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第2話 魔王との邂逅

 エリナは男からの問いかけを聞いた瞬間、異常なまでの殺気と漂う死の重圧に負け、ペタンッと床に尻もちをつく様に、恐怖で腰を抜かす。

 そして恐怖で体がガタガタと震え、失禁し、水たまりが広がっていく。

 男からの問いかけに何か答えないと、殺されるとエリナは思い、口を開こうとするが言葉が出てこなかった。

 そんな状態の自分に焦燥感を覚えながらも、何とか声を出そうとするが出来なかった。


「…………」


 その光景を魔王は顔色一つ変えず、見守っていた。

 そしてエリナが瞳に涙を溜め込んでいるのを見て、最高神との決戦前に見た光景を思い出す。

 魔王は手に握っている剣を手放す。

 すると、剣は床に着くか着かないかのタイミングで霧散し、消える。

 それと同じくし、纏っている漆黒の武装も、霧散する。


 魔王が武装を解除したことで辺りに立ち込めていた重圧が薄れていく。


「再び問おう。貴様が我を召喚したのか?」

「!! ………」


 エリナは何とか言葉を振り絞ろうとするが、体がそれを拒絶した。

 だが、何か反応をしないといけないと思い、必死に体を動かし、何とか頷くことができた。

 震えも先ほどよりは収まったが、それでも恐怖は未だエリナの心に中にくすぶっていた。


 その様子を顔色一つ変えず、見守っていた魔王が口を開く。


「話せそうな状態ではないようだな。……娘よ、その格好では気持ち悪いだろ? 気晴らしに服でも着替えてこい。それまで我はここで待つ」

「…………」


 エリナはコクコクと頷くと、生まれたばかりの小鹿の様に足を震わせながら立ち上がり、部屋を後にする。

 魔王はエリナが部屋を出るのを確認すると、先ほどまで彼女がいた場所にある水溜まりを数秘術で、原子分解を行い、消滅させた。

 そして足元に描かれている魔方陣に視線を向け、じっくりと見渡していく。


「これは勇者召喚の魔方陣か……。我の知っているものと似てはいるが、構造が違うな」


 魔方陣の解析を終えると、魔王は辺りを見渡す。

 すると、机の上に置かれた古い本が目に留まる。

 魔王はそれを手に取り、ペラペラと適当にページをめくり、魔方陣が記載されていないページを開く。

 そのページを読むと、魔王が少し驚いているような反応をする。

 もし感情があれば、目を丸くしていたことだろう。

 そこにはこう記述されていた。


 ――僕らが国に帰ると、魔王を倒した英雄として国中から歓迎された。

  ……だけど、実際には魔王アルス=マグナを倒してはいない。

  そのせいなのかはわからないけど、仲間たちは態度こそ喜んでいるけど、内心ではこの状況をどう受け止めればいいのか、悩んでいるようだった。

  勿論、僕もそうだ。

  魔王と分かり合えるような未来なんて、想像もしていなかった。

  彼と話し合う前は、魔王とは残虐無慈悲の存在だと言うことが、僕らの共通認識だったのだから。

  だけど、彼が行ってきた蛮行が他者を守る為だったとしたら、あの無慈悲さも納得できる。

  話し合いの後、彼はその強大な力を行使し、魔族を……いいや、旧人類という種を守るために自ら犠牲になる事を選んだ。

  そして、その事実を知るのは彼らと僕らしか居ない。

  今、僕達の身に何も起きていないということは、彼が最高神を倒す事に成功したからに違いない。

  魔王の犠牲のおかげで戦争の終わりが見えて来た。

  彼には感謝してもしきれない。

  だからこそ、僕は魔王の遺言通り、戦争を終わらせるために各国を渡り歩いた。

  そして何とか終戦締結までの道筋を立てることに成功した。

  だけど、それから暫くして、ある重大な出来事が起こった。

  僕はその時、魔王が僕個人に残した言葉の意味を知ることになったのだ。

  その出来事とは……


 魔王が読んでいたのは勇者の日記だったのだ。

 更に先を読もうとしていると、扉がノックされた。

 その音を聞き、魔王は現実に引き戻される。


「もっと読んでいたいが、仕方ないな。はいっ……」


 魔王は「入ってくれ」と言おうとしたが、先のエリナの反応を思い出し、力を抑え込むことにした。

 とはいっても、魔王は最高神との戦闘と、転生の影響で力をほとんど失っていた。

 それ故に召喚直後と比べると額にある魔王の紋章が小さくなっている。

 だが、それども一般人にとっては異常なまでの力であった。

 だから、魔王はさらに力を抑え込むことにした。

 そして力を抑え込むと、紋章が一気に小さくなり、それに合わせて魔王の瞳にも感情が戻り始める。

 紋章は先ほどまでの禍々しく変質した形ではなく、本来の形に戻っていた。

 魔王は殺気も消えたことを確認すると、返事を返す。


「入ってくれ」

 

 その言葉に反応して扉が恐る恐ると言った感じで開かれるのだった

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