(8)#街に着きました
「やっと着いたよ。ハァハァ……」
地図を見ながら久しぶりの長距離を歩いたことで、俺は息がかなり荒くなっていた。
「ハァ、ハァ。フリーパークに着きましたと」
呼吸を整えながら、異世界の街の外観を写真に収めて投稿した。
「次」
入口を見ると、革の鎧を着た兵士が行列に並ぶ人間達の手荷物を検査していた。
ちなみに異世界の言葉が理解できるのは、翻訳機能がついた機械が耳に埋め込まれているおかげらしい。
「次、通行証を出せ」
役人が横柄な態度で俺に手を出して言ってきた。
「ええと、ちょっと待ってください」
俺はスマホを取り出して画面を役人に見せた。
画面には政府が発行した異世界用の通行手形が表示されていた。
「お前、異世界人か」
役人はあからさまに嫌悪感丸出しの表情をしている。
「そうですけど」
俺もついイラっとした感じで返事をしてしまう。
「通っていいぞ。問題は起こすなよ」
「はい。気をつけます」
少しモヤモヤした気持ちもあったが、初めての異世界人の街にワクワクしながら門をくぐった。
「スゲ〜。ゲームみたいだな」
俺はつい興奮して街中の景色をスマホで撮っていく。
「ちょっとそこのあんた」
「はい?」
声の方を向くと、コスプレみたいな猫耳をした女性が立っていた。
「あんた異世界人だよね?」
「そうですけど」
「泊まる所は決まったの?」
「いえ、これから探そうかと」
「じゃあウチに泊まりなよ」
「や、ちょっと」
返事も聞かず、猫耳女は無理矢理に俺の背中を押して歩き出した。