第四十話 『フォーシールの最後 邪悪な力』
「だぁぁぁ、チクチクチクチクいてぇんだよてめぇら!!」
貴明は声を荒げると、空気を一気に吸い込む。
「あれをやる気か!」
卓也は自分に飛んでくる弾丸を剣で払う様に防ぐと貴明の攻撃に巻き込まれないように後ろに下がった、もちろん俺達もだ。そして
「カイゼル・ブレェェェェス!!」
貴明は勢いよく吸い込んだ空気を吐き出した! そして、貴明の吹き出した熱風は俺達の目の前にいた、アサルトライフルを握ったオークやゴブリン、リザードマンなどの複数の亜人種の魔物たちに命中、体を大きく吹き飛ばした!!
「よし、止めだ!!」
「サンダー・ブレェェド」
「ロック・スラッシュ!!」
俺の声に、リサと卓也は頷くと俺達三人は前に出る、そして吹き飛んでいる魔物たち目がけて武器を振るった!
卓也の握る剣からは稲妻が、リサの握る土姫からは土の魔力の斬撃が、そして俺の振るったムラマサからは、五つに輝く斬撃が飛び出し、貴明が吹き飛ばした魔物たちを一斉に切り裂いた!!
「ふぅ……ふぅ……やっとこさ、見えてきたなぁ……」
卓也はそう言いながら剣を地面に突き刺すと、額から流れる汗を腕で拭った。
「ああ、もう化け物みたいな見た目の魔物と戦うのはこりごりや……まぁ今倒したのは比較的まともだが……」
貴明はそう言って、水分補給をするかのように霊薬を口に含んだ。
「ああ、今倒した亜人種共は銃火器持っとっただけやが、その前の奴なんか、リザードマンの腕が木で枝一本一本が刀や、ロケランや、サブマシンガンやらがついた化け物やったからな……」
俺は先ほど戦った相手を思い出しながら苦笑いし、正面を見つめる。いかにも魔王の部屋ですと言わんばかりの見た目をした扉を……。
「魔王の部屋の近くだもの、向こうも無茶苦茶な状態の魔物でも何だろうが導入してくるわよ……さ、皆準備は良い? 行くわよ……」
「いいえ」
リサの言葉に卓也、貴明、そして俺の三人は思わず返事をしてしまう。しまった、ゲームのノリでつい……。
「え? なんか不味い事でもあるの? もしかしてダメージが回復しきっていないとか?」
「あ、いやいやそんなんじゃない、よし行こう!!」
俺は誤魔化すように言うと、扉の方に向かって足を進めた。それにつられるように貴明も俺を追いかけてきた。
「気を付けていくよ、開けた瞬間、フォーシールと魔王との戦闘が始まっているのかもしれないから……」
リサの言葉に俺は頷くと扉を勢いよく両手で押しながら開いた! 光が差し込むと俺達は目を覆う……そして徐々に光が目に慣れてくると、魔王の間の全容が見えてきた。
部屋の中央に置かれた長方形の台座……いや、リングだ、此処で戦うことを想定していたかのようなタイル張りのリングがあり、さらにその周りには火をつけるための物と思われる七つ巨大な燭台があり、六つの炎が消え、一本だけ燃え上っていた。
そして、リングの中央には真っ赤なマントに身を包んだスキンヘッドの男とフォーシールが立っていた。
「妙にボロボロやな……フォーシールの奴、回復してないんか?」
「いえ、私達との戦いの傷が回復しきっていない状態で魔王との戦闘を考えるほど頭は悪くないはずよ……どちらかというと、ここに来る道中の魔物たちにやられた……というのが正しいかもね……」
「道中の魔物? 確かに体力は削られたがそんなに強く無かったやろ?」
「それだけ素の彼は強くないって事よ……それよりも急ぎましょう、さすがに目の前でやられたんじゃいい気はしない……」
リサはそう言い、走り出しリングへと続く一本の橋を渡った、俺達も顔を見合わせるとリサの後を追いかけた。
「! 遅かったみたいだな……この一撃で俺は魔王を倒す、そして次はお前たちの番だ……」
フォーシールは目の前に立つアロタロスと思われる男を睨みながら俺達に向かって言う。すると、奴は右手に巨大な鉄製の棍棒を構えた。
「道中の魔物から分捕ったのか……」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ」
貴明がつぶやいた瞬間、フォーシールは声を荒げ身体に魔力を集めた。だが……。
「だめ、全然魔力が高まっていない……このままだとまずい!」
リサがそう言い、一歩出ようとした瞬間フォーシールはアロタロス目がけて飛びかかった! そして
「俺達をいいように使ってくれたな、アロタロス! 喰らえ、氷結断!!」
フォーシールは冷気のこもった棍棒を真っすぐ、勢いよく振り下ろしアロタロスの体に命中した! だが……その一撃は全く効果が無く、アロタロスは涼しげな顔をしていた。
「バリアを張っていない……単純に、アロタロスの防御力を上回った一撃が撃てなかっただけ……」
「ならば……これでどうだぁぁぁぁ、コキュートス!!」
フォーシールは叫ぶと、ボロボロになった棍棒を投げ捨て、今度は右腕を勢いよくアロタロスに向かって突き出し、殴り掛かった……その時!
