(37)#vsロベルト①
「おおーっと、何と侵略者が圧勝だあぁぁぁ」
実況をする男の声が会場に響く。
「だから侵略者じゃないって」
ボソっと独り言で俺はツッコんだ。
「マジか、一発で倒したぞ」
「これが異世界人の力なのか」
俺は、観客からの興味と恐怖が混ざった視線に落ち着かずリングから離れようと歩き出した。
「ちょっと待った」
「あ、困りますよ勝手に喋ったら」
「うるさい。ダン、次は俺とだ」
「ロ、ロベルトさん?」
私服姿のロベルトさんが、メガホンを奪い取って俺に対して叫んでいた。
「え?オッケーなの?はい。え、え、ゴホ」
何やらスタッフに耳打ちされた実況の男が背筋を伸ばして喋り始めた。
「何と、フリーダム国最強の男と侵略者が激突だあ」
「おぉぉぉぉぉぉ」
静かになっていた観客達の雄叫びのような声が割れんばかりに響く。
「いいんですか?騎士団長が賭け試合に出て」
「非番だから問題ない」
絶対に後でトールに怒られるなと思いつつ、引けない空気に俺も覚悟を決めた。
「よろしくお願いします」
「おお。遠慮せず来い」
「刀だと折られそうだし、こっちにするか」
腰の刀と新しく強化した剣を入れ替えて装備した。
「では、試合開始」
さっきは叩かなかったのに、実況の男はプロレスとかで使うようなゴングを激しく鳴らした。
「とぉぉりゃ」
「はっ」
「どおした、どおした」
「くっ、手が」
魔法で強化してるのに、俺は防御するだけで精一杯で手も痺れてきていた。
「おい、おい、それじゃセーラはやれんな」
「何でセーラが出てくるですか」
「俺はあいつの兄貴みたいなもんだからな」
「はっ」
俺はロベルトさんに蹴りを入れて距離を取った。
「何かやる気だな?来い」
完全に楽しんでいる様子のロベルトさんは、余裕の笑みを浮かべて出方を待っている。
「試してみるか」
勝ちたい気持ちに熱くなった俺はスマホを取り出した。
「いいねポイントを消費。リミッター解除」
音声認識に反応したスマホが閃光のように輝き始めた。




