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私のおウチ様がチートすぎる!!  作者: トール


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40/52

40.黒いドラゴン






リッチモンド視点



『……おかしい。邪竜がいくら王都を滅ぼしたとしても、ヤツは昔からこの地に執着していたはず。だからこそ、まだ近くに居ると踏んでいたのだが……』


わしは飛んできた方を向き、胸騒ぎに不安を覚えた。


カナデと離れたからか……?

レオがいるから大丈夫だとは思うが……やはり一旦戻った方が……、



グルルルル……



『!? 何だ……』


今、瓦礫の下から聞こえたような……?


刹那、瓦礫が盛り上がり、その中からドラゴンが出てきたのだ。


グルゥアアアアァァァァ!!!!


『黒だと……!?』


そのまま体当たりしてきた漆黒のドラゴンに愕然とする。


漆黒はこの世で、邪竜だけのはずだ……っ


グルゥアアアアァァァァ!!!!


『ふんっ その程度の体当たりも咆哮も、わしには効かぬ』


尻尾で叩き落とし、地面に転がった黒いドラゴンの様子を窺う。

するとドラゴンの漆黒だった身体が、徐々に緑へと変化していったのだ。


やはり、此奴は邪竜ではない。



一体どういうことだ───……




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




カナデ視点



「何が目的だ」

「…………っ 私は……」



グルル……



「ヒィ……ッ」


え、何!? 今、空気が震えるような音が、地下の奥から聞こえてきた……っ


「カナデ様、クレマンスが怯えているようです」

「どうして……??」

「ドラゴンの国の騎士である彼女が怯えるのです。答えは一つしかありません……」

「それって」


“邪竜”がこの地下に居るっていう事?!


レオさんを見れば、彼は真剣な顔で頷き、冷や汗をかいているではないか。


レオさんの顔色が悪い。これは、マズいのかもしれない。


「は、早くこの結界を解いてくれ!!! 早く……っ」


悲壮な叫び声を上げるクレマンスさんの尋常ではない様子に、助けた方が良いんじゃないかと思ったその時、


「カナデ様っ クレマンスを結界の中に入れてはいけません!!」


その声に驚いて、クレマンスさんから目を離してしまった。



「きゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」



瞳の端に赤が見え、つんざくような悲鳴が地下に響く───



「見てはいけません」

「レオさ……っ」


レオさんに目を覆われ、何も見えなくなった。


「たす、助けなきゃ……っ」


クレマンスさんが……っ


そう思うのに、足が震えて動かない。


「カナデ様、屋敷の中へお入り下さいっ」


レオさんは、その光景を見せないようにしなから、震えて動けなくなった私を別荘の中に押し込めようとする。


グルル……


“何か”が、クレマンスさんの傍にいる。


“何か”が、クレマンスさんに………………。


「な、何が起きて……っ」


喉が、恐怖でぎゅっとしまり、上手く話せない。


「大丈夫です。結界内には何者も入っては来れません」


いつの間にか抱き上げられ、別荘の中へ運ばれていた。


「レ、オさ……っ」

「カナデ様は絶対に出てきてはいけません」


そう言ってレオさんは、別荘の入口を閉めたのだ。


「レオさん!!」


もし、あの“何か”が、この結界内に入ってきたら……?

レオさんがもし、結界の外へ出てしまったら?


「リッチモンドさん……っ」


逆鱗のネックレスを握るが、ハッとする。


リッチモンドさんは、結界の外にいる。

もしリッチモンドさんがここに戻ってきて、あの“何か”と鉢合わせしたら…………っ


嫌だ。


ネックレスから手を離す。


どうしたら良いの……っ 何で私は攻撃力が皆無なの!!


「レオさん!!」


レオさんだけは、守らないとっ


そう思い、扉を開けて外に飛び出した。

そこで見た光景は………………、


「クレ、マンスさ…………」


漆黒のドラゴンの足に押さえつけられ、血を流している彼女の姿だった。


「カナデ様っ 出てきてはダメだと言いましたよね!?」

「だ、だって、レオさんに何かあったら……っ」

「私は結界内に居るので大丈夫です。カナデ様は、あのドラゴンの目に入らぬよう、屋敷の中へ居て下さい」

「嫌!! だって目を離したら、レオさんまで襲われるかもしれないッ」

「カナデ様……」

「それに、クレマンスさんをあのドラゴンから助けなきゃ……」


まだ、生きてる。

微かに、呼吸音が聞こえるから、間に合うかもしれない。


「クレマンスは我々を裏切ったのですよ!?」

「うん。でも、裏切りたくて裏切ったわけじゃないでしょ? 多分、あのドラゴンに脅されてたんだよ」


漆黒なのに、よく見れば所々に赤い鱗がある邪竜を見遣る。


「クレマンスさんを結界内に入れて、あいつを遠ざけるには、ここをもっと拡大するしかない!」

「ですが、どうやって……」



「私のスキル、“村”をここに作る!!」




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