(12)#異世界ディナー ③
「かなり冷えているな。こっちの世界はどうやって冷やしているんだ?」
出されたゲールは、冷蔵庫に入れたように冷えていた。
「グラスに冷却魔法がかけてあるんだよ」
「魔法か」
異世界ならではの方法に俺はグラスをまじまじと見つめた。
「誰でも魔法は使えるのか?」
「例外はいるけど、これぐらいなら誰でも使えるよ」
「そうなのか」
「上級呪文は魔法使いや冒険者じゃないとダメだけど」
「免許がいるのか?」
「試験に受かったレベルのものだけ使えるんだよ」
「ふーん」
異世界でも免許や資格はいるらしい。
「ほい。お待たせ」
ダリアが熱々の鉄板にのったジューシーなステーキをテーブルにのせてきた。
「待ってました」
ヨダレが垂れる勢いでセーラのテンションが上がる。
「これは美味そうだ」
「だろう?」
思わず明るくなった俺の顔を見て、セーラはさらにテンションが上がる。
「いただきます」
「いただきます?」
俺が手を合わせて言ったら、セーラが疑問を浮かべた顔でこちらを見ていた。
「ああ。これは俺の世界の挨拶だよ」
「へえ。わざわざ口に出すんだね」
「こっちでは言わないのか?」
「種族で違うけど、基本は黙って祈るかな」
そう言ってセーラは腕を交差させ、胸に手を当てて数秒祈りを捧げた。
「よし、食べようぜ」
「ああ」
俺たちは気を取り直して食事を始めた。
「これ、よく食べるのか?」
ステーキを指差してセーラに訊いた。
「ああ。この街の周りでよく出るからね」
「もしかして、こいつか?」
俺は倒す前にブレブレで映った狼モンスターを見せた。
「ああ。こいつだよ」
「マジか。コイツ、こんなに美味かったのか」