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第8話 魔力が使えない原因

 あれから一日が経過した。

 突如、山が消滅したことで、王都は大パニックに包まれていた。


「外はどんな様子になってる?」

「大騒ぎだよ! 私の所まで調査協力が来たんだよ!」

「で、行くのか?」

「まさか。私はまだ学生だからって理由で逃げてきた」


 難を逃れたという表情をしており、魔王がそれを見て笑った。


「ハハハ! そりゃ面白い」

「笑い事じゃないよ! こっちはすごく大変だったんだから!」


 エリナは愉快そうに笑う魔王に、頬を膨らませてふて腐れるように明後日の方を向く。


「そういえばマスター、いつの間にため口になったんだ」

「え? あ!?」

「そのままでいいからな。その方がむず痒くなくて済む」


 そう言って満足そうに頷く。

 エリナが反応に困り、微笑して誤魔化す。


「そうそう、マスターにやっておきたいことがあったんだ」

「やっておきたいこと?」


 エリナはそこで咄嗟に両手で体を守る動作をする。


「いや、そんなことはしないから安心しろ」


 それを聞いて、安堵の息を吐く。


「ほら、手の甲を出せ」

「何するの?」


 手の甲を魔王に差し出す。

 そこに魔王が指先に魔力を込め、何かを描くように指を動かす。


「く、くすぐったいよ……」


 込み上げそうな笑いを、必死に我慢する。


「よし。できた」

「これは?」

「契約の紋章だ。俺とマスターとの間にパスを繋いだ」


 そこでえっ!? という不安そうな表情を見せる。


「安心しろ。契約内容は白紙だ。何か決めたいことがあれば、その時両者の同意をもって、紋章に刻印するから大丈夫だ」


 それを聞きエリナはホッとすると、紋章の力について興味を持つ。


「魔王さま、この紋章って何ができるの?」

「俺の力の一部を引き出して使うことができる。魔力とか各種超能力(スキル)、あとは身体強化などの力だな。ちなみに魔法は無理だ。でも、勇者召喚の召喚主だから、もしかしたらってのはありそうだけどな」

「じゃあ早速!!」


 紋章に魔力を集めようした時、魔王が制止の声をかけた。


「やめとけ。今のマスターだと恐らく死ぬぞ」

「え!? ……じゃあなんでこの紋章を?」

「俺のマスターである証と、いざって時の悪あがきようだ。使いこなせるようになれば、多分楽しいぞ。と、いうわけで精進したまえ」


 エリナは新しい目標ができ、未来の自分を思い描いて心躍っていた。


「そうそう、言い忘れてたが俺のできる範囲でマスターの願いを一つ叶えてやろう。転生のきっかけを作ってくれた恩だと思ってくれればいい」


 その言葉に悩む動作などせず、すぐに願いを言う。


「じゃあ私を強くして!! 誰かを守れるくらい強い魔導士になりたい!」

「そんなんで良いのか?」

「うん!!」


 エリナが力強く頷いた。

 その燃えるような瞳で魔王を見つめる。


「わかった。じゃあ、願いの件は保留だ。俺も体を鍛え直す必要があるから、これから一緒に頑張っていこう」


 そう言って魔王が手を差し出そうとすると、それより早くエリナが小指を出す。


「ちょっと子供っぽいけど、こういうのはシンプルが一番でしょ?」

「ふっ。そうだな」


 そして互いに指切りをする。

 だが、それを終えると魔王は空間収納から取り出したナイフで、小指を切り落とした。

 小指から鮮血が滴り落ちるをの見て、エリナは背筋に冷たい汗が流れるのを感じた。


「え? …………」

 

 ドン引きするエリナを見て、魔王が首を傾げる。


「これは指を切り落とす契約的儀式か何かなんだろ?」


 そういいながらナイフの刃先を持って、エリナにナイフを渡そうとしていた。


「何それこわい!!」

「ふむ、違ったか?」

「口約束でそんな怖い事しないからね! ほら、子供とかが口約束とかでやるやつだよ!」

「言われてみれば遠すぎる過去でやった記憶があるな……。あれか」


 そう言いながら、落ちた小指を拾い、傷の断面に当てる。

 すると、そこから闇が少し溢れだし、指が修復された。


(そんなことも出来るんだ)


