第三十三話 『ウォーシールの元へ、追いかけろ虚無のエネルギーを』
「じゃあ、ウォーシールがいる所は……」
リサはそう言って額に人差し指を押し当てる、魔力を探しているのか。それを見ながら俺と卓也は、リサから受け取った霊薬を取り出すと、一口にもならない程度の量を含み回復した。
貴明ほどではないが、俺達も体力を消耗しているからな、一応回復しないと……。
「よし、分かった。反応があった、此処より下だ……」
リサはそう言い、足元を見る。また下に行くのか……。
「よし、じゃあ行くか……階段探すのなんか面倒やからな……とりあえずはここをぶっ壊す!」
貴明はそう言って笑うと、左手に魔力を込め、炎を灯した。どうやら、自爆技のダメージは完全に回復できたみたいやな……。
俺と卓也は霊薬を収納しながら貴明から距離を置く、もちろんリサもだ。理由は、貴明の一撃に巻き込まれないようにするためだ。
「行くぞ……カイゼル・パァァァンチィツ!!」
そして貴明が炎のこもった左腕を振り下ろし、その拳が床に接触しそうになったその時! ヴィケーノの残骸から緑色に光り輝く球体が飛び出した!
「っ! 貴明さんストップ!!」
「分かっている!」
リサの言葉に貴明は頷くと、拳を止め、腕を引く。すると、何処からともなく大中の大きさの違いはあるが、ヴィケーノの残骸から飛び出したのと同じ光が現れた。
「虚無のエネルギー!?」
リサの言葉に俺達は目を見開き、宙に浮く四つの光を睨む。するとそれらは、どこかへと飛んで行った。
「まずい、あれを追うよ! 一つ一つは弱いけどあれが集まったら大ごとになる!!」
リサはそう言って、飛び去った虚無のエネルギーを追いかける。俺達もうなずくとリサの後を追った。
その球体は、ヴィケーノがいた工場の狭い通路を飛んでいく、すると階段のような物が見えた、登りではなく下りの階段が……。
「下に通じている……と、言うことはこれを追って行けば……」
「ええ、ター君の言う通り、この先にはウォーシールがいるわ……ただ、あの虚無のエネルギーがおとなしく私達を案内してくれるかは分からないけどね」
リサはそう言い顎でしゃくる様にして目の前を浮遊しながら下る、虚無のエネルギーたちを見た。
「罠だったらそれでいい、だがどのみち下に降りないといけないんだ、だったらそんな事を気にしている時間はない」
「せやな、貴明の言う通りやな、罠であろうが何だろうがとりあえず進むしかないな!!」
卓也の言葉に俺達は頷くと一切足を止めず、そのまま階段を下った。
「どうやら素直に道案内してくれているみたいね、みんな感じる? 微かにだけど、寒くなったことに……」
階段を下りながら、話すリサに俺達は力強く頷く、彼女の言う通り、肌に冷気が当たるのを感じた。
ウォーシールは冷気を操っていた、つまり、奴が支配するエリアに近づきつつあると言う事だ……。
そう思った俺達は、互いに合図を送る事なく、そのまま一気に階段を二段飛ばし、三段飛ばしで、いや、ほぼ飛び降りるに近いくらいの勢いで階段を下った!!
一気に階段を下りたことで、階段は終わり今度は一本の廊下に差し掛かった。
「この先に俺はいる。待っているぞ、と言わんばかりの廊下だな……」
貴明は足を止めると静かに呟く、そう、貴明の言う通り階段を下りた瞬間から、急激に部屋の温度が下がり、白い空気が流れ、天井からは氷柱が伸びていた。
「そうね……でも、ただでは通させてくれないみたいよ……」
リサはそう言うと土姫を引き抜き、正面を見る、すると何か巨大なものがこちらに向かってきているのであろう、地響きが聞こえ、魔物が現れた。
「フリージング・ボアン……ああ、そうか、フォーシールはオーガの一種族だったな?」
貴明は目の前に現れた、白い羽毛を持った熊とトカゲを足したような魔物を見ながらつぶやくように言う、するとリサはゆっくりと頷いた。
「フリージング・ボアン? これもオークエのモンスターか? なんかトカゲと白熊みたいな魔物やな」
「オーガはゴブリンライダーやドラゴンライダーみたいに、特定のモンスターに騎乗することがあるんや、オーガは基本的に馬型の魔物に騎乗することが多いんだが、稀にドラゴンよりは小さいトカゲみたいなモンスターに乗ることがあるんよ。んで、目の前にいるのが寒冷地でもいきれるように進化した、トカゲ型のモンスターや」
俺は卓也に向かって説明すると刀を引き抜き、魔力を込める……そして……
「ロック・スラッシュ!」
「地昇斬!!」
「サンダー・ブレェェド!!」
「カイゼル・チョップ!!」
目の前の、フリージング・ボアンが大口を開け叫んだ瞬間、俺達は一気に飛び出し、互いの武器を振るった!!
リサは土姫を真上から振り下ろし、俺は刀を真下から振り上げ、卓也は稲妻の迸る剣を振り下ろし、貴明は炎の迸る左手で手刀を放った!!
俺達の繰り出した斬撃はフリージング・ボアンに命中! 奴の体をバラバラに切り裂いた!!
