところだから、もういいよ」


ミアウは紙袋を持ち直しながら言うとエミが目を輝かせ「じゃあ、もらっていい?」と聞いた。

ミアウは持っていても意味がないのでエミにあげることにした。



 ミアウの人間界の住まい。自分以外の人も住んでいるという奇妙な高いビルに着く。

郵便受けに手を突っ込むと紙が入ってある。掴んで手を引く。手紙だ。

エミはミアウの顔をのぞき込む。ミアウは手紙を紙袋に入れる。


「セイカ、わたしはあっちに戻る。戻らないといけない。ごめんね」

「戻るって、魔界に? そんな急に? 三年間じゃなかったの……?」


ミアウはエミにハグをする。そして紙袋からカチューシャを取る。


「ちょっ、それ、高いやつ!」

「いいの、わたしたちこれで最後だもん。餞別」


 セイカにカチューシャを付ける。


「ダイヤって綺麗。セイカにぴったり」

「え、ダ、ダイヤ?」


 エミは固まる。ミアウはもう一度ハグする。離すとセイカはミアウのポケットに入っている手紙を見ていた。


「手紙、開けなくてもいいの?」

「……うん」


 ミアウはエミを残し、扉を通る。エレベーターのボタンを押すと透明の扉から涙を流しているエミが見えた。ミアウは必死に涙を堪える。チンと音がしてミアウは誰もいないエレベーターに乗り込む。そして紙袋から手紙を取り出す。

手紙を開けずともわかる。内容が何なのか。誰からなのか。それはミアウにとって最悪の手紙だ。開けても開けなくても結果は変わらない。しかし開けなければいけない。


「やっぱり」


 ミアウは手紙を読むなり、シーリングスタンプを剥がして手紙を破る。


「くそ魔王」



 そして終わりも一通の手紙から。

次回 Mの帰還

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