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私のおウチ様がチートすぎる!!  作者: トール


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22/52

22.村を作ります






「このサケとかいう夕日のような色をした魚、ショーユとの相性が抜群だな!」

「おじいちゃん、このアユの塩焼きも美味しいですよ」

「どっちも、美味しい」

「お父さん、お母さん、ミミリィもお魚穫るお手伝いしたんだよ!」

「すごいじゃないかミミリィ!」

「お魚って……っ あんな大きな魚をミミリィが捕獲したの!?」

「夕日色の身をした魚……見たことがない。どうしてこんな色なんだろうか?」

「私もこんな魚初めて食べます……」


自然と、食事は皆揃って食べるようになった我が家の小食堂は賑やかだ。

皆が言いたい事を好き勝手口にするから、常に誰かの声がするし、こんなに人数が居るのだから大食堂で食べればいいのに、何故か皆小食堂に集まる。


そんな所が、何だか家族って感じで嬉しい。


「どうしたカナデ。何をニヤついている?」

「いえ、何だか家族って感じがして良いなって思ったもので」

「ん? 成る程、確かにそうだな」


リッチモンドさんは目を細め皆を眺めると、うなずいた。


「なぁカナデ、わしはずっと考えていたのだが……」

「なんですか? リッチモンドさん」

「こやつらのように、人族の街にも亜人族の街にも要られぬ、心優しき者を、この村に招き入れてやってはどうか」


リッチモンドさんの言葉に、騒がしかった小食堂が静まった。


「わしは、腐った人間(どうぞく)から苦しめられ、捨てられる者を何人も見てきた。行くあてのない彼等に待っているのは死だけなのだ」


その言葉に皆は悲しそうな顔をして私を見る。


「カナデ様、私からもお願いします」


イヴリンさんが頭を下げ、言ったのだ。


「私達は運良く、リッチモンド様に助けられ、こちらへと参りました。しかし、森の中で……いえ、街でも、誰にも手を差し伸べられず、死んでいくものがほとんどなのです」

「その中には、子供もおります」


今度はローガンさんが。


「人々はいつからあのように腐ってしまったのでしょう」

「民を守るのが騎士であるというのに、実際にはそんな騎士はいもしない。己の保身に必死なのです」


ヒューゴさん、レオさんと続く。


そして、


「カナデお母さん、僕達を助けてくれたみたいに、」

「他の人達も、助けて」

「カナデお姉ちゃんっ」



子供達に、家族にここまで言われたら、


「……期待に応えないわけにはいかないか」


皆が、瞳を輝かせて私の言葉を待つ。



「捨てたなら、私が拾っても構わないでしょ!」



藤井 カナデ(15)。

捨てられた人を拾って、村を作ります!!




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




そう決めてから数日後、リッチモンドさんがレオさんと共に街へ行ってくると言い出した。


「街って、亜人族の?」

「いや、どちらの街にも行ってくる予定だ」

「え!? リッチモンドさんは大丈夫かもしれませんが、レオさんは耳と尻尾があるんですよ!? 人族の街に連れて行くのは危険なんじゃ……っ」

「外套で隠すので問題はない。それに、奴も剣の扱いがそれなりになってきておる。そこらの人間には負けはせん」


そんなにすぐ強くなれるものなの!? 訓練しだしてからまだひと月くらいだよね!?


「それで、街のスラムを見て来る予定だ」


“スラム”って……、怖いイメージしかないのだけど。


「スラムにはひっそり暮らす孤児も多い。本人の気質と意思次第にはなるが、望めばここへ連れてくる予定だ」

「そっか。さっそく実行するんだね」

「ああ。わしも元とはいえ、国を治めていた王。出来れば苦しんでいる者を見捨てる事などしたくはない」


やっぱりリッチモンドさんは格好良いドラゴンだ。


立派な王様だったんだろうなぁ。


「心がはやるのはわかるけど、無理だけはしないでね」

「安心しろ。わしは強いのだ。レオにも危険な事はさせんからな」

「……」


フラグが立った気もしなくもないけど……。


「本当に気をつけてね」


こうして、リッチモンドさんとレオさんは街へと向かったのだ。



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