第三十八話 『明かされる黒幕の正体』
俺達は、フォーシールを追いかけ、奴が空けた穴に飛び込んだ……はずだった。
だが、その瞬間。俺達の視界を白いモヤが包んだのだ。
「どこやここ?」
卓也の声が聞こえる。良かった。どうやら、分断はされてないみたいだ……。
「気を付けて、さっきまでいた所は違う、奇妙な感覚がする……」
「いきなり戦闘ちゅーわけか? それも面倒やな……」
卓也よりも近い距離でリサの声がする……。しょーじき、武器のない俺でどこまで戦えるか……。
そう思い、拳を握ると視界が徐々に鮮明なものへとなり、俺たちが今居る空間の全容がわかった。
「道具……屋?」
「確かに。オークエのオーソドックスな道具屋に似とるな……」
リサのつぶやきに貴明が同意の声を出す。
それにつられ、俺は周囲を見渡した。
日本ではあまり見られないタイルに、物がむき出しになって置かれた多くの棚。
そして、視界の先に映るレジスターのない木のカウンター。
「たしかにオークエの世界っぽいな……」
俺が静かに呟いた、その時! 突然、カウンターの奥が光を放つとそこから男が一人現れた。
真っ赤なローブに同じような赤い魔法使いがかぶる様なとんがり帽子を被った男が……あれ? 確かこいつって
「皆構えて! まさかこいつがここで出てくるなんて……」
リサは土姫を構えながら言う、それにつられ、卓也と貴明はもとに戻っていた状態から、デモンとカイゼルの魔力を体に流し戦闘態勢になった。
「初めてあったときから只者じゃないとは思っていたけど、まさか虚無のエネルギーで侵食され始めたこの空間に、あっちの世界の一部を無理やりねじ込むなんて芸当ができるとは思わなかったわ」
リサの言葉に俺たちは息を呑む、しょーじき言ってることはニュアンス程度でしか伝わらんが、ヤバいことだけは分かった。
「一体何者なんや? その言葉から、ヤバさは分かるが……」
剣を構えながら卓也が言う。
「俺達が入手したラビュルスの斧ちゅー、虚無のエネルギーの塊を奪って。それを魔王に渡した全ての元凶や……」
「つまり、アイツラの仲間……なのか?」
「それは知らん、少なくとも俺たちの味方じゃない……ちゅー事や」
「なるほど……つまりは黄色……第三勢力……ってことだな……」
貴明はそう言って拳を強く握りしめた。
「……あれ? おかしいわね……奪われたんじゃなくて、私がしつこく、人に売るなと言ったのにも関わらず、貴方が彼に売ったんじゃなかったかしら? ター君」
「お前が渡したんかい!」
「あいたー!」
リサの言葉が聞こえた瞬間、俺の頭に衝撃が二つ走った。卓也と貴明が某芸人ばりのツッコミを俺の後頭部にしたのだ!
「確かにフライの魔法が込められていたブローチと安くはないお金のお陰でアロタロス戦でター君が助かったり、アロタロスとの戦いのあとの復興に役には立ったけどね! でも、あれがどういうものか分からないほどあなたは弱くはないはずよ?」
リサは、マントの男に言う。だが、彼女の言葉の端々には俺へのトゲがあった……。
「ター君が、お前にそのラビュルスの斧を売って虚無のエネルギーを手に入れたせいで今この状況になったんだとしても、そもそもお前が魔王に渡さなければよかったはず……だからな」
「卓也の言う通りや、リサの忠告を無視したター君がこいつに売ったんとしても、コイツが魔王に渡さなければ良かったんだからな」
ぐっ、卓也と貴明はあえて俺を見ながら言葉を放つ。わざとにター君を強調して。いつもならター君言うなとキレるところだが。今回は事情が事情だ……我慢しておいてやる……。
「どうしたの? かかってこないの? それとも、ここでは一時的とは言え向こうの世界と繋がっているお陰で、全力で戦える私に怖気づいたのかしら?」
リサはそう言い土姫の刃先を向ける。煽っている……だが、全力で戦えるという彼女の言葉が真実であれば、相手を誘うには絶好の機会だ……さぁどうする?
そう思い俺はマントの男を見た、するとやつは。両手を挙げようとしているのか肩が動いていた……くるっ!そう思ったのは俺だけではなく、卓也と貴明も構えた、その時!
