第八話 『ミノタウロスの討伐へ 目指す場所は金牛洞窟』
あれから訓練場から出て、それぞれ準備をしていた私達は集合場所であるブルーノさんの屋敷に居た。
「さて、今から、ミノタウロスのいるところに行くけど二人共、準備はできている?」
私は二人に尋ねた。
「私は問題ないわ、ルキウスは?」
「俺もできている」
マーシャは大剣を使うことから前衛の戦士だ。そのはずなのに、彼女の装備は軽装だ。戦士と言えば頭の上から足先まですべてを守る鎧を着ているのが一般的だ、でも彼女の装備は違う。
上半身は胸周りを覆う鎧で下半身は腰のみを覆う、まるでスカートのような鎧だ。オヘソを出す形になっている、お腹周りが非常に心もとない。
手足の方も軽装で、手の方は前腕と肩、足は、膝とスネから足先までを覆う鎧しかつけていなかった。
「マーシャ、その装備大丈夫? 結構、軽装だけど」
「あんまし重いと、速く動けないのよねー、だからこれくらいが私は丁度いいかなって思う」
なるほど、彼女の答えに少し納得してしまった。彼女は大剣を振るスピードは中々の物だ、猛攻という言葉が似合うほどに、たしかに重い鎧を纏っている状態であの速さが出せるかと言われたら、厳しいだろう。
「防御面はたしかに心許ないが、パワーはある安心しろ」
マーシャの隣りにいたルキウスが喋りだす。ルキウスはアーチャーということでそれらしい装備をしていた。
特徴的なの弓を握る左側の装備だ。手の先から肩まで鎧で固めており、肩が異常に大きい。右側は前腕のみの装備しかないがしっかりとした作りになっている。
鎧も上半身全体をしっかりと覆うもので、胸周りが特に重厚そうに見える。下半身は動きを妨げない程度の装備になっていた。
「それから、リサ。俺が破壊してしまった、ムチの代わりだ」
ルキウスはそう言って、一本のムチを私に渡した。青黒いムチで持ち手は剣の柄のようにしっかりとした作りになっていた。
「いいムチね、弾力があってとても軽いわ」
私はルキウスからムチを受け取ると振ったり、触ったりして感触を確かめた。ゴムのような材質でできたムチだ。軽いけど弾力があって丈夫な。
「喜んでくれてよかった、それと、その服の着心地はどうかな?」
マーシャはニコニコと笑いながら聞いてくる。そう言えばシャワーを浴びたとき、私が普段着ているものの上から羽織れるようなものをくれたっけ。
「とても着心地がいいわ。肌触りが良くてでも、頑丈で。これは防具なの?」
「あぁ、それは俺たち金牛騎士団の魔道士が使っているローブと武闘家が来ている胴着を加工して作ったベストだ」
ブルーノさんが微笑みながら言う。
「君に渡したムチと同じ材質で作っている、これから向かう金牛洞窟に居る、コーカスバイソンというモンスターの皮と筋肉を加工して作っている」
モ、モンスターの筋肉を使っているの!? 私はそう思い、ベストに触れる、このゴムみたいな弾力はモンスターの筋肉を利用したものなのか……。
「でもそれだけじゃないよね、薄っすらとだけどベストが光り輝いている、これは?」
私は光り輝いている面を指しながら三人に尋ねた。
「すごい、すごいよ、リサよく気がついたね!」
マーシャは笑いながら私の手を取る、ルキウスもブルーノさんも笑っていた。
「それは、金牛洞窟で取れる、ブルニウムという非常に薄い鉱石を加工したものを装飾として砕いて入れている」
鉱石!? これが!?
「俺たち金牛の町の人間は金牛洞窟で取れたものを様々な形に加工してリンクス内で売っている、防具や武器への加工もお手の物だ」
なるほど、だからマーシャやシオンの防具やくれたムチが見た目の割にはしっかりとしているのね。それにしてもすごいわね。
「じゃあ、私の準備もできたところで金牛洞窟に行きましょう!」
私はムチをベルトに付けて言った。マーシャとルキウスも軽く笑う。そして、私達はブルーノさんの部屋を後にした。
屋敷を出ると目の前に馬車が用意されていたのだ、私は戸惑いながらもそれに乗り、出発した。
「徒歩でも十分に行ける範囲にはある。だが、無駄に体力を消耗するのも良くないだろ?」
ルキウスは戸惑う私に微笑みながら言う。
「最初は『俺は俺の目で見たことしか信じん。キリッ』とか言ってたのに、急にデレデレしないでよ」
マーシャがルキウスのモノマネをしながら言う。微妙に似ているのが、笑いのツボを刺激する。
「マーシャ、どうやらお前はミノタウロスを討伐後帰還してすぐにいつもの三倍の訓練をしたいらしいな」
ルキウスは腕を組みながら言う。
「あぁぁ! 冗談です! 冗談! ごめんなさい!!」
マーシャは両手を重ねながら謝る。その速さはすごいものだった、ルキウスがいつもの三倍の、といった瞬間すでに謝罪の体制に入っていたのだ。どんな訓練するのかしら?
「今から行く金牛洞窟って、どういう所なの?」
私は二人に尋ねた。
「中途半端な場所のふもとにできた穴だ。洞窟の規模としてはそこまで深くはない、正直、あんな洞窟であれだけの鉱石が取れるのが不思議なレベルだ」
「なんでそんなところにミノタウロスが?」
洞窟を見てはいないけど、ルキウスの表情を見る限り、洞窟としては微妙なところなのだろう。
「さぁな、ただ、白洋の村と金牛の町を襲撃した後、ミノタウロスはこの洞窟に入っていった。そして、それから出てきていないんだ。ただ、やつの配下と思われる魔物は野に放たれた状態だ」
「それにね、居座ってくれているおかげでこの洞窟内にいる魔物も活性化しちゃって、だから、採掘作業も止めているのよ、そのせいで産業が成り立たないから被害は深刻よ」
「やつが洞窟のどこに潜んでいるかも分からん、討伐隊を組んだが活性化した魔物の数が多すぎて洞窟を散策することもできない、だが、洞窟の散策にメンバーを割くと今度は町の守りや魔王討伐と言う騎士団の本来目的が遂行できない。人手不足と言うのはつらい」
二人はため息をつく、人手不足がここまで悩ませているのか、此処はちゃちゃっと終わらせましょうか。そう思っていると、馬車が止まった。到着したようだ。
「ついたな」
ルキウスは静