 心の中でそんなことを思っていると、魔王が手を差し出してくる。

 そしてその手を取った。


「改めてよろしくな。マスター」

「うん。よろしく!」


 こうして二人の修業が始まることになる。

 山が世界の修復力で直るまでの間、エリナは学院へ行き、魔王は実験室で神との戦いで負ったダメージを癒しつつ、同時に魔力の回復を行う。

 そして王都中の騒ぎが収まり始めた頃、二人は本格的に修業をするため、西門から王都を出て、近くの森に向かう。

 人気が無くなり、周りの事を考える必要が無くなると、修業を始めることになる。


「さて、今のマスターの実力を見せてくれ」

「わかったよ。でも、どうやるの?」

「簡単だ。今使える中で一番強い魔法を、あの木に放ってくれればいい」


 正面の木を指さしながら、指示を出す。

 その指示に従い、エリナが魔法を使う。


「我が声に応え、炎の力よ、今ここに集いて、敵を打て!! ――ファイアーボール!」


 的に向かって、火球が放たれるが、その軌道は不安定で右往左往しながら、何とか的に着弾した。

 その威力は詠唱をしているにもかかわらず、木に軽く焦げ目をつける程度だった。


「今のが全力か?」

「はい……」


 失望されたと思ったエリナは、俯いてしまう。


「ふむ」


 魔法の威力を見て、魔王が思案を巡らせていた。

 返事がないことに、エリナが恐怖している。

 だが、それも杞憂に終わった。


「なるほど。だいたいわかった。マスターって何か病気……いや、体質というべきかな。そんなのを持ってたりしないか?」

「ううん。私は生まれた時から、そういったものは持ってないよ。たまに、風邪を引いたりはするけど」

「となると、魔方陣に原因があるのか? ……さっきの魔法の魔方陣を見せてくれないか?」

「いいよ」


 エリナは下級魔法の魔方陣を聞かれ、首を傾げながら、魔方陣を魔王に見せる。


「魔王様はこの魔法を知らないの?」

「知らないというか、新人類が独自に作り替えたものだから、俺らが使うやつとは違うんだよな」


 そう言いながらファイアーボールの魔方陣をじっくりと観察する。


「これは酷いな。文字の配列がてきとうだし、これじゃ魔力効率が悪すぎる。極めつけは、この余計な文字のせいで、魔法全体のバランスが崩れてやがるときた。……この程度の魔法なら、昔の新人類どもは俺らと同等の域まで昇華させてたのに、一体何があったんだ……」

「そ、そんなに酷いの?」

「ああ、むしろこれで魔法が成り立つのがすごいというレベルで酷いな」


 そう言って、ため息を吐く。

 その様子を見て、エリナがふと気になったことを口にした。


「昔の魔法はどういうものだったの? 見せて欲しい!!」

「いいぞ。しっかり見とけよ」


 そう言って近くの木をてきとうに狙う。


「――フレイムボール」


 放たれた火球は、かなりの速度で的に目掛けて飛んでいく。

 そして着弾すると小爆発を起こす。


「少し弄って火力面を上昇させてるが、だいたいこんな感じだな」

「す、すごい! 今のファイアーボールは、どう改変してもここまでの火力は出ないのに!」

「だろうな」


 エリナが興奮気味に言う。


「今の魔法はフレイムボールって言う。マスターが言う所の、ファイアーボールの原型になった魔法だな」

「そうなの!?」

「昔の新人類……マスターの祖先が俺らの魔法を、模倣して生まれたのが、そのファイアーボールだ。とは言っても、俺が知ってるのは、もっと無駄のない精巧な作りだったがな」


