(93)#女王奪還作戦⑤
「準備はオッケーですか?」
各チームで一通り連携を確認し終えたので、俺は全員に声を掛けた。
「こちらは大丈夫です」
陽動チームを代表して後藤さんが返事をした。
「何で凡田が仕切っているんだよ」
水上は不満そうにこちらを見ている。
「普段チームを組んでいるからリーダーに向いていると思いますよ」
ピリついた雰囲気に物怖じせず、槍橋君が会話に入ってきた。
「そうだよ。あんたみたいな自己中に任せられるか」
ケンカ腰にセーラが水上にガンをつける。
「わかったよ。別にやりたいわけでもないし」
やれやれという感じで水上は口を閉じた。
「救出チームは俺の近くに来てくれ」
チームが集まったところで俺は魔法を唱えた。
「《ステルス》」
ドーム型の結界が現れ、周囲から姿が見えなくなった。
「ダン、そこにいるのか?」
僕がいた位置を見ながらロベルトさんが声を掛ける。
「ええ。僕達はここで待機してますね」
「わかった。よし行くか」
「はい。行きましょう」
ロベルトさんが先頭を歩き始め、後藤さんが槍橋君を促しつつ後に続いた。
「よし行きましょう」
炭鉱内部から出てきた後藤さん達を確認し、俺は声を掛けた。
「女王様がどこにいるかわかるのか?」
セーラは周囲を警戒しながら訊いてきた。
「奥に魔力反応が集中しているからそこだと思う」
俺はスマホを確認して言った。
「よし、じゃあちゃちゃっと助けようぜ」
「お前が仕切るなよ」
「別にいいって。じゃあ行きましょう」
「はい」
水上に噛みつくセーラをなだめつつ、俺は剣さんに言いながら先頭を歩き出した。
「そろそろだ」
マップが示す場所に着いたので俺は足を止めた。
「おい、あれじゃないか」
セーラが指差した先には女王様と日本人らしき男が捕らわれていた。
「天坂も捕まっていたんだな」
水上が捕まっている男を見て言った。
経緯はわからないが、女王様と一緒にいたらしい。
「突っ込むか?」
「いや、数が多すぎる」
セーラが飛び出す姿勢で訊いてきたが、俺は静止しながら言った。
「じゃあ、灯りを潰して一気に攻めますか?」
こちらを真剣な面持ちをして見る剣さんが訊く。
「そうですね。僕が魔法で灯りをやるので、魔族は任せます」
「面倒くさいの押し付けやがって」
「フフ」
「剣ちゃん、何?」
「口ではあれこれ言うけど、結局凡田さんのこと好きなんだなって」
「どうしてそうなるの?」
「はいはい集中してください」
「ったく」
水上がからかわれているとは、やるな剣さん。




