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#1 こんにちは小麦粉です  作者: ユキ雪
1/1

あはっ、人間卒業させられました!

時代は小麦粉と確信しました。

時代は異世界転生と確信しました。

そして導き出した結論がこの作品です。

どうか小麦粉に愛を、そしてできればこの作品にも愛を。

 高校2年生ともなれば、人生の中で様々な体験をしてきているだろう。

 例えば徹夜でゲームをしたり、アニメのイベントのためにお金を貯めそして貢いだりといったような。

 これらはあくまで俺の体験であるが、いろいろな体験をしているというのは誰にでも当てはまるに違いない。

 

 しかし、いくら様々な体験をしているとはいえ今、俺の一人語りを聞いているそこの君! そう君だよ。俺が体験していて君が絶対に体験していないと、自信を持って言えることがある。

 それはいったいどんなことなのか、ここで1つヒントを与える。

 まずはひらがなの五十音表を思い浮かべるんだ。思い浮かべたら「あ」を見つけてくれ。「あ」を見つけることができればあとはもう簡単。そこから左に2つ進んで、1個下がる。これがヒントだ。


 さて、それでは正解の発表といこう。

 俺が体験していて、君が体験していないであろうこと。それは、



 死だ。


 まぁ厳密にいうと、その直前の瞬間を今まさに体験している。もっと厳密にいえば俺が漕いでいる自転車とトラックがぶつかり合う直前。

 驚いたな~、こういうときには周りの様子がスローモーションに見えるっていうけど、まさかクイズを出せる時間まであるとは。加えて、このまま時間が流れていって命落とすな~っていうことを確信しているし、なんなら受け入れてる自分がいる。これまた驚きだよ。


 さてさて、そんなことを考えていたらいよいよクライマックスといったところか。あと少しで被害者俺の事故というか事件というかが発生してしまう。

 ぶつかったら痛いかな~、痛いだろうな~。生まれ変われるかな~、生まれ変われるとしたら何になるのかな~。人間? それとも全く別のーーーー






「あれ? 俺は確かトラックにはねられてそれで」


「命を落としました」


「そうそう、って誰!」


「初めまして。ここは天界。そして私はその住民、そう神です」


「えっ......」


「理解、納得できない気持ち、よく分かります。ですが、ここは一度私の話を聞いていただけませんか?」


「は、はぁ」


「私達神の役割はいろいろありますが、その一つに命を落とした方への転生のご案内、というものがあります。内容は文字通りです。今回はあなた様が転生の案内を受けることとなります。ここまで、理解はできましたか?」


「えぇ、何とか。俺は死んで、あなたは神。今から転生についての説明を受けるってことですね」


「その通りです。それでは早速、説明に移らせていただきます」


 そう言うと目の前で座っている神様は、転生先はこれまで生きていた世界とは別の世界になる、記憶は引き継ぐが身体は赤ちゃんの状態に戻る、言語は異なったものになるが問題なく理解できるようになる、などといったことを説明した。

 正直、理解ができている、何も引っかかるところはないといえば嘘になる。だが、今の状況は紛れもない現実。

 であるならばきっと、覚悟を決めて今のこの現状も神様の説明も、受け入れることが最善でありそれ以外にグッドな選択肢は存在しないだろう。


「わかり、ました。はい、飲み込めました」


「ありがとうございます。このような状況では混乱してしまう方がこれまでにもたくさんいたのですが、これほど短い間で理解してくださるとは。それでは、最後に最も重要なことをお伝えします」


「最も重要なこと?」

 ここまでの説明もだいぶ重要そうだったけど、それよりもさらに大事なことを今から聞かされるのか。

 さっきまではあまりの急展開にふわふわとしていたが、いよいよ緊張してきたな。

 どうしよう。多分だけど今、顔がかなりこわばってるだろうしなんかのども乾いてきた。こんな中で話を振られでもしたら、まず間違いなく会話を成立させられないな。


「異世界に転生する。このことは先ほどまでの説明で十分に伝わっているかと思います。今から説明することは、どのような状態で生まれ変わるかということです。あなた様が転生するにあたって、必ずしも再び人間になるとは限りません。吸血鬼や竜人、はたまた精霊までどのような種族になるかは転生してみて初めて分かることです。しかし、今回は特別に何になるのかをお教えしましょう。まぁ、正直に言ってしまえばこれは私のお願いでもあるのですが」