 そう言って魔王は、二つの魔方陣を落ちていた小枝で地面に書く。

 そして先ほど見た今の魔法を比較できるよう、エリナがその隣に魔方陣を描く。


「見比べると、違いがはっきりするね」

「確かにな。てか、ほとんど別物じゃねーか!?」


 現在と昔のものを見比べ、魔王が心の声を漏らす。


「もしかして魔法文字は、文字一つに意味があるんじゃなくて、文章として初めて意味を持つの?」

「ほおー。これを見て自力でそこに気づくとはやるな」

「えへへ」


 照れくさそうに頬を掻く。


「正確には文字単品で効果を発揮するものと、文章で初めて効果を発揮するものの二種類がある」

「へー。ってことは、私たちが使ってる魔方陣を見る限り、文字単体で効果があるものはないよね?」

「一つもないな」


 互いに現在の魔法の欠陥をしり、頭が痛そうな表情を浮かべる。


「私たちのご先祖様が使っていた魔法文字と、魔王様が使ってる魔法文字が、少し違うように見えるけど、気のせい?」

「いや、気のせいじゃない。俺らが使っていた文字をルーン文字と呼び、マスターの先祖達が使ってる文字を魔法文字と呼ぶ。だから、同じ魔法でも、構築方法が違うんだ」

「なるほど!! じゃあ、二つを組み合わせれば、また違うものが作れるってことだよね?」


 その言葉に魔王が頷く。


「だけど、使い慣れた形を捨てて、見たこともない方式を作るのはかなり骨が折れる。もはや変態の領域だぞ」

「あはは……」


 魔王の言葉に苦笑いをするエリナ。


「とりあえず、今は魔法の練習だ。そうだなー……。よし、昔の魔法を使え。遅かれ早かれマスターには、俺の時代の魔法を教えるから、今日がその第一歩だ」

「うん!! じゃあ、覚えやすいご先祖様のでいい? まだルーン文字は頭に入ってないから」

「ああ、それで構わない。さあ、じゃんじゃん撃て!」


 その言葉に頷き、エリナは地面にある魔方陣を見ながら魔法を構築していく。


「言い忘れたが、詠唱はいらないぞ。火力は上がるけど、その魔方陣ならする必要がない」

「そうなの? 私まだ無詠唱魔法を使ったことないよ?」

「問題ない。どんなにセンスがない奴でも、第二位階の魔法は無詠唱で出来る。何故なら、繊細な魔力操作を魔法側で行うからだ。詠唱は魔法の性能を上昇させるための、補助に過ぎないからな。わかったか?」

