(100)#帰省①
「しっかし大丈夫かねぇ」
心配そうな顔をしたダリアさんがセーラを見ながら言った。
「何がだよ」
セーラは不服そうに訊く。
「ダンの世界で問題起こさないかだよ」
ダリアはそう言い、人差し指でセーラのおでこを突いた。
「大丈夫ですよ。僕もいますから」
ハハと苦笑いしつつ、俺はダリアさんに言った。
「それが1番気がかりなんだよ」
フォローしたつもりが、今度は俺が呆れ顔で見られる。
「あんたの療養目的で帰省するのに、セーラの世話してたら本末転倒だよ」
「ハハ。そうですね」
傷が治った俺は、一時的に自分の世界に戻って療養することになり、セーラもついてくることになったのだ。
「凡田さん、そろそろ行きますよ」
やり取りを見ていた安木さんが、声を掛けてきた。
「はい。お待たせしました」
俺は頭を下げて小走りで安木さんの所に行き、異世界を渡るワープゲートに入った。
「何だここ?鉄の箱ばっかだな」
大がかりな機械や床びっしりにケーブルが置かれた部屋に、セーラは目を見開き驚く。
「こんなので異世界を渡ったんだな」
あちらの世界に行ったときは気絶していたので、改めてみた設備に俺も呆気に取られていた。
「お2人ともこちらにどうぞ」
慣れた様子の安木さんに案内され、俺達は会議室らしき部屋に通された。
「凡田さんには療養期間として1ヶ月こちらの世界に滞在して頂きます」
役所の職員みたいに資料を見せながら安木さんは話す。
「はい」
俺は頷きつつ短く返事をした。
「国内であれば旅行に行ってもらっても構いません」
「いいんですか?」
自宅で軟禁状態になると思い込んでいた俺は、安木さんの説明に思わず驚いてしまう。
「体に負担でなければ大丈夫です。この帰省は凡田さんのメンタルケアが1番の目的ですから」
安木さんの笑顔は異世界じゃないからか、見たことのないリラックスしたものに感じた。
「何か質問はありますか?」
「特にないです」
「では行きましょう」
「早く外に出ようぜ。息苦しくてしょうがねえよ」
黙って隣に座っていたセーラが大きな欠伸をしながら言った。
「着きました」
目隠しをされた状態で車に乗せられ30分程経った頃、安木さんに声を掛けられ俺達は車を降りた。
「ここがダンの家か?」
「ああ。数ヶ月しか経ってないのに何年も帰ってない気がするよ」
俺がしみじみと実家の一軒家を眺めていると、バタンと玄関が開いた。
「ダーン、おっかーえりー」
「お?ちょ、ちょっと、え?」