 お願い? もしかしてこの神様が、俺のためにお偉方に取り計らってくれたとかっていうことか? さっき例として出された種族もかなりロマンがあるし、ドキドキが止まらん。俺はもう何でも受け入れるよ。


「小麦粉になっていただけませんか?」


「断ります!」


「ありがとうございます!」

 いや~、笑顔でする会話は気持ちいいなぁ! あえて一つ問題を挙げるとするならば、


「何だよ、小麦粉て!? さっきまでのロマンを返さんかい! 吸血鬼だのなんだの言っといて、小麦粉て!?」


「ま、まぁいいじゃありませんか。吸血鬼も小麦粉もどちらも、ファサ~となる要素は共通していますし」


「そういう話じゃないわ! 急にどうしたの、なんか昨日悪いものでも食ったのか? だからそんなおかしなことを口走っちゃってるの? それとも何か? この前うっかり小麦粉を異世界に送っちゃったからそのミスを打ち消すために小麦粉になってもらお、とでも考えたのか?」


「すごいじゃないですか!」


「は?」


「まさにそれなんですよ、今回このようなお願いをしている理由は! 実はですね、ついこの間の話なんですがね」


 何故かテンション高く話し始めるこの神。いろいろと言ってはいるが、要はこういうことになる。


 うっかり小麦粉を人に生まれ変わる形で異世界に送っちゃった、テヘ!


「納得できるかい! 何で俺が、お前の意味わからんミスで小麦粉にならなくちゃいけないんだよ。とりあえず、今からその話を近くにいるであろう他の神達に聞かせてやるわ」

 うん? 動けない。というより一定の範囲から外に出ることができない?


「おい、お前今何してる」


「え~と、その、なんて言いますか、転生させるためには魔法が必要でして、対象者には魔法陣の上にいてもらわなければだめなんですよ。つまりその~、もう既に小麦粉イベントは確定事項になっています......」


「何しちゃってんの!? こういう重要なことは相手との同意があってこそのことものなんだよ。それなのに何、もう俺不可避なの? このまま第二の人生は小麦粉として歩むことになるの」


「だいじょうぶですよ、こっちにも責任はありますから便利仕様も付けときましたし。だからだいじょうぶですよ、多分、きっと」


「そっちにしか責任はないんだよ! ていうか今になって申し訳なさそうな態度取るのが謎すぎるんだが! 悪いと思うなら最初からやるなよ!」


「しょうがないじゃないですか! 私だって時間が進むにつれて、結構申し訳ないことしてるなって思ってきたんですもん!」


「何でお前が今逆ギレすんだよ! こっちが完璧被害者だってのに」


「あ、もうすぐ転生しますよ」


「あぁ、そうですか、じゃないわ! お前あんま申し訳ないとは思ってないだろ」


「思ってますよ! 思ってるからこそ、わざわざあなたのスタート地点は人気のないところに設定したんですよ!」


「それがどうお前の申し訳なさをアピールしているんだよ!」


「だってあなた、人の多いところ苦手なコミュ力残念人間でしょ。そうでもなきゃ、死ぬ直前にかえってあんなにもうるさくはなれませんよ」


「お前聞いてたのかよ、俺の心の中の独り言を!」


「はい。だから人気のないところを設定しておいてあげたんですよ。あ、それではいよいよ出発ですね。お気を付けて~」


「ちょ、嘘だろ。俺は納得しないぞ、これから小麦粉になるなんて!」






 こうして俺は、まばゆい光に包まれながら俺は転生しました。


「あ、これ終わったわ」


 確かにここはあの神が言った通り人気がないよ。

 けどどうやら俺は、あの神の脳内お花畑度を見誤っていたらしいな。



「小麦粉を水中に放り出してんじゃね~よ!」

 

この作品を読んでくれてありがとうございます。

これからも小麦粉を忘れず、小麦粉に期待をしてください。

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