(29)#いろいろやってしまいました
「バカ、は、離せよ」
俺につかまれてベッドに来たセーラは酔いとは関係なく真っ赤になっていた。
「セーラってホント可愛いよな」
頭は冴えていたが、鼓動は高まっていて、普段は恥ずかしい言葉がすらりと出てきた。
「酔っ払い過ぎだろ。帰るぞ」
照れたセーラは慌てて離れようとしたが、グッと力を入れて再び抱き寄せる。
「一緒にいてくれ」
「私は獣人だぞ」
「俺は異世界人だよ」
「で、でも、ってオイ、ウッ」
抵抗するセーラをキスして無理やり黙らせた。
「酔っ払い過ぎだろ」
「もう覚めてるよ」
「・・・・・・」
普段の男勝りな姿はなく、すっかり女の顔になったセーラが黙ってこちらを見つめていた。
「ホント、キレイだよ」
勢いに乗って服を脱がしたセーラの体は引き締まっていて美しく、俺は思わず見惚れてしまう。
「ジロジロ見んなバカ」
言葉はきつかったが、セーラの顔は嬉しそうだ。
「ホント、キレイだよ」
「他にないのかよ」
「じゃあ、よろしくお願いします」
「うるさい。黙ってしろ」
酒の勢いとはいえ、内に秘めていた感情と欲求を解放した俺は、しばらくの時間セーラを求めた。
「ホァ、頭がイテェ。お、おはよう」
「お、おはよう」
俺もセーラもすっかり酒が抜けてシラフに戻ったのもあり、お互いまともに顔を見れずにいた。
「仕事休みだよな。市場に朝飯でも食いに行くか」
「別にいいけど」
着替えて部屋を出ようとしたとき、落としたスマホの画面が光って通知を知らせた。
「何やってんだよ」
呆れながらスマホを拾ったセーラの顔がスッと強張ったのが見えた。
「これ何だよ」
画面にはポーズを決めたベロニカさんの写真が写されていた。
「いや、それはいいねが押されてだな。投稿するのに写真撮らせてもらって、ええと」
「うるさい」
グダグダの説明をする俺にスマホを投げつけてセーラは部屋を出ていってしまった。