「バ、馬鹿な……」
「なん……だと?」
「なんであいつは自分の胸を……」
アロタロスに向かって突き出されたフォーシールの拳は見事、奴の顔面に命中……ということはなく、なぜか、フォーシールの右腕は自身の左胸を貫いた!!
「やっぱり……何か細工をしていたのね……」
リサの言葉に俺達は、アロタロスを睨み付けた。
「体内に俺の欠片がある状態で俺に牙をむいたら自動で、心の臓に埋め込んだ欠片を心の臓ごと引き抜く細工をお前たちにさせてもらっていた……」
アロタロスが言い終わると、フォーシールは自身の腕を引き抜いた、すると奴の手にはドクドクと脈打つ心臓が握られていた……手かこいつ今、俺のって言ったか? それに声が変だった気が……。
「返してもらうぞ、俺の欠片を……」
アロタロスは右腕をフォーシールに向けながら言う、するとフォーシールの心臓が宙に浮き、アロタロスの右腕に収まる、それと同時に禍々しい光を放つ結晶が飛び出した。
「返せ……俺の心臓をぉぉぉぉぉぉ!!」
「ほぅ、心の臓が抜かれてもまだ息があるか……流石はオーガだな……ほら、貴様の心臓だ」
アロタロスは笑みを浮かべながら言うと、フォーシールに向かって右腕を伸ばし、手に握った心臓を見せる様にした。
そして、フォーシールがゆっくりと足を進め、アロタロスの手にある心臓に触れようとした瞬間、奴はフォーシール心臓を握りつぶした!!
血が飛び散り、その鮮血はアロタロスの右腕とフォーシールの白銀の髪をオーガの血液である青に染め上げた、その瞬間、フォーシールは俺達の方を振り向くと苦しそうな、悔しそうな表情を取りながら体勢を崩した。
「どれ、貴様の力で止めを刺してやろう……」
アロタロスは床に膝をつくフォーシールに向かって冷たく言うと、フォーシールの血で染まった右掌を向けた。すると、フォーシールの心臓を抜き取った際に飛び出た結晶が奴の肉体に入り込むと右腕に禍々しい魔力が集まり始めた。
「まずい! 皆、避けて!!」
リサが叫んだ瞬間、アロタロスの右腕に集まった魔力が渦のように一気に放たれ、フォーシールの体に命中すると、肉体を貫通、俺達に向かって迫った!
「この程度の力か……まぁ、元が雑魚にしてはよくやったという所か……」
砂埃の立つ部屋一体からアロタロスの冷たい声が響くと、奴の影が動くのが見えた。どうやら、避けた俺達に気が付いていないようだな……よし!
「カイゼル・ナックル!!」
「サンダー・ブレード!!」
「オロチ縦一閃!!」
「ロック・スラッシュ!!」
俺達は砂埃を隠れ蓑にし、一気にアロタロスに接近、貴明はアロタロスの左方向に飛びかかると燃え上る左腕を突き出し、卓也は右側に飛びかかると稲妻の迸る剣を勢いよく振り下ろした!!
俺とリサは、そのまま接近すると背を向けているアロタロス目がけて俺は刀をリサは土の魔力のこもった土姫を振り下ろした!!
「ぬぅ!」
俺達の放った一撃はアロタロスに命中するも、奴の周囲にバリアが展開、俺達の攻撃は防がれた、だが……。
「なめるなぁぁぁぁ」
「うおぉぉぉぉぉぉ」
貴明と卓也の魔力がより高まると、アロタロスのバリアにヒビが入った! その瞬間アロタロスの体に魔力が灯る。
「やらせるかぁぁぁぁぁ」
「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」
そして俺達もさらに強く魔力を体中に流すと、アロタロスのバリアが一気に砕けた瞬間、一気に爆発、俺達は吹き飛ばされた!
だが、思ったよりダメージは無く、俺達は宙で体勢を整えることができ、上手く着地できた。
「奴以外の羽虫が侵入していたのは気が付いていたが……成程、貴様らだったのか……それでは、あの程度の一撃で倒せるわけはないな……」
アロタロス自身もあの爆発で吹き飛んでいたのか、ゆっくりと立ち上がるとこちらを睨んだ。すると部屋の周囲にあった燈台に灯っていた炎の一つが消えた。
「貴様ら相手なら、こいつの意思を解放しながら、体を馴染ませるのも一興か……どれ、楽しませてみろ!!」
アロタロスは叫びながらマントを大きく広げた! すると、奴の周囲を七つの光が舞うとその光はアロタロスの体内に吸い込まれた! そして奴の肉体が変化、体が途端にデカくなり三メートルとまではいかないが二メートルを優に超える大きさになった。
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