(42)#vsバットハンター①
「うーん。魔法原石の反応はあまりないな」
俺はアプリで周囲を調べたが、ダンジョンには魔法原石の反応がほとんどなかった。
「ベロニカ姉さんの話だと、金目的で入った冒険者が魔族にやられたんでしょ」
今回も同行してきたセーラが拍子抜けした様子で訊いてきた。
「そう言ってたけど」
夕食の後、ギルドから被害報告があったことや、王様がベロニカさんに命令を出した経緯を聞いた俺は、翌日にダンジョンへ来ていた。
「ふぁぁあ。魔族と戦えると思ってマスターに休みもらったのに」
完全に気が抜けた様子のセーラはあくびをしながら言った。
「こらこら、だらけるんじゃないよ。魔族がいないか確認しないといけないんだから」
「はいはい。ダンは本当に心配性なんだから」
余裕の感じで返事をしたセーラは、ヨイショと反動をつけて軽く跳んで立ち上がった。
「とりあえず奥へ行ってみよう」
「やっぱり反応ないな」
ダンジョンの最下層に着いてもアプリに反応はなく、来る途中に現れたモンスターも雑魚ばかりで魔族の気配は全く感じられなかった。
「このダンジョンからいなくなったのかな」
「ダン、あぶない」
「うわっ」
俺がスマホをしまって歩き出そうとしたとき、セーラに突き飛ばされた。
「イテテテ」
「ダン・・・・・・大丈夫か?」
「俺は大丈夫だ。セーラ、血が、止めないと」
セーラの左胸から大量の血が流れていることに、俺はみっともなく動揺していた。
「これくらい大丈夫だから」
「動くな。《ヒール》」
魔法で止血は出来たが、出血が多くセーラの顔色は真っ青だ。
「《ホーリーバリア》」
俺はセーラを囲むように結界を展開してから、スマホのカメラで攻撃があった方向を物陰から撮影した。
「こいつはコウモリか?」
画像には逆さまにぶら下がっているコウモリ型の魔族が写っていた。
「シェアアア」
闇の中から俺の位置を正確に狙って攻撃が飛んできた。
「くそ、こっちは何も見えないのに。どうしたら」
「シェアアア」
コウモリ魔族は考える間を与えないように攻撃を止めることなく続けた。




