(10)#異世界ディナー ①
「おーい。ダン、起きろって。飯食いに行くぞ」
「う~ん。もうちょっとだけ眠らせて」
「何寝ぼけているんだよ」
「イタッ」
寝ぼけていた俺の頭をセーラが容赦なく叩いた。
「ほら、あたしは腹減っているんだよ。さっさと行くぞ」
「ああ。ごめん、ごめん」
俺はふらつきながらベッドから立ち上がり、セーラについて宿を出た。
「何か好き嫌いあるかい?」
「これといってないけど」
「じゃあ、肉でいいよな?」
「それでいいよ」
異世界の料理がどんなものか全く想像が出来なかったので、とりあえずオッケーした。
「安くて美味い店があるからさ」
セーラはニヒヒと笑いながら、夜で人気が少なくなった街を足速に進んでいく。
「ハァハァ。ちょっとゆっくり歩いてくれよ」
日頃の運動不足と異世界のストレスでクタクタだった俺は、ルンルンと歩くセーラについていくだけで息が上がっていた。
「おい、ついたぞ」
セーラは立ち止まり、賑やかな声が聞こえる店を指差して言った。
「居酒屋みたいなものか?」
俺は独り言をいいながら、老舗居酒屋みたいな風貌をした外観をスマホで撮った。
「イザカヤって何?」
「俺の世界の飯や酒を飲み食いする場所だよ」
「まあ、ここもそのイザカヤみたいなもんかな」
「へぇ」
「さっ、入ろうぜ。腹が減ってしょうがないよ」
「ああ。行こうか」