(96)#女王奪還作戦⑧
「《バーストスラッシュ》」
落下してきたロベルトさんが、佐藤さんを拘束していた魔族を斬って倒した。
「な、いつのまに」
さっまで余裕だったリーダー魔族は、さすがに動揺していた。
「ナイスタイミングだろ」
「さすがです」
ドヤ顔で言ってきたロベルトさんに、俺も親指でグッドサインを出した。
「後藤さんもいい仕事です」
「ありがとうございます」
魔法でロベルトさんを上空に飛ばした後藤さんにも、グッドサインを送った。
「形勢逆転だな」
「フフフ」
「何がおかしい」
「いえ、滑稽だなと思っただけですよ」
手駒が無くなったはずなのに、リーダー魔族は余裕な様子で笑っている。
「は、離れて」
「えっ?」
女王様が意識を取り戻し、か細い声で俺に話し掛けてきた。
「隣だ」
セーラに言われ隣を見ると、俺の腹に片手剣が刺さっていた。
「グフッ」
突然の出来事に、俺は思わず片膝をついてしまう。
「何で?」
痛みを堪えて俺は佐藤さんに問い掛けた。
「ハハハ」
さっきまで疲弊していたはずの佐藤さんは、魔女のように高笑いを上げる。
「決まっているじゃない。私が裏切り者だからよ」
そう話しながら佐藤はリーダー魔族の隣へと移動した。
「姐さん、どういうことだよ」
さすがの水上も、動揺した様子で佐藤に問い掛けた。
「裏切り者だからだよ」
「何で裏切ったかだよ」
水上はらしくない態度で怒鳴る。
「ピーピーうるさいね」
ハァとため息をつきながら佐藤は言った。
「何で何も言ってくれなかったんだよ」
水上は今にも泣きそうな声で問い掛ける。
「一回寝ただけで男面かい」
「俺は姐さんのことを」
「そこの獣人」
佐藤は水上の悲痛な声を無視してセーラへ話し掛けた。
「何だよ」
セーラは佐藤を警戒しながら答える。
「大事そうに抱えているのをよこしな」
クイクイと右手を手前に曲げ佐藤は言った。
「嫌だね」
セーラは答えながら佐藤をキッと睨んだ。
「そういう態度なら」
「グァ」
佐藤は微笑みながら、俺の肩に剣を突き刺した。
「ダン」
「だ、大丈夫だ」
俺は痛みを堪え、セーラが飛び出すのを止めた。
「へぇ。さすが安木が認めるだけはあるね」
「それはどうも」
俺は今にも気絶しそうになるのを我慢し、佐藤を見上げて皮肉を口にする。
「(凡田さん、シールドを張ってください)」
「《シールド》」
テレパシーで指示を受け、俺は咄嗟に魔法で自分を囲んだ。
「《ツインマグナムショット》」
気づくと俺がシールドを張るのと同時に、佐藤の肩が見事に撃ち抜かれていた。




