第三十七話 『アロタロスの首は俺が貰う!?フォーシールの覚悟』
「そう……か、負けたのか……俺は……ぐふっ!」
フォーシールはそう言うと口から黒い血のような物を吐き地面に膝をついた。
「どうやら……無理をした歪が来たようだな……」
フォーシールは口元から流れる血を拳で拭うと立ち上がった。すると、奴の体がブレ始め、なんと、粒子のような物が飛びその場に一人の男性が倒れた!
「! あれがあいつと同調していた人か⁉」
「あいつの意思で切り取ったのか?」
「まずいわね……切り取っても肉体が維持できているということは、それだけ元の世界との境目が無くなりつつある……って事よ……」
「つまりそれは、同調者がいなくても俺達と戦えるという事……だよな?」
卓也の言葉に俺達は警戒し、構えた。するとフォーシールは同調者の襟をつかむとなんとこちらに向かって放り投げてきた!
「うおっと!」
それを卓也と貴明の二人が抱えると、二人はその場にその男性を下ろした。
「その男を介抱してやれ。俺にはもう必要ない……」
「同調者無しでも俺達と戦えるって事か? 舐められたもんだぜ……」
俺は同調者を介抱するリサを見ながら吐き捨てる様に言った。
「武器のない貴様と、同調者のいない俺……いい勝負になりそうだな」
「あら? 威勢のいい事言っているけど武器が無くなってもター君は今のあなたよりは強いと思うわよ?」
リサはそう言って、同調していた男にリターンの魔法をかけるとゆっくりと立ち上がった。
「同調者を切り離して、肉体を維持できているのは正直驚きよ? でもあなた力が大きく下がっているわよね? 今のあなたなら、今の私でも多分倒せるわ? そうまでしてアロタロスのために命を散らすの? 奴はそこまでの男じゃないはずよ?」
リサはフォーシールを睨むと、奴の目を真っすぐ見ながらゆっくりと足を進める。
「おい、リサ危ない……」
「まて、なんか変だぞ?」
「ああ、もうちょい様子を見ても良いかもしれん……」
俺はリサに声を掛けようとするが卓也と貴明がそれを止める、そして貴明の言葉の通り俺達は、リサたちの様子を見た。
すると二人が言う様に様子がおかしかった。リサが近寄っているというのに、フォーシールから一切、戦おうとする気配が感じられなかったからだ。
「何を勘違いしているか知らんが、俺はアロタロスに忠誠を誓ってはいないし、貴様らとも戦う気はない……俺の目標はアロタロスの首だ……」
「は? なんだって?」
思わず俺は、声を出す。こいつは今なんと言った? アロタロスの首? 部下じゃなかったのか?
「お前達は、アロタロスの部下じゃなかったのか? 一体どういうことだ?」
俺の持っていることを卓也が素直に、聴いてくれた。するとフォーシールの表情が険しくなる。
「俺達があいつの部下だと? 笑わせるな! 奴はな虚無のエネルギーとか言うのを使って俺達の自我を奪ったんだ……」
フォーシールは卓也の問いに俺達を睨みながら叫んだ、尋常じゃない怒りを感じる叫びだ……証拠に奴の握った拳からは出血していた。
「操られたのは俺達の落ち度だ、だが、俺達を操り、好き勝手してくれた落とし前はしっかりと付けてもらう……」
フォーシールはそう言って俺たちに背を向けると歩き出した。
「まって! 今のその体でアイツと戦えるの? 目的が同じなら一時的に協力しない?」
リサの叫び声に、歩きだしていたフォーシールは足を止めると、ものすごい怒りのこもった目でこちらを振り返った。
「……確かに、俺たちは操られていたとは言え、この世界の人間に牙を剥いた……貴様らが迎え撃つのは当然の権利だ……だがな……お前達が俺の仲間を殺したというのも事実……俺はそう言うのを割り切れるほど大人じゃないんでな……アロタロスの次はお前達に仇討ちをする……覚えておけ!」
フォーシールはドスの利いた低い声で言うと、右手に魔力を集める。そして勢いよく地面を殴りつけ穴をあけると、その中に飛び込んだ!?
