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17.オムハヤシと女神






猫獣人の男性視点



黄色い……玉子だろうか、それにトロリとした茶色のソースがかかり、なんともいえない良い香りが漂って私の食欲を刺激し、涎が溢れてくる。


ソースには肉と野菜が入っており、玉子の下には何かが入っているのか膨らんでいる。


ゴクリと喉がなった。


「どうぞ召し上がってください! お口に合うと良いんですけど」


女神がそう言ってすすめてくれるので、こんなに良くしていただいても良いのだろうかと戸惑いながらも、頂く事にした。


「うむ。美味い! 玉子とけちゃっぷライスとこのシチューのマリアージュが見事だ!!」

「リッチモンドさん、相変わらず食リポが上手いですね。ありがとう」


ドラゴン様が絶賛し、女神は苦笑いしながらもお礼を言っているという事は、この料理は女神が作ってくれたものかもしれない。


見た事もないご馳走にドキドキしながら、スプーンで掬い口の中へ入れると……っ


甘酸っぱいソースが絡まったつぶつぶしたものと、野菜、そして燻製した肉だろうか、それを包む玉子がそれらの酸っぱさを円やかにし、纏り合ってなんと美味しいのだろう。そして肉の旨味と野菜の甘味がよく出た茶色のソース!


これは天上の食べ物だ。



「っ美味しい! こんなに美味しいもの、食べたことない!!」



舌を抜かれ苦しんでいた子供は、そう言って、満面の笑みを浮かべ、その子の両親はそれを見て涙ぐみ、それでも止まらない手は料理の美味しさを物語っていた。


人族の学者も涙を流しながら口いっぱいにかきこんでいる。


「カナデお母さんのご飯はやっぱり美味しいです!」

「カナデお母さんのご飯、大好き」


天使様達も絶賛する美味さだ。もしかしたら私はもう死んでいて、天国にいるのかもしれない。



あっという間に天上の料理を食べ終わってしまい、もう少し味わって食べれば良かったと思ったが、何だか異様に力が湧いてくる気がする。


「やはりカナデの料理は、魔力も体力も全回復するな」


ドラゴン様の言葉に、これは女神のお力かと納得する。


今迄に無いほど、力が漲っているのはその為か。


「アハハ、それは野菜や調味料のおかげかなぁ」


女神が言うには、この料理に使われている野菜も普通のものではないようで、先程のポーションのような薬なのだという事が分かった。


「女神よ。このような貴重なものを分けていただき、ありがとうございます」

「へ? 女神!?」


私が頭を下げると、他の者も一斉に頭を下げ、女神が慌てて「頭を上げて下さいっ」と叫ぶ。


「私は女神じゃありませんし、頭を下げられるような事はしてません。貴方方を助けたのはリッチモンドさんだし、私はただご飯を作っただけなので」

「ドラゴン様にも、天使様方にも感謝しております。しかし、ここは女神の楽園だと伺いました。ドラゴン様からは、私共をこちらに置いていただけると……」

「た、確かに私のスキルで出来た村ですけど、あの、村人も誰もいなくて寂しかったですし、村の畑や家の管理も大変だし、その、出来れば皆さんで管理していただけたら嬉しいなって思って……。家も住んでくれる人がいる方が長持ちしますし」


女神が言った言葉に驚いたのは私だけではないはずだ。


「女神よ、ここに置いていただけるだけでなく、家や畑まで提供して頂けるのですか!?」

「? はい、勿論です。一家族一つの家と畑を提供しますので、お好きに使っていただいて結構ですよ?」

「「「「「!!!!!?????」」」」」


私達全員が、唖然とした事は言うまでもないだろう。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




カナデ視点



「リッチモンドさん、私何か変な事言ったかな?」


目の前で5人が目を見開き、口を開けたまま動かなくなったので、隣のリッチモンドさんにコソコソと話しかける。しかし、リッチモンドさんは「さぁなぁ」と笑うだけなのだ。


子供達も特に何も言わないし、このまま自己紹介に入っても良いかな?


「あのっ 取り敢えず自己紹介したいんですけど、いいですか?」


私の声に、猫耳の若い男性がハッとしたように「そうですよね!! 申し訳ございませんっ」と頭を下げた。すると、他の4人もつられるように頭を下げるので、「そんな事しなくていいですから」と顔を上げてもらった。


「じゃあ、私から。カナデ・フジイです。年齢は15才で、この村の村長という事になってます。村の奥の家にリッチモンドさんと子供達で住んでますので、いつでも遊びに来て下さい。宜しくお願いします!」


うん。こんな感じで大丈夫だよね?


「次はわしだな。わしはリッチモンドだ。知っての通りドラゴンで、わしもおぬしらと同じようにカナデに拾ってもらった。これから宜しく頼む」


リッチモンドさんのスマートな自己紹介に、「ど、ドラゴン様も女神に助けられたのですか!?」と犬耳の男性が驚いていたが、次の自己紹介いってみよう。


「ルイです。先日、森に捨てられていた所をカナデお母さんとリッチモンドおじいちゃんに拾われました。年は、10年生きていると言われた事があるので、10歳だと思います」

「アーサー。ルイと同じ」


ルイに比べてアーサーは短い自己紹介だったね。

二人とも10歳にしてはまだ小さいけど、ここ数日で身長も伸びてきてるから、きっとすぐ大きくなるよ。


私達家族の自己紹介が終わり、5人を見ると、緊張したように猫耳の男性が口を開いたのだ。



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