(54)#vsブル①
ゲートをくぐると、ビルダーランドらしき広大な平地に出た。
「人間、名を聞こう」
先に出ていた牛型魔族が俺達を出迎えるように立っていて、唸るような声で訊いてきた。
「ダンだ。お前は名前あるのか?」
俺は剣を構えながら訊き返した。
「我はブルだ」
ふんと鼻息を荒くブルは答えた。
「牛って、そのままかよ」
俺はぼそりとツッコミを入れた。
「何か言ったか?」
「いや、何も」
「ならば勝負だ」
まるで時代劇の武将のような立ち振る舞いでブルは叫んだ。
「トール、俺が前衛で戦うから呪文で援護頼む」
「わかりました」
ガー○イル型魔族との戦闘で足にダメージを負っていたので、トールには後衛をさせることにした。
「《パワーライズ》《スピードライズ》《ガードライズ》」
トールが素早く詠唱し、俺の身体能力を魔法で向上させた。
「サンキュー」
俺は駆け出し、戦闘君の両手で作った足場を踏み台に高く飛び上がった。
「《ストラッシュショット》」
トールの魔法レベルが俺より上だからか、いつもよりパワーアップした斬撃がブルへと向かっていった。
「はっ」
ブルは胸を張り、気合い?オーラ?バリア?理由はわからないが一喝で俺の必殺技を打ち消した。
「バケモノだな」
着地しながらその光景を目にした俺は唖然としてしまう。
今までの魔族も手強かったが、ブルの強さは別格だと感じた。
「くそーせっかくポイント貯まってきてたのにな。ええい、死ぬよりマシか」
俺は開き直ってテンションが上がった。
「トール、戦闘君を援護して少し時間を稼いでくれ」
「わかりました。何か手があるんですね」
「一か八かだけどな」
俺は戦闘君とトールにブルの相手を任せ、後ろに下がってスマホを取り出した。
「こんなに高いんだから勝てなかったら恨むぞ安木さん」
念じるようにつぶやいて、5万ポイント消費のボタンを押して俺はアイテムを購入した。
「ポイントショウヒカクニン。パスワードスーツソウチャクシマス」
音声案内が耳に直接聞こえたかと思ったら、SF映画に出てくるような機械で出来たスーツが俺の全身を包んだ。
「直接話すのは初めてですね。凡田さん」
「もしかして安木さんですか?」
「はい。今回は緊急事態と判断し、私が操作のサポートをします」
「わかりました。よろしくお願いします」




