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第九話 『金牛洞窟へ到着 いざ中へ!』

 洞窟の入り口は狭くマーシャは先頭に私、ルキウスの順番で入ることにした。洞窟の中はライトを使う必要もなく明るかった、それもそうか、此処で鉱石採掘をしているんだもの、明かりは完璧だった。


「さて、ここからどうするの?」


 マーシャは足を止めルキウスに尋ねた。


「さて、どうしたものか……まずはミノタウロスのいる場所を探さなければならないがどこにいるかもわからんからな……」


「ルキウス、鉱石採掘をしているなら見取り図とかないの?」


 私はルキウスに尋ねる、見取り図を確認して怪しいところがないか探せばいい。


「ああ、待っていろ、これが見取り図だ。現在地はここだな」


 ルキウスはそう言って一枚の紙を取り出してそれを開く、洞窟内部の情報がしっかりと書かれていた、そしてルキウスは現在地を指してくれた。


 私はそれを万遍なく見る、見取り図には今いる階層の情報しか書かれていなかった、


「ねぇ、これだけ? 他の階層の情報はないの?」


「ああ、この階層しか見取り図はない、此処だけでもかなりの鉱石が取れるからな」


 嘘でしょ? この洞窟は鉱石を採取しているにしてはかなり小規模だ、この階層だけであの町が潤うほどの鉱石が取れるとは思えないけど。


 私はそう思い近くにあった石を拾う……石……じゃない! これも鉱石だ。私は見取り図をルキウスに渡すとツチヒメを引き抜き、床を削りその破片を握ると、次は壁に近寄り、壁を削り、手に取った。


