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15.新たな家族






「何かって?」

「死刑執行の下見といった様子であったぞ」

「し、死刑!!!?」


リッチモンドさんの衝撃の一言に声が裏返る。


「な、何で!? 死刑で森の下見って何!?」

「犯罪者を魔の森に捨てる事は多々あるぞ。死体の処理も必要ない上、自分達が殺したのではないという建前も出来る」

「建前って……つまり、死刑にできるような罪じゃない人を、追放という形で森に捨てるって事?」

「そうだ。下見というのは、現在どのような魔物がどの辺りに存在するのかを調査し、自分たちの力でどの辺りまで犯罪者を連れていけるのか、確認しているのであろうな」

「そんな……。犯罪者って、どんな犯罪を犯したというの?」

「ふむ……大方、国王に歯向かった、もしくは、国に都合の悪い事をしたのであろうよ」


リッチモンドさんは、卵白の中華スープを飲み、うっとりした表情を浮かべてほぅっと息を吐く。


「偶に出てくるのだ。腐った国を変えようとする者がな」


そうなんだ……。


「ぁのっ」


私達の話を黙って聞いていたルイが、突然声を上げた。


「どうしたの? ルイ」

「……ぁの、その死刑にされそうな人、助けてあげられないでしょうか? その、ぼくが言うのは図々しいと思うんですが……」

「村、誰もいない。助けた人、村人に出来る」

「ルイ、アーサー……」


監禁され、暴力をふるわれていたにも関わらず、優しい心を持った子供達に感動する。


「リッチモンドさん、」


石焼ビビンバを名残惜しそうに食べきったリッチモンドさんは、私達の顔を見て眉を下げる。


「分かった、分かった。その者に悪意がない場合は、森に捨てられた時点で助けよう。だからそのような目で見るでない」

「「「ありがとう(ございます)!!!」」」

「やれやれ。我が孫達は人が良すぎるな」


そう呆れたように笑い、暫くは森の入口を見回るかと呟いたのだ。




それから数日後、


あっという間に順応してしまった子供達は、髪を切ってからより生き生きと草取りや野菜の収穫、料理などを手伝ってくれている。

ウチの食べ物のおかげか、細かった体も平均的な子供のものになりつつあるし、背も伸び始めており、村を元気いっぱい駆け回っている。


今日も朝から草取りをして、その後探検だと村へ行ってしまった。


なんだか体力が、大人の私よりある気がする。



そんな事を考えながら食器を洗っている時だった。


「カナデお母さん! 大変です!!」


ルイが大慌てでキッチンに飛び込んで来たのだ。


「どうしたの? ルイ」

「おじいちゃんが、この間言っていた人達を連れて戻って来たんです!」


この間の……、


「森に捨てられた犯罪者の人!?」

「そうです! 早く来てくださいっ」


ルイに急かされ、慌ててエプロンを外し飛び出せば、村にドラゴン化したリッチモンドさんが降り立ち、アーサーが忙しなく動いている所が目に入ってきた。


「リッチモンドさん! 例の方を連れて来て…………っ えぇ!!?」


ドラゴン化を解いたリッチモンドさんのそばに居たのは、5人の男女だった。


1人じゃなかったのォォ!!!?



「あ、あの……ドラゴン様、本当に我々をこちらへ迎え入れて下さるのでしょうか?」

「うむ。お前達はこの村に住むが良い」


頭の上に動物の垂れた耳がある、30代位の男性が、びくびくしながらリッチモンドさんに話しかけ、リッチモンドさんは当初の予定通り、この村に住むよう伝えているが、それにしても驚いた。


てっきり一人だと思ってたから。


他には、男性と同じ年頃の柴犬のような耳をした可愛らしい女性と、12、3歳位の垂れ耳の女の子、そして50代位の人族の男性と、20代位の猫耳をした男性だった。

皆服も体もボロボロで、特に猫耳の男性は今にも倒れそうだ。


「リッチモンドさん、取り敢えず近くの家に入ってもらいましょう!」

「おぉ、カナデ。お前達、この娘がわしの家族で村長のカナデだ。カナデの言葉にはきちんと従うようにな」


リッチモンドさんの言葉に5人が驚くが、そんな事より皆フラフラしているのだから、と自己紹介は後にし、そばにあった村の家に入ってもらう。



村の家は日本の新築一軒家の外観なので、この世界のものとは違う為に5人は戸惑っていたが、とにかく靴を脱いで入ってもらい、リッチモンドさんにクリーンと治癒魔法をかけてもらった。その間に冷蔵庫を覗く。

冷蔵庫の中身は“村長の館”と連動しているのか、ほぼ変わらないようで、スポーツ飲料水もあったので、飲んでもらう事にした。


ルイやアーサーもこれを飲んで元気になったから、きっと体力が回復するだろう。


「カナデお母さん、手伝う」


アーサーがやって来てお盆の上にコップを並べてくれたので、そこへスポーツ飲料水を注ぎ、持っていってもらう事にした。


「アーサー、ありがとう」

「当たり前のこと、してるだけ」


優しい子だと、思わず相好が崩れた。




「よし! 私は5人にご飯作ろう! なるべくボリュームがあるものが良いよね…………。うん。オムライスを作ろうかな!!」

 



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