「すまなかった!」
なんと、マントの男はカウンターを飛び越えると、そのままの勢いで土下座をしてきた! ジャンピング土下座、そう呼ぶにふさわしいきれいな土下座でこいつは俺たちに謝ってきたのだ。
「謝られても困るんだけどな。もしかして、こんなことになるとは思ってなくて、あいつに売ったとか? だとしたら、思慮が足りないんじゃなか? あいつがどんなことに使うか分からなかったわけじゃないだろ?」
「ター君の言う通りやけどな一言良い?」
「多分俺と同じこと思ってるも思うけど、エエで卓也。言うてやれ」
「ター君、お前が言うな」
卓也の言葉を聞いた瞬間。冷ややかな視線が俺を襲う、リサ、貴明の二人が、俺を見ていた。表情は口にはしないが、お前が言うなと言いたげな瞳で……。
「まぁ、ただ。ター君の言う通りではあるよ? 何故渡したの? さっきも言ったけど。貴方の実力であれがどういうものかわからないわけじゃないでしょ?」
リサはマントの男に近寄ると、屈みながら男に向かって言った。すると、男はゆっくりと顔を上げた。
「あれを渡したのは俺じゃない……俺はあの斧を封印しようとしていたんだ……ところがその途中で。謎の男女に襲われてな……気がついたら。斧は無くなっていたんだ……」
「……嘘……か、真か……どっちや」
「この状況で嘘を付くとは考えにくい……が、リサと武久はどう思う?」
「俺は嘘に賭けるぞ! この状況で嘘を付くとは大したやつだ! 腹を切れ!」
俺はそう言い、男を指さした!
「うん、色々今のお前には言いたいことはあるがとりあえずひとことにまとめるね」
「やかましいわ!」
「い、いや、場を和ませようと……」
「和むか!」
そう言って、卓也と貴明は再び俺の頭を叩いた!
「いったいな……リサはどう判断する? 俺のは冗談として」
俺は、後頭部をさすりながらリサに尋ねた。
「私は……彼の発言を信じるわ……」
リサはそう言うと、立ち上がり右手に握っていた土姫を収めた。
「まず彼からは邪さが感じられないという事、そして、ター君と別れてから調査して分かった事なんだけどね、アロタロスは単体で虚無のエネルギーの欠片を集めていたのではない……ってことが濃厚になったのよ」
「それだけでこいつの事を信用できるのか?」
卓也はそう言ってリサの方を向く、だが、俺と貴明はリサの言葉を強く信頼した。
「分かった、リサがそう思うならそうなんだろうな。俺も信用するよ」
俺の言葉に貴明もうなずいた、すると卓也がこちらを振り返った。
「なぜだ?」
「リサは物の善悪を知れる目を持っているんだ。そのものがどんなに隠そうがその目からは逃れられない、それが、土の賢者になるための条件なんだ」
「なるほど……貴明も同じ意見……だよな……分かった……」
卓也はそう言って、魔力を解除し、元の卓也に戻った。
「でも教えてくれる? まさかそんな事を言うためにここにわざわざ、こんな無茶をしてきたわけじゃないわよね?」
リサの言葉に、マントの男は頷くとゆっくりと頭を上げ、立ち上がった。
「ああ、君の仲間の騎士団や六賢者の一人から教えてもらった情報をつたえる……」
「! 六賢者!?いったい誰から?」
マントの男の言葉にリサは目を見開き、一歩前に出てマントの男の目の前に立った、その時! 部屋が突然揺れ始めた!
「くそ、此処までが限界のようだな……時間がないから要点をまとめて伝える。まずは一つ!」
マントの男は人差し指だけを突き出した状態で叫ぶ。
「騎士団の仲間からの情報だ! アロタロスに虚無のエネルギーの欠片を集めさせていた女の正体が分かった、名前はファ・ラミーユ。現在は消息不明だが、君たちがアロタロスを倒す三日前までは、リンクスの北の町で遊女をしていたのは確認できた!」
マントの男は言い終わると、次は二本の指を立てさけんだ。
「二つ目はこれは闇の賢者からの情報だ、今相手にしているのは先ほど伝えたファ・ラミーユでも、アロタロスでも七つの大罪でもない全く別の存在が後ろにいる。絶対に油断せずに気を付けろとのことだ!!」
マントの男が精いっぱいの声を出し叫ぶと、部屋が光り出し始めた。この感じなんかヤバいぞ……。
「ちぃ、もう限界か……最後だ! 今から君たちをとある場所に転移させる。そこに行けば、この地に眠る英霊が、力を貸してくれるはずだ! 後は任せたぞ!!」
マントの男が叫ぶと、部屋が光を放ちながら崩壊しはじめる、すると、マントの男が何かをしたのか、俺達は光に包まれた瞬間、目の前が白くなった!
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