(11)#異世界ディナー ②
「セーラ、新しい男かい?」
「違うっての、客だよ客」
ウェイトレスのような格好をした美人がセーラにニヒヒと笑いながら話しかけてきた。
「そうかい。お似合いだと思うけどね」
「うるさいな。ダリア、早く注文とれよ」
意外と照れ屋なのか、セーラは耳が赤くなっている。
「はいはい。で、何にするんだい?」
セーラをからかい終わったダリアは、茶色の紙の束を取り出して注文を聞く姿勢になる。
「肉でオススメある?」
「ガーウルフのいいやつが入ってきたけど、どうだい?」
「じゃあ、ガーウルフのステーキで」
「飲み物はどうする?」
「そうだな。ダンは酒って飲める?」
「ああ。人並みには」
「ならゲールを2つで」
「はいよ」
ダリアは気持ちのいい返事をして厨房へ入って行った。
「ダンは何でこっちに来たの?」
セーラは料理が来るまでの暇つぶしに話しだした。
「悪いけど、来たくて来たわけじゃないよ」
俺はざっと今までの経緯を話した。
「ふーん。暇で健康だったからこっちに放り込まれたと」
「お前な。もうちょっとオブラートに言えよ」
「悪い悪い」
言葉は謝っていたが、セーラは泣くほど笑っていた。
「ほーい。お待たせ」
そうこうしていたら、ダリアがグラスを両手に戻ってきた。
「きたきた」
セーラはキンキンに冷えたゲールに目を輝かせる。
「これがゲールか」
名前もだが見た目もビールに似たゲールを、俺はスマホで撮った。
「ダン、ほら早く。カンパーイ」
セーラは俺に向けて自分のゲールを持ち上げ、乾杯を促してきた。
「ああ、乾杯」
俺はテーブルにスマホを置き、グラスをカチンと鳴らして乾杯した。