「うん! ……じゃあ、行くよ!! ――ファイアーボール!」


 放たれた火球は先ほどとは違い、安定した軌道を描いて、的に飛んでいく。

 威力もそこそこと言った感じである。

 そして数発撃ったころには、魔方陣も頭に入り、昔の魔法を撃ちまくっていた。

 だが、その様子を見ていた魔王が、考え込んでいた。


「まさかな……」


 今は修業に集中しようと自分に言い聞かせ、問題を先送りにするのだった。

 そしてエリナが順調そうなのを確認すると、魔王も修業を始める。

 まず、神との戦いでズタズタになった魔力回路の修復から始めていた。

 瞑想するように、内側に意識を集中させ、魔力回路をじかに感じる取る。

 エリナの魔法のできを見つつ、回路の破損個所を酷い順に探していき、繊細な魔力操作で傷口を縫うように無理やり繋ぎ合わせる。

 そして魔力回路に回復魔法を使い、修復を試みる。

 だが、修復はできてはいるが、治るペースは遅い。

 それをじれったく感じながらも、無いよりマシだと自分に言い聞かせる。


「完全に治るまでは、もうしばらくかかりそうだな」


 魔王は回路の修復を行いつつ、他の魔法を使ったり、無駄に魔力を消費して、回路の品質向上を目指す。

 その間にも、エリナの魔法をじっと見ながら分析を行う。


「さっきよりは、良くなってきてるんじゃないか?」

「ほんと? 魔方陣がすごくて、自分じゃあまり実感がないよ」


 褒められて嬉しいそうにはするが、実感がないだけに首を傾げる。

 その様子に魔王が苦笑する。


「このまま使えば、実感も湧くはずだ」


 そうして修業をしているとあっという間に、日が暮れる。

 二人は魔王の転移魔法で地下室に戻った。


「そういえばマスターって学生だろ? 学校とか行かなくていいのか?」

「え!? 何で私が学生だって知ってるの!?」


 エリナの驚きぶりに、魔王が呆れたような表情を浮かべる。


「マスターが自分で学生だって言ってたじゃないか。それに召喚された時も制服だったし」


 少し考え込むと思い出したらしく、「あっ」と小声を漏らす。


「言われてみれば、確かに言ってたね。えへへ……」


 誤魔化すように可愛らしく微笑む。

 魔王がやれやれと言った雰囲気を出す。

 そして本題を切り出した。


「話が変わるが、マスターが魔法をうまく使えなかった理由に心辺りがある」

「ほんと!?」

「ああ、だが、しっかり調べてみないと何とも言えない。どうする?」

「お願い!!」


 自分が何故、魔法をうまく使えないのかそれについてわかるなら、何でもするとエリナはずっと思っていた。

 だからこそ、原因がわかるかもしれないと目を輝かせていた。

 原因の一つは魔法だったことが分かったが、それでも魔王の言葉を聞き、あれでも十分じゃないことはわかっていたのだ。


「じゃあ、マスターの体を調べるぞ。……と、いうわけで服を脱げ」

「え!?」

 

 唐突に言われ、困惑の表情を浮かべつつ、顔を赤く染めながらも、医療行為だと自分に言い聞かせ、服を脱ごうとする。

 それを見て、魔王が悪い笑みを浮かべながら口を開く。


「冗談だ。まさか、本当に脱ごうとするとは、思ってなかった」

「もーバカ!!」


 ポカポカと頬を膨らせながら魔王を叩く。

 その様子を見て、魔王が愉快そうに笑う。


「ほらほら、落ち着けって。検査をするのは、本当なんだからさ」


 そう言って両手でエリナの肩を掴み、自分から少し遠ざける。

 その行為に不満を抱きながらも、渋々といった様子で従う。

 その態度が表情にも出ており、魔王が苦笑する。


「さて、始めるぞ」


 そう言うと魔王が透視の魔眼を発動させる。

 この魔眼は名前の通りの、能力がある。

 魔力の消費量が、増えれば増えるほど、透視できる範囲が変わる。

 少量なら服が透けて下着が見える程度であり、量を増やせば二枚の壁越しでも向こう側を見れるといった具合だ。

 だが、今回はエリナの体を見るわけだが、当然内臓など調べるわけではない。

 なので、魔眼に特殊なフィルターの様なものを付与し、魔力的なものを観察して分析していく。

 無論、端から端まで。

 

 だから、魔王が下から上へと視線を動かしている。

 もちろん、魔眼の効果で色々な所も丸見えである。

 その視線が気になり、エリナが再び顔を赤く染めて、大事な所を手で隠す。


 魔王はこの状況に役得感を覚えながらも、医療行為だと建前を作る。

 分析もほとんど完了に近づいていた。

 仕上げとして、更に特殊な付与(エンチャント)を施し、エリナの保有魔力を見る。

 それを目の当たりにした瞬間、何が原因なのか全てを理解し、驚きのあまり、声を漏らす。


「まじか!?」


 小さく漏らした声でも、二人きりの部屋ではエリナに聞こえるには十分の大きさだった。


「何か分かったの!?」


 期待の眼差しで魔王を見る。

 魔王が魔眼を解除して、その原因を告げる。


「どうやら、マスターは余剰魔力体質と言う、稀な体質の持ち主みたいだ。呼称は俺達、旧人類のもので呼ばせてもらう」

「余剰……魔力体質?」


 聞き覚えのない名前に首を傾げた。

 その反応を見て、「やはり、この時代じゃ知らないのか」と魔王が呟く。


「どういうものか、聞いてもいい?」

「余剰魔力体質ってのは、厄介な体質でな。生まれつき異常な量の魔力を持ってることが原因でなるんだ」

「……魔力が多いことは、良いことなんじゃないの?」


 不思議そうに問う。


「確かに、多くて越したことはないが、魔力回路の品質が低いと、魔法がうまく使えないんだ。症状が酷いと、魔力操作が出来ず、魔法はおろか魔道具さえ使えなくなる。要するに魔力が使えないってことだ」

「え!? でもなんで、そうなるの?」

「魔力回路ってのは、魔力を体中に循環させてるって話はしただろ?」


 エリナがコクリと頷く。


「だけど、多すぎると魔力が魔力回路を通ることが出来なくなる。……例えば、直径一ミリ以下のストローで、湖の水を吸い上げることはできると思うか?」

「できない……ううん、出来なくはないけど、言葉に出来ないくらい大変だと思う。……あ、そうか! 魔力回路の品質が低いと、魔力の通り道も小さくなるってことだね!」


 肯定するように魔王が頷いた。


「その通りだ。本来、魔力と魔力回路は同時に成長するものだから、どちらかの均衡が大幅に崩れると、大きな障害が生まれるんだ。……それにこの体質は魔力切れにならなくても、魔力切れと同じ状態に陥ることがある。わかりやすいので言えば、その状態だと普通の人間と同じで魔法が使えないとかな。その経験はマスターもあるんじゃないか?」

「うん、あるよ。あれって魔力が切れてたわけじゃないんだ」


 驚愕の事実を知り、驚きを隠せないでいる。

 お構いなしに魔王が話を続ける。


「あれは、魔力回路が魔力を汲み上げた時に、魔力的疲労が蓄積して現れる症状だ。さっきのストローの例を思い浮かべれば、想像できるだろ?」


 コクコクと頷く。


「そして魔力的疲労が長時間続くと人間は死ぬ」

「え!?」

「簡単な話さ。魔力的疲労は、身体的疲労と違って、心臓と脳に甚大な負荷をかけるからだ。これは体の自然治癒の対象外になる。つまり、魔力を消費しないと回復しないんだ。普通は魔力回復と同時に回復するが、一部の条件が揃うと、回復が間に合わなくなる」

「じゃあ、私の体質だと、その可能性が高いってこと?」

「まあ、そうなるな。とは言っても、常時疲労を蓄積するわけじゃない。普通の人よりは条件が整い易いだけで、日常生活で死ぬことはない。魔法の修業をしてても大丈夫だ」


 その言葉に胸をなでおろす。

 そして補足するように魔王が話す。


「ちなみにこの体質に対にものとして過剰回路体質ってのがある。この体質は、回路の質が良すぎて魔力を必要以上に使う体質だな。まあ、こっちは魔力操作を覚えて、無意識にそれが出来るようにすれば解決するが、魔力体質の方は、回路を育てないといけないから、常に魔力的疲労を感じるまで魔力を使う必要がある。そこまでやらなくても直せなくは無いが、時間がかかるからおすすめはしないな。それに回路が成長すれば使用可能魔力量も増えるし、ついでに保有魔力も増えるから一石二鳥だ。まあ、増える量は回路が魔力量に追いつくまでは、微々たる量しか増えないがそれでもモチベは上がるだろ?」

「つまり、やることはいつもと変わらないってことだね!!」


 嬉しそうに笑う。

 その言葉に魔王が強く頷く。

 エリナは自信満々に「よーし、気合を入れ直すぞ~!」と言いながらモチベーションを高めていた。


「話が変わるけど、俺的には何故マスターが魔法を使えてるのか興味がある」

「どういうこと?」

「普通は魔力と回路の品質のバランスが七対三を超えると魔力がほとんど使えなくなる。まあ、魔道具を動かすくらいはできるけどな。だけど、マスターは九対一なんだ。ここまで来ると魔力そのものが使えなくなる。使えるようにするには、かなり特殊な道具が必要になるレベルだぞ」

「そんなに私って酷かったの!?」


 それを聞き、かなり驚いている様子だ。

 魔王が「興味がある」と言った意味がわかり、自分がかなり特別な存在であることも同時に自覚する。

 それを知ったからと言って、エリナ自身は『いつも通りでもいいや』と思っていた。


「ちなみに、マスターの総魔力量は第一から五位階魔法程度なら、無尽蔵に打てる量だと言っておく」

「ええ!? 私そんなに魔力持ってたんだ。確かにそれだけの魔力があれば、この体質にもなるよね……」


 とても嬉しそうにしながらも、魔力量が多すぎて魔法が使えず、いつもいじめられていたと考えると、どこか複雑な気持ちになる。

 だが、それと同時に、これを使いこなせるようになろうと新たな目標も見つかったのであった。


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これからもよろしくお願いします。

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