(107)#跡目問題③
「休養中に申し訳ありませんでした」
俺達を家まで送り届けた安木さんが、玄関前で軽く頭を下げ謝罪した。
「気にしないでください。僕の問題ですから」
俺は安木さんが気にしないように笑顔で言う。
「では、私は失礼します」
気のせいか、安木さんはちょっと恥ずかしそうに車に乗って帰って行った。
「そういう天然の女たらしな所は父さんそっくりね」
いつの間にか隣に立っていた母さんがボソっと呟いた。
「何を言っているんだよ」
からかわれた俺は、ムキになって言い返してしまう。
「お父さんゆずりだったわけね」
そう言いセーラが冷たい視線を向ける。
「いやいや、セーラまで何言ってるんだよ」
「セーラちゃん、女たらしは放っておいて入りましょ」
「はいお母さん」
女2人が結束を固め家に入って行き、俺はポツンと玄関前に取り残された。
「それで、あんたどうするわけ?」
全員分のお茶をテーブルに置き、母さんが座りながら俺に訊く。
「どうするって、突然継げって言われてもな。ていうか説明してくれよ」
俺はお茶を啜りながら、母さんに詳しい説明を求めた。
「私はこっちの世界の人間じゃないのよ」
母さんは結構な事実を何でもないことのように言った。
「異世界人ってこと?どうやって来たの?」
スミスさんとの会話で察しはついていたが、いざ母さんから説明されると、動揺して頭が処理出来ずにいた。
「跡継ぎのことで家出した私は、ダンジョンに迷い混んでしまって。中にあった次元の狭間っていうのに吸い込まれてしまったのよ」
俺とは逆で母さんは淡々と説明していく。
「それでこっちの世界に来た私は、いろんな人に助けられて、何だかんだあって政府の監視下に置かれることになったのよ」
突拍子もない出来事を青春の思い出を語るように母さんは話し、ふぅと息をつきながらお茶を飲んだ。
「それで戸籍をもらった私は、児童施設に住むことになって、高校に通うことになって、それであとはこの前話した通りよ」
面倒くさくなった母さんは、途中を端折って説明を終わらせた。
「ってことは、俺は異世界人とのハーフなの?」
「そういうことになるわね」
「マジか」
俺は突然明かされた事実に頭を抱えてしまう。
「じゃあ、異世界とのゲートが繋がったのって」
「私が来たのがキッカケになるわね」
「マジかー」
異世界で冒険することになった原因が母親だったとわかり、混乱と驚きで机にうつ伏せになった。