第二十五話 『肉をむさぼる者、オークロード、ごるでぃな』
「まさか……あれがごるでぃなか……」
卓也はそう言って剣を構える。リサも鞭を抜き、臨戦態勢を取った。
「ん? なぁんだ、もう来たの……」
俺達の気配に気が付いたのか巨大な影は……ごるでぃなは俺達の方を振り向いた。
ボサボサの長い黒髪に、頭から生える耳に巨大な鼻。そして女性というには立派な筋肉に大柄な体系の魔物が、くちゃくちゃと口に入れた何かを食べていた。
「うっわ、こいつクチャラーかよ……」
「食べ方も汚いしな……」
貴明と卓也はごるでぃなを見ながら静かに呟く、嫌悪感を持った声色で。すると、奴は何かを話そうとしたのかゲップをした。
「私は女神の名を冠するごるでぃな、アロタロス様に使える、オークロードよ」
ごるでぃなはそう言って、ゆっくりと立ち上がった。デカい、座っていた時から分かってはいたが、立ち上がるとかなりデカい、その姿は二メートルは優に超えていた。
「は? 女神? ただのブタやろ。寝言は寝て言えや」
ごるでぃなの言葉に怒りの表情をした貴明が言葉を掛けた。するとごるでぃなの動きが止まると同時にリサの目が見開いた。
「貴明さん、オークはブタなんよ。ゴリラに猿って言うのと同じなんよ? いうならデカブタとかブタの癖に不潔野郎とか自意識過剰汚ブタとかそう言う風に言わないかんのよ」
貴明の言葉に、卓也も訂正するような口調ながらもごるでぃなをディする言葉を投げかけた。するとだ、ごるでぃなの肩がプルプルと震え始めた。
「まずい! 二人ともあいつにそう言う言葉は禁止! キレるわよ!!」
リサの言葉にぎょっとした表情をした二人はごるでぃなを見る、すると奴の肩が震えると同時に、魔力が高まっていた。
「まずい、すぐに準備して! 来るわよ!!」
リサの言葉に、貴明はペンライトを抜き、卓也はサングラスをかけそれぞれの魔力を灯し、姿を変化させた。その時
「この女神である私に向かって汚ブタ? ふざけるなよ……私は唯のオークじゃない……女神なんだ……私が一番美しいんだ!!」
「鏡見て言えやボケぇっ!!」
ごるでぃなの言葉に思わず、俺も声が出た。卓也と貴明と同じことを思ったのか、俺の口からも二人と同じ言葉が飛び出した。
「鏡を見ろ……もう許さない、貴様らまとめてぶっ殺す!!」
ごるでぃなはそう言うと雄たけびを上げ、俺達の方に突っ込んでくると拳を大きく振り下ろした!
「もう! そう言う事言ったらダメだって言ったのに!!」
俺達は飛び上がり、奴の一撃を躱す。するとリサが俺達三人に向かって目を細めるジト目で言ってきた。
「すまん、思わず……口が……」
俺は着地しながらリサに言うと、刀を強く握りごるでぃなを睨んだ。
「ちぃ、すばしっこい奴らだ。でもいい、まずは……貴様から潰す!!」
俺達はごるでぃなを囲むように着地をした様だった。そしてごるでぃなは一番近くにいるであろう貴明を睨むと、貴明の方に向かって走り出した!
「はやッ!!」
俺と貴明の声が同時に聞こえる、巨体の割に物凄い速度だ。
「良いぜ、その顔面ぶん殴って焼き豚にしてやる!!」
貴明はそう言うと、炎を左手に灯す、オレンジ……もはや黄金にも近い輝きの炎だ。そして、ごるでぃなの体が貴明にぶつかろうとしたその時!
「カイゼル・ナックル!!ってあれ?」
貴明は技を叫びながら左腕を振るう、しかしその拳は空を切りごるでぃなには命中せず、なんと奴は卓也に迫っていた。
「フェイントか!」
卓也は剣に稲妻を纏わせ、両手で握る、そしてごるでぃなを切り裂こうと大きく上段に構え、振り下ろした!
卓也の振り下ろした斬撃は、ごるでぃなに命中した。だが……
「かったっ!!」
全くダメージをごるでぃなは受けておらず、奴は卓也に両腕を伸ばし、正面から羽交い絞めにした。
「あなたの汚ブタという言葉。私の心に響いたわ。殺してやろうと思ったけど、貴方よく見るとカッコいいじゃないの……ふっふっふ……抱きしめて、あ・げ・る」
「まずい逃げろ、卓也ぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
奴のゾッとする台詞を聞いた俺たちは、卓也に向かって叫んだ、だが遅かった。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
卓也はそのままごるでぃなのその太い胸に身体を押し付けられ、思いっきり抱き締め……いや、締め付けられた。そして卓也の叫び声が木霊した。
「ふっふっふ、中々良い抱き心地だったわ、本当はもっと滅茶苦茶にしてあげたいけど、お・あ・ず・けね」
ごるでぃなはそう言うと、卓也をゆっくりと床に下ろし、卓也に舌なめずりをしながらウィンクした。
「リサ、お前は卓也の回復をしてやれ!!」
「え、う、うん。でも……あんまりダメージ受けてなさそうだけど……」
「馬鹿野郎、肉体じゃない。精神だ。とんでもないトラウマを植え付けられたはずだ!!」
俺は隣にいるリサに駆け寄り、彼女に卓也を助けるように言う、リサは外傷がみられないため首を傾げているが、精神の方がヤバい、俺もさっきから悪寒が止まらない……。
「卓也! 大丈夫か!」
そうしていると、貴明が倒れて震えている卓也の体を起こした。
「くっ、酷い。なんてことだ。こんなに震えてやがる。すまん、俺が盾になれとか言ったせいで……リサ! 早くこいつを回復させてあげてくれ!!」
貴明もリサに向かって叫ぶ。俺と貴明の迫力に押されたのか首を傾げながらもリサは卓也と貴明の元へ向かった。
「回復? 私の熱い抱擁がショックだったとでも言うの? そんな、ふざけた事やらせるわけないでしょ、まずはリサあんたから潰す!!」
ごるでぃなは声を荒げると、リサに向かって接近した。やらせるか!
「武久!」
「分かっている!!」
俺はごるでぃなの前に立ち、貴明は後ろから飛びかかる。そして俺たちは炎の魔力を纏った。
「こぉれでもくらぇっ! カイゼル・パァァァァンチッ!!」
「切り裂け……魔炎斬!!」
そして俺は炎を込めた刀を縦にまっすぐ振り下ろし、貴明は燃え上る炎の拳をごるでぃなに突き出した! 俺たちの放った炎は、見事ごるでぃなの体に命中し、炎上した! だが……。
「しまっ!」
「武久ぁッ!!」
炎の中からごるでぃなの腕が飛び出した、俺は切り裂こうと刀を構えるが、奴の方が早く俺は奴にいとも簡単に組み付かれてしまった。
「よくも乙女の体を切ったり、焼いたりしてくれたわね! 許さないわよ!!」
「へ? どこに乙女がいるって? 俺の目の前にいるのは醜いブタしかいないみたいだが!!」
「! なんですってぇぇぇ、減らず口を叩く奴ね……ん? あれ、あんたもよく見たらいい男じゃないの!!」
俺の煽りに一瞬奴の目が切れたように鋭くなる、だが、俺に顔を近づけると突然目じりが緩み、舌なめずりをし始めた。
「き、きもちわりぃっ……」
「あらあら、そんな事言って、照れ屋なのね……可愛いわぁ!」
不味い、あまりにもの気持ち悪さで体を寒気が襲う、力が抜ける……。
「さっきの男も好みだけどあなたもいい男ね……あなたも、抱き締めてあ・げ・る」
奴はそう言うと、俺の背中に腕を回し始める。寒い、力が抜ける。
「俺の友達から離れろ!!この糞ブタがぁッ!!」
貴明は、ごるでぃなに向かって叫ぶと、奴の体に向かって飛び蹴りを入れ、奴のバランスを崩した。
「っ、語らいを邪魔するなんて無粋な奴ねぇぇ殺すわよ!」
「やれるもんならやってみろ、ター君、多少の痛みは我慢しろ! 今すぐそのブタを引きはがしてやる!!」
貴明はそう声を上げると体中に炎を灯した、そして
「喰らえ! カイゼル・ブラスタァァァァァァッ!」
貴明はそう言うと両腕を開いた、すると纏っていた炎が一気に飛び出しごるでぃなに向かって襲い掛かった!
「不細工な子ブタには興味がないの! 消えなさいッ!!」
ごるでぃなは鏡を見ろと思わず言いたくなるようなことを貴明に向かって言うと、迫ってくる炎を見た、そして勢いよく息を吸い込むと、一気にそれを吐き出した!
「なっ! グわぁぁぁっ!!」
その息は貴明の放った炎をいとも簡単にかき消すと炎の余波により生まれた熱風を貴明にぶつけた! そして、それを浴びた貴明は大きく吹き飛ばされた!
「さぁ、ター君だったわね? じらされた分、たっぷり抱きしめてあげるわ」
「や、やめろ……うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
そして俺は、ごるでぃなの締め技を受け、巨大な叫び声を上げた。
第二十五話 『肉をむさぼる者、オークロード、ごるでぃな』を読んでくださりありがとうございます。
面白いと少しでも感じて頂けたなら、評価、感想、広告下の★★★★★を押して応援してくれると嬉しいです!
よろしくお願いします!




