(31)#彼女が出来ました
ダリアからもらった地図の場所は大きな木がそびえ立つ自然豊かな墓地だった。
「セーラ」
俺は小さい石碑の前で体育座りをしていたセーラに声を掛ける。
「何だよ。女たらし」
ちょっと落ち着いたようだったが、まだ怒っている様子のセーラは石碑を見つめたまま返事をした。
「隣、座るぞ」
ちょっと距離を空け、俺はあぐらをかいて座った。
「まず、俺が好きなのはお前だけだ」
「・・・・・・」
直球の言葉にもセーラは黙ったまま聞いている。
「次に、あの写真はいいねの為に協力してもらっただけで俺の趣味じゃない」
「・・・・・・」
セーラは黙ったままだが、俺はかまわず話を続けた。
「確かにベロニカさんはキレイだ」
「開き直りかよ」
怒っていてもツッコミはするんだなと思ったが、俺はそのまま話を進めた。
「そこら辺の男と同じで美人は好きだ」
「何が言いたいんだよ」
自分でもグダグダだと感じつつ、膝立ちして無理矢理セーラを抱きしめる。
「バカ、離せよ」
「離さない」
バタバタするセーラをさらに力強く抱きしめる。
「お前の両親が見ている前で誓うよ」
俺の熱に押されて観念したのか、セーラは抵抗するのをやめて黙っていた。
「セーラ、愛してる」
元の世界にいたときは、こんなキザなセリフを自分が言うことになるとは考えもしなかった。
「わ、私も」
「え?何て?」
恥ずかしそうにするセーラが可愛いかったので、俺はわざと訊き返した。
「だ、か、ら、愛してるって言ってるだろ」
怒鳴ってはいたが、セーラの顔はすごく嬉しそうだ。
「じゃあ、撮るぞ」
「バカ、撮るなよ」
俺は恥ずかしがるセーラを無視して自撮り君を呼び出して写真を撮った。
「彼女出来ましたっと」
「何やってるんだよ。やめろ、バカ」
「やめませーん」
俺達は、側からみればバカップルのようにしばらく走り回っていた。