「聞く耳持たず……ってわけか……」
「……アロタロスと元々敵同士だった彼ら七つの大罪がなぜ協力しているのか分からなかったけど、そうか、操られていたのね……だから、悔しいんだと思う……」
「七つの大罪って……ずいぶんとデカい肩書きだな……」
「フォーシールに、ヴィケーノに。ごるでぃなに、アリグムに……あり? リサ、人数が足りんぞ?」
人数を数えながら俺はリサに尋ねる、イヤ。確かこっちに来た時に一人倒したとかなんとか言ってたな……。
「こっちに来る前に一人と転移してから一人を倒してるわ……っと、無駄話している暇はない。フォーシールを追いかけないと、彼じゃアロタロスになんか絶対に勝てない!」
「アロタロスに勝てないっていうのは言いすぎちゃうか? あの強さが出せるなら、ワンチャンありえるで」
フォーシールが開けた穴を覗き込むようにしてみる、リサに卓也は言った。
「……そう。ね……それはフォーシールがさっきまでと同じ力で戦えていたら……の話よ……」
「どういうことや?」
「彼たち七つの大罪は、虚無のエネルギーを取り込んだ事による力の大幅な底上げと魂の同調が上手くいったおかげで向こうにいた頃よりも百倍の力を手に入れたの」
「百倍!?」
リサの言葉に俺達は同時に。声を上げ驚く……ん、だが待てよ、あの強さで百倍か……じゃあもしかしてアイツラってもともと……。
「もしかして、そこまで強くない?」
あぁ、俺が言おうとしたセリフを貴明に取られてしまった……。
「こっちに来たせいで弱体化食らってるリサや俺達が食らいつきながらでも倒せるレベルで百倍ってことだからな……その可能性はありえる」
「そう、ター君と貴明さんの言う通りよ、ター君にしか分からないたとえで言って申し訳ないけど分かりやすく言うなら。相性次第でマーシャと互角。ルキウスなら無条件で互角、シオンなら圧勝レベルの強さよ……」
「もとがそれであそこまで強くなるってことは彼奴等が虚無のエネルギーってかなりヤバイ物ちゅーことか……」
「かなり……ヤバいわよ……」
「二人で盛り上がっているところ悪いが、さっぱり分からん、リサたち六賢者の強さは分かるけどな」
「いや、すまん。オークエしてない俺にもわかる様に……ガ〇ダムとかドラ〇ン〇―ルとかで例えてくれるか?」
「ほ~、ほしたらまずリサの基準から……リサたち六賢者は例えたら……スーパーサイ……」
「変なもんで例えようとするなぁッ!!伏字だらけでこの小説がバンされたらどないするねん!?」
俺が説明しようとした瞬間、貴明が声を荒げ、俺の言葉を遮った。
「メタいねん……」
その言葉を聞いた卓也は眉間にしわを寄せながらつぶやくように貴明にツッコミを入れた。
まぁただ二人、特にオークエをしてない卓也に分かりやすい説明しないといかんからな……俺は軽く息を吐くと二人に分かりやすくたとえ話をした。
「それは……マジなのか?」
「だとしたら恐ろしいのは、虚無のエネルギーそのものだよな……あれだけ強くなるなんて……」
「そうね、多分だけど以前の戦いで四天王……デモンやカイゼルが埋め込まれた時よりも強力なものが使われているはず……そうじゃないとあれだけの強さはあり得ないわよ……」
「その代わりに自我を失わせた。あるいは自我を奪いたかったからこそ廃人にならない程度に強力な力を注いだ……ちゅーことか……相変わらず意地汚い奴やな……」
「意地汚すぎるやろ……だが、此処で無駄話しているのはよくないんじゃないか? フォーシールが分離しても実態を保てていたということは、世界観の境目が無くなりつつあるって事だろ?」
「それだけじゃない、明らかにあいつは弱体化していたアロタロスがどの程度の強さなのかはさっぱり分からんが、復讐をしようとしてやられるパターンならまだいいが、やられずにさらに強化された上で操られて、戦闘する羽目になった時、ラスボス戦を控えている状況なのにかなりきついぞ?」
「!?そうね、急ぎましょう……」
卓也と貴明の言葉を受けたリサは目を見開くと、後ろを見ながら俺達に向かって強く言う。俺達はその言葉に頷き返事をした。
そして、俺達はそのまま真っすぐ、フォーシールが自分でこじ開けた穴に飛び込んだ、いや、飛び降りた! さぁて、鬼が出るか蛇が出るか……
第三十七話 『アロタロスの首は俺が貰う!?フォーシールの覚悟』を読んでくださりありがとうございます。
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