18.自己紹介
「私はレオと申します。亜人族の国で騎士をしておりましたが、ある貴族との間で色々あり、捕らえられ、口封じの為に森に捨てられました。年は21歳です」
猫耳の男性は元騎士さんだったんだね! 貴族との間に色々って、気になるんだけど……口封じって言った!?
キョロキョロとリッチモンドさんや子供達を見たが、顔色一つ変えていない。
「私はローガンと申します。レオ様は私達家族を助ける為に、貴族に歯向かって……っ レオ様、巻き込んでしまい申し訳ありません!」
え、そうなの!? 何だか訳ありみたいだけど、助ける為に貴族に歯向かうなんて、相当な勇気と優しさが必要だよね?
それに、この家族も善人そうだし、余程の事があったんだろうな……。
「ローガンさん、顔を上げて下さい。私は後悔などしていません」
「レオ様……」
何があったかは分からないけど、レオさんは良い人だっていう事は分かったよ。
「おぬしら、取り敢えず今は自己紹介をしてもらえんか?」
リッチモンドさんが中断した自己紹介に焦れて口を挟むと、二人は慌てて頭を下げた。
「では私が。私はローガンの妻でイヴリンと申します。年齢は、ローガンが32歳で、私が30歳になります。そしてこちらが娘の……」
「ミミリィ、12歳です! レオ様も、お母さんもお父さんも、私が貴族に拐われて、奴隷にされそうな所を助けてくれたんです。それで、皆で逃げてる所を捕まり、拘束されて、口封じに森へ捨てられました!」
奴隷!?
「同族を奴隷にしようとする貴族がいるの!?」
「はい。私くらいの年齢の子供が好きな気持ち悪い貴族です! こっちの人族のおじさんは、私と同じ地下牢に捕まってて、舌を抜かれた私の手当てしてくれたんです!」
し、舌を抜かれたぁ!!!?
あまりに酷い体験に真っ青になりながら、自己紹介最後の一人を見れば、彼は膝をつき、私に祈りを捧げていた。
「女神様、私はヒューゴと申します。古代遺跡の研究をしており、亜人族の国に遺跡があると聞き入国したのですが、貴族の反感を買ってしまい、このような事になってしまいました」
「じゃあ、ヒューゴさんは帰る場所があるんじゃないですか? もし人族の国に帰りたいなら、リッチモンドさんに連れて行って……「いえっ 帰る場所などありません!! 私は女神様に助けていただいた身。是非、貴女様のお側に仕えさせて下さい!!」ええ!?」
女神じゃないし、お側にお仕えって言われても……。
「構わんだろう。学者だと言うではないか。子供達の教育も必要な事だし、ヒューゴを教育係に雇えばよい」
リッチモンドさんにそう言われてしまえば、何も言えなくなるではないか。
「分かりました。では、ヒューゴさんは子供達に勉強を教えて頂けますか?」
「勿論でございます!!」
「でしたら私は、庭師として働いておりましたので、お屋敷のお庭の手入れをさせて下さい!!」
そこへ今度は、垂れた犬耳のローガンさんが手を上げる。
「ならば私は護衛に!!」
レオさんまで!? ちょ、リッチモンドさん頷いてないで何とかして下さい!! 私お金なんて持ってないよ!?
「では、私は皆様の身の回りのお世話をさせていただきます」
イヴリンさんも!?
「ミミリィは、えーと、えーと……っ」
「ミミリィちゃんは、ルイとアーサーと一緒に勉強しようね!」
まさかミミリィちゃんまでつられるとは思わなかったから、止めさせてもらったよ!
「でも……ミミリィだけ何も……」
「あーっ じゃあ、手が空いたときにでも畑の草むしりを手伝ってもらおうかなぁ!」
ミミリィちゃんが泣き出しそうになったので、とっさに草むしりを頼んだが、
お小遣いとかあげられないんだけど、どうしよう……!!
「うむ。ならば報酬は家と畑、そして食料や衣料品などの生活用品で構わぬか」
え!? お金じゃなくていいの!?
「それでは貰い過ぎのような……」
「管理してもらいたい畑は村の中にある全ての畑だ。草むしりは大変だぞ」
ローガンさんの呟きにニヤリと笑うリッチモンドさんは、そう言って5人を納得させてしまったのだ。
やっぱりリッチモンドさんは頼りになるや。
こうして、5人は村人として村に住む事になったどころか、何故かウチで働く事になったのだ───……