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私のおウチ様がチートすぎる!!  作者: トール


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20/52

20.池と魚






庭には居ないようだったので、村に行ってみる事にする。


リッチモンドさんはレオさんと何をしてるんだろう?


北海道の牧場程広く、歩くだけでも良い運動になるこの村を、暫くぽてぽて散歩しながら移動していると、進行方向の前方から声が聞こえた気がして、歩く速度を上げる。


「───……っ」

「……ぃっ」


遠くに二人の姿を発見し、コソコソと近付いてみると不自然な程立派な剣を振り回し、リッチモンドさんと対峙しているレオさんが見えてぎょっと目を剝いた。


「そのように振りかぶると脇が隙だらけになるぞ」


リッチモンドさんはレオさんとは対照的に、そこらで拾ったような木の棒でレオさんの脇をトンッと突く。


「っ……」


刹那、レオさんが体勢を崩し、頭、肩をパシン、パシンッと木の棒で叩かれ倒れ込んでしまったのだ。


「ま、参りました」

「ふむ。人間にしてはよくやった。しかし、おぬしの実力ではまだ、カナデどころか己すら守る事は出来ん。それは分かるな」

「……はい」


リッチモンドさんの言葉に、レオさんは悔しそうに項垂れる。


もしかしてこれは、“修行”というやつではないだろうか。


「今日から、午前中は体力づくり、午後からはわしとの訓練を行うのでな」

「はっ 畏まりました! 宜しくお願い致します!!」


体勢を整えたレオさんは、騎士らしく片膝をつき、頭を下げたのだ。


「カナデ、待たせたな」


どうやら私が居る事に気付いていたリッチモンドさんが、こちらを向きにっこり微笑んだ。


「カナデ様っ」


膝をついた体勢のまま、私にも頭を下げるレオさんを慌てて立ち上がらせ、お邪魔してごめんなさいと謝る。


「カナデの護衛をかって出たのでな。少し鍛えてやろうと思ったのだ」


私の心を読んだように、何も口にしていないにも拘わらず疑問に答えをくれたリッチモンドさんは、おじいちゃんとは思えない若々しい表情で見てくるので、ドキリとしてしまう。


「私が至らぬばかりに、リッチモンド様にはお手を煩わせてしまい、申し訳ございません」

「気にするでない。人間でそこまで動けるのならば上々よ」


おおっ レオさんはリッチモンドさんのお眼鏡に適ったんだね!


「カナデは我らの様子を見に来たのであろう。なに、心配せずともレオはわしが一人前にしてみせようぞ」

「うん。リッチモンドさんに任せれば間違いないですね! レオさん、この村は“魔の森”の最奥にあります。村の中は安全ですが、一歩外に出ると私なら瞬殺されるほど強い魔物がうようよしてます」

「はい」


レオさんは真剣に私の話を聞いて頷いている。


「リッチモンドさんはそんな魔物を狩ってくる程の実力者なので、絶対貴方を強くしてくれます! 二度と貴方が悔しい思いをしないように」

「っ……カナデ様……」


レオさんは、ローガンさん一家を守りきれなかった事をずっと気にしているようだったから、多分誰かを守るっていう事に拘ってるのかなって思ってる。


だから、私だけじゃなく村の皆を守れるくらいに、思う存分強くなってもらいたい!


「期待してますね!」

「っありがとうございます!!」


ちなみに、女神と呼ぶのは初日に止めてもらった。


だって女神じゃないし、恥ずかしくて死んじゃうよ!





こんな感じで、私達の新たな生活がスタートしたのである。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「っ…………ぃ、池が出来てるゥゥゥ!!!!!」





名前: 藤井 かなで


年齢: 15才


レベル: 160 ↑up


HP: 100/100


MP: 1000000/1000000


健康状態: 良好


魔法: 才能なし。例えレベルを上げても使用できません。


スキル: 家召喚、言語翻訳、文字の読み書き


役職: 村長


ニックネーム: 女神(笑) ←NEW


家族: リッチモンド(年齢不詳)、ルイ(10)、アーサー(10)

【レオ(21)、ローガン(32)、イヴリン(30)、ミミリィ(12)、ヒューゴ(49)】 ←NEW



5人が村に住みだしてから約1ヶ月。


ステータスのニックネーム: 女神(笑)ってなんだとツッコミつつ、邸の裏にある畑の草むしりにやって来たのだが、畑の奥になんと、100メートル四方の畑と同じ位大きな池が出来ていたのだ。


貯水池!? と思ったが、透明度の高いその池には魚が泳いでいた。


「さ、魚だ……。しかも池の魚じゃない!! ……鮎と、鮭だと!!?」


魚といえば、偶にリッチモンドさんが森の中に流れている川から獲ってきてくれる、ばかデカい大味の魚がいるのだが、まさか、鮎と鮭が食べれるようになったなんて……っっ


「焼き鮭……っ 昼は焼き鮭を食べられるッ」


私の口の中は鮭の味を思い出し、ヨダレでいっぱいだ。


「カナデお母さん、どうしたんです……うわっ 大きな水溜まりがある!!? 」

「水の中、何かいる……っ」


後ろからやって来たルイとアーサーが驚き声を上げた。


「ルイ、アーサー、これは池だよ。中で泳いでいるのは魚。本で見たことある?」

「は、はい。……これが池。あの小さな生き物が魚ですか?」

「おじいちゃんが、獲ってくるの、もっと大きい」

「そうだね。この魚は鮎と鮭といって、とっっても美味しいんだよ!」


その言葉に、二人の瞳が輝いた。


元々知識に貪欲なのか、面白いようになんでも吸収していくので、ヒューゴさんも面白がって様々な事を教えているのだが、私も最近、二人がやりたいというので料理を教え始めた。

すると舌の肥えてきた二人は、美味しいと聞くと何でもすぐ試そうとするようになったのだ。


だからきっと、この魚もすぐ調理したいに違いない。


「二人とも、草むしりが終わったら魚を獲ろうね」

「「はい!」」


良い返事に苦笑いしながら、今日の昼食の焼き鮭に思いを馳せ、広い畑の草を毟っていった。




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