「ま、ザっとこんなもんか……よし行くぞ……」
俺の言葉に三人は頷くと、再び走り出した。一本道の廊下を進むたびに部屋の温度が下がるのが分かる……。
そしてそれと同時に廊下の外装も、まるで、ゲームの氷の城のようになっていった。壁や床は氷、光を放つ物へと……。
「! 気を付けて、魔物がまだいるよ!!」
リサが叫ぶと、床から伸びた氷柱の影や、正面から魔物が一気に現れた!
先ほど倒したフリージング・ボアンや、体全身から氷柱を生やしたネズミ、真っ白な体毛を羽織ったゴブリン、真っ白の肌に着物を着た黒髪の女性が、どれも寒冷地に生息する魔物が一気に押し寄せてきた!?
「ちぃ、面倒な!! ター君! 風を頼む!!」
「ター君言うな!!」
貴明は叫ぶと拳に炎を纏わせる、俺も貴明に向かって叫びながら刀に風を纏わせた。
「喰らえ、カイゼル・パンチ!」
「風迅斬!!」
そして、貴明は燃え上る左腕を突き出し、拳状の炎を繰り出し、俺は刀を真上から勢いよく振り下ろし、疾風を放った!!
貴明の繰り出した炎の拳が先頭にいた、ゴブリンとネズミに命中した瞬間、俺の疾風が貴明の炎を押し出し、一気に燃え広がった!!
「よし、このまま突き進みましょう」
リサの言葉に俺達は頷くと一気に走り出す、そして迫りくる魔物を切り倒しながら、どんどん廊下を進んでいった……。
「ここね……」
そして、ひらけた場所に出てくると、足を止めた。俺達の目の前にある巨大な、身長を優に超える優雅な氷の装飾が施された扉の前で。
「俺が開ける。何かあってもいいようにお前らフォローしてくれよ……」
貴明はそう言うと両手に炎を纏わせると両手をついた。すると、全身が氷でできている扉から蒸気が発生した。
そして、貴明は勢いよく両腕を前方に伸ばしてドアをゆっくりと開ける、足元からは冷気がゆっくりとはい出ていた……そして貴明が完全にドアを開いた!!
「じゃあ、早速、鬼退治としゃれこみますか……」
「おう」
「ええ」
貴明の言葉に俺達は頷くとそのまま一気に走り、扉をくぐった!
「来たか……」
扉をくぐった先の部屋の中央にはすでにフォーシールがおり、俺達を完全に待ち構えている様子で立っていた。
「さっそく始めようか……俺にもやることがあるのでな……」
フォーシールはそう言い、懐から一枚のスクロールを取り出すとそれを放り投げた。さっそく本気という訳か……。
「来るよ、構えて!!」
リサの言葉に俺達は頷き、互いの構えをとる。そしてフォーシールがスクロールから召喚した大剣を握った瞬間、誰よりも素早く貴明と卓也が動き出した!!
「カイゼル・ナックル!!」
「ダブルサンダー・ブレード!!」
貴明は燃え上る左腕を突き出し、卓也は両手に握った稲妻の迸る剣を真っすぐ振り下ろした!!
「ぬぅ!!」
それを見たフォーシールは二人の一撃を、大剣の腹で受け止めた! だが、勢いは防げずに奴の体が後ろに下がった。
「ター君!」
「分かっている!!」
リサの言葉に俺達は二人に遅れる形でフォーシール目がけて走り出した!
「新しい力を得たのか……コントロールできるようになったのかは分からんが、すさまじい成長だな……だが舐めるな!!」
「うお!」
「ぐ!」
フォーシールが叫ぶと大剣を大きく前方に突き出すように振り二人を弾き飛ばした! そこがスキだ!!
「ロック・スラッシュ!!」
「オロチ!!」
俺達は正面から勢いよく体を弾かれ飛んでくる貴明と卓也を屈んで躱すと、二人の影により死角になっていたフォーシールに接近すると、互いの武器に魔力を流した!
そして、俺もリサも屈んだ姿勢のまま飛び上がりながら俺は刀をリサは土の魔力を纏った土姫を振り上げた!!
「ちぃ!」
しかし、反射神経が良いのかフォーシールは体を後ろに反らすことで俺達の一撃を防ぐが、真下から放たれた俺の追加斬撃は奴の左胸をかすめ、リサの斬撃は奴の大剣の刃になっている棘の一部を砕いた!!
フォーシールの舌打ちの音が聞こえると奴は空気を吸い込み始めた! この感じ……貴明のあれの氷版か⁉
「ター君!」
「分かっている!?」
魔導書を開くリサに俺は強く頷くと、臆せずそのままフォーシールに突っ込んだ。そして
「カハァァァァァッ!」
「魔炎!」
「斬!!」
俺の予想通りフォーシールはため込んだ空気を吐き出すように口から冷気の塊を吐き出す、対する俺とリサは武器に炎を纏わせると振り上げた!!
俺達の放つ炎はフォーシールの放つ冷気を防ぐと同時に奴の体を傷つけた!!
第三十三話 『ウォーシールの元へ、追いかけろ虚無のエネルギーを』を読んでくださりありがとうございます。
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