(68)#取材④
「ごちそうさまでした。セーラさん、美味しかったわ」
見た目からは想像出来ない量を平らげた藤さんは、上品に口元を拭き、セーラに笑顔で感謝を述べた。
「そ、そうか?なら良かったよ」
嬉しさを隠しきれないセーラは、ちょっと照れくさそうに返事をした。
「よし、行きますか」
俺はセーラの機嫌が良くなったいい流れを止めないように、いつもよりテンション高めに声を出した。
「そろそろボスクラスのモンスターが出てくる頃なんですけど」
俺は魔力の反応をスマホで確認後しながら言った。
「ボスは何体いるんですか?」
少し距離を取った状態で藤さんが質問をしてきた。
「1度倒すとしばらくは出てきませんけど、しばらくすると新しい奴がボスになります」
「動物の群れのようにですか?」
「そんな感じですね」
普段は自撮り君が透明化したり、死角に隠れているので、やはり撮影されながら質問されるとかしこまってしまう。
「来るぞ」
先行していたセーラがボスを察知して俺達に向かって叫んだ。
「グォォォオオ」
豚が人型になったモンスターが、雄叫びを上げながらこちらに突進してきていた。
「隠れていてください」
「わかりました」
安木さんに警護されながら、藤さん達は物陰まで後退して行った。
「ダン、援護して」
「わかった。《スピードライズ》」
走り出したセーラに向けて言われるのと同時に俺は強化魔法を唱えた。
「《バーニングキック》」
倍の速度で走って行ったセーラは、燃えているように赤くなった右足で豚型モンスターの腹を貫通して見えなくなった。
「・・・・・・」
呻き声も出せず、豚型モンスターはドスンという大きな音を立てて倒れた。
「怪我はしてないか?って、くさ」
返り血で真っ赤になったセーラの側に駆け寄ると、鼻がもげるような臭いに思わず叫んでしまった。
「うぇっ。ダン、洗ってくれよ。気持ち悪いったらありゃしない」
「わかった。《ウォーター》」
俺は鼻をつまみながら、魔法でセーラについた返り血を洗い流した。
「サンキュー。あースッキリした」
びっしょりに濡れていたが、気持ち良さそうにセーラはお礼を言った。
「キャァアア」
悲鳴が聞こえ振り向くと、小型の豚型モンスターが藤さんを襲おうとしていた。
「しまった」
ボスを倒して完全に油断していた俺は、慌てて走る態勢をとった。
「《ツインマグナムショット》」
「ギャアアア」
走り出そうとした瞬間、魔力を込めた銃弾で安木さんが魔物を撃ち抜いていた。