「リサ? なにしているの?」


 私はツチヒメを納刀し削った破片を両手で一つずつ持つ、そして上にかざした。

「どうした? 気になったことでもあったのか?」


 ルキウスの質問に私は頷く。


「この洞窟、全てが鉱石なの……ね。不思議……でもどこか不気味……」


「不気味? 洞窟から鉱石が取れるのが不思議なこと?」


 マーシャは私に尋ねる。


「リサの説明だとこの洞窟すべてが鉱石だ。この洞窟全てが資源になるなら、この辺りは資源の塊になる。このことが分かった日にはこのアースガイア中から採掘者が来るぞ」


「それだけじゃない、これ極微量ながら魔力がある。もしかして、ミノタウロスが居座っているのもそのためなんじゃない?」


 私はマーシャに渡した鉱石を受け取ると、人差し指と親指でつかみ少しだけ魔力を流した。すると、鉱石がほんのり輝いた。


「これは!?」


 ルキウスは目を見開く、魔力を宿した石は魔力を流すと石自体に宿っている魔力の色を放つのだ。


 それを魔力反応という。この鉱石は宿す魔力が微量なので薄っすらと光る程度だが、もう少し強く輝くものを魔石と言う。


「じ、じゃあ、この洞窟すべてが魔石なの!?」


 マーシャは声を荒らげて私に詰め寄る。


「いえ、ここの鉱石は魔力の蓄積が足りないから魔石の欠片の欠片の欠片くらいかな? でも、もしかしたら、もしかしたらよ? 魔石以上の何かになるかもしれないわ」


 私の答えにマーシャとルキウスは唖然とした表情をした。


「ごめんね! 変に足止めしちゃって! さ、ミノタウロスを探しに行きましょ?」


 私は二人に笑いかけた。


「あ、ああ。そうだな、と言っても、どこに行く?」


「まずはこの辺に行ってみない?」


 ルキウスはこの洞窟の見取り図を開き、思案顔をするも、すぐさまマーシャが見取り図のとある部分を指して言った。


 そこは、現在地から西に進んだ地点で、見取り図を見る限りだと一本道、入り口と同じくらいかそれよりも狭い道だった。


「なぜここにする? もしも、見取り図通りだとただの行き止まりだ。時間をただ無駄にするだけじゃないのか?」


 ルキウスは少し強い口調でマーシャに言う。マーシャは戸惑い始めた。彼女は頭が悪い子ではない、おそらく理由があるはずだ。


 でも、ルキウスを納得させられるだけの理由がないのだろう。あったら彼女はハッキリと説明している。


「ここ……うん。ここにしましょう」


 助け船を出すように、私はルキウスに言う。


「ほう、リサもか、理由は?」


「微かに、この狭い通路のある西側から力を感じるからよ」


 私は右側を指した。


「なるほど、それは間違いないな?」


「間違いないと断言はできないわ。でも、調べておいて損はないと思うわよ? だって、一番怪しいのがここだもの」


 西の方角からわずかに感じる力。魔力のようなでも違う、不思議な感覚。例え、空振りだったとしてもこの力の正体を知る必要はある。今後のためにね。


「なるほど、分かった。ではこの地点に向かおうか。今度は俺が戦闘、マーシャとリサは目的の通路が来るまで横に並んであるけ。俺を頂点に三角形を描くイメージだ」


 ルキウスは私達に陣形の指示を出すと、一人歩き出した。私とマーシャはうなずいてルキウスの後を横並びで歩いた。


「ありがとう、ルキウスを説得できる言葉が思いつかなくて……」


 マーシャは小声で私に話しかけてきた、やっぱり。


「大丈夫よ、でもマーシャはどうして、あの地点が怪しいと思ったの?」


 私は優しくマーシャに尋ねた。


「えっと、一本道で行き止まりの所はなにかあるって冒険者たちから聞いたから……」


 マーシャはさっきよりも小声で答える。なるほど、たしかにこれはルキウスには説明しにくいわね。まぁ、マーシャの意見も分かるような気はする。


 あくまでも私の経験談だけど、たしかに彼女の言う通り、一本道が続き行き止まりの地点は次の階層に行くなにかがあったり、なにかのアイテムが落ちていることもある。


 そういうことを何度も目撃している。でも、やはり行き止まりやトラップだったこともあるから、完全にそうとは言い切れないけどね。


 私たちは今の陣形を崩さないように、他に怪しいところがないか、魔物の気配はないか。と警戒しながら歩いていく。


 その時だ、ルキウスの頭上、薄暗くて見えないが赤く何かが輝いた。


「ルキウス! 上!!」


 あれは魔物だ! 私は叫ぶ、それを聞いた彼は、私のほうを見ることなく、弓を構えた。

 そして、ルキウスの頭上に潜んでいた魔物が、コウモリの姿をした魔物が、ルキウスめがけて襲いかかった! 


 ルキウスはそのまま、矢を放つ! 放った矢は、コウモリの魔物の頭に見事命中! 甲高い声を上げながらその場に倒れた。


「すまん、助かった」


 ルキウスは振り返って私に言う。


「そのためのこの陣形でしょ?誰かが誰かの死角を見れるものね、さ、警戒を怠らず進みましょう」


 私の言葉に二人は頷くとそのまま歩き出した。怪しいポイントに洞窟の西側に近づくたびに明かりが少なくなる、私はライトの魔法を使い周囲を照らしながら進んだ。


 その先々でスライム。洞窟のような暗所を好む大ネズミ。岩石を好んで食べ背中も岩石になっているカメのようなモンスター。


 そして、この洞窟にのみ生息している牛のような二本角をもち、四足歩行で毛皮に覆われた新調してもらった私のムチの素材にも使われているコーカサスバイソンに遭遇したが撃退していった。


「ここからは一本道。さっきの牛みたいなのが出てこないことを祈るけど……」


 私はこれから進む道を指しながら呟く。さっきの牛みたいな魔物。強さは大したことないけど、ぴょんぴょん飛び回るのが非常に鬱陶しくて面倒だ。


 その証拠に先程まで戦闘していたところは、所々に穴が空いていたり、少しだけ崩れたりしている。あの魔物がめちゃくちゃに動き回った後だ、狭い通路でこれだけ動かれると戦うことができない。


 最悪、瓦礫が崩れて埋もれる可能性だってある。


「あまり体力を消耗したくはない……だが、背に腹は代えられないからな、でたら強烈な一撃を叩き込むしかないだろう」


 ルキウスは静かに言う。


「確かに、ルキウスの言うとおりね、まぁいざとなったら私の魔法で倒すわよ。さ、行きましょ?」


 私は笑いながら、ムチを左腰に引っ掛けると、ツチヒメを抜いた。


「さ。準備はいいな、早速進むぞ?」


 私とマーシャはルキウスの方を見ると深く頷き、足を進める。陣形はライトが使える、私、ルキウス。マーシャの順だ。


 先程までとは違い、ライトなしには歩けないほど真っ暗な道を私達は進む。後ろから魔物が来られたら厄介ね……。


 私達は、武器をしっかり握りいつでも戦闘の体制が取れるよう構えている……しかし、魔物の気配は全くしない。


 目的の一本道に入って、そこそこ歩いたと思うがまったくそんな気配がなく、魔物どころか、虫一匹ともすれ違わない……。なんか不気味ね……。


「てゆーか、ここ骨落ち過ぎじゃない?なんなのよ」


 マーシャはそう言うと、転がる骨を蹴る。


「それ、普通の骨じゃないわよ。多分この奥にいるなにかの餌になった魔物の破片よ?」


 私は前を見ながらマーシャに言う、すると二人の足が止まったのだ。


「なんだと?」


 ルキウスの声が少し裏返っている


「これ、見てみて。力で思い切り肉ごとちぎられたから剥離骨折してたり、頭に牙の跡あるし」


 私は足を止めると、そばに転がる骨を拾って見せた。

第九話 『金牛洞窟へ到着 いざ中へ!』を読んでくださりありがとうございます。

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