(80)#望まぬ再会①
「変わった建物ばっかりだな」
「大声で恥ずかしいだろ」
歴史的建造物みたいな街並みに興奮するセーラに、俺は周りを気にしながら注意した。
「別にいいだろ。久しぶりにフリーダム以外の国に来たんだから」
ブーという顔でセーラが言い返す。
開催地であるサントルに、俺達は調査とレベル上げの為に来ていた。
ちなみにここは国境にあるヤーニという街だ。
「痴話喧嘩はやめろ。恥ずかしい」
「痴話喧嘩なんかしてないっつうの」
付き添いで来ていたロベルトさんにからかわれ、セーラが顔を真っ赤にして言い返す。
「すみません。うるさくて」
俺は取材で同行していた藤さんに謝った。
「面白いのが撮れて助かります」
笑顔で答える藤さんが、隣にいるディレクターが持つカメラを指差して言った。
「皆さん、領主様への挨拶をしに行きましょうか」
入国などいろいろな手続きを終えてマークさんが戻ってきた。
「ほらセーラ、ロベルトさんも行きますよ」
犬猿みたいにいがみ合っている2人をなだめ、俺達は領主の館へと歩き出した。
「ようこそ凡田殿。リードと申します。あなたのことは国王から聞いております」
館に着くと、サンタクロースみたいな髭と体格をした初老の男性が、力強い握手で出迎えてくれた。
「国王がですか?」
国王が俺を知っていることに、はてなマークが頭に浮かぶ。
「フリーダム王やビルダーランド王は、世代が近いのもあり、よく会合をチャット?通話なるものでしているそうでして」
領主様は俺の疑問を察知し、面倒がることなく丁寧に答えてくれた。
「そうだったんですね」
「王も会いたがっておりましたのでお時間があれば」
「そんな大層な人間じゃありませんけど」
「相変わらずだな」
聞き覚えのある声に振り向いた俺は、思わず固まってしまった。
「水上」
名前を呼び、俺はゴクリと唾を飲んだ。
「お互いおっさんになったな」
水上はボサボサの頭をかきながら近づいてきた。
「昔から固いというか、暗いというか」
「何だお前。ムカつくな」
隣で聞いていたセーラが水上を睨んで言った。
「おーこわ。何だ凡田、彼女連れかよ」
水上はセーラを軽くかわし、ヘラヘラしながら話し続けた。
「お前も変わらないな」
興奮したセーラを見て逆に落ち着いた俺は、冷静な口調で答えた。
「皆さん、食事の準備が出来たようなので」
ピリついた空気を感じたリードさんが会話に入ってきた。
「俺はパスで」
領主様の申し出を断り、水上はダルそうな足取りで外へ出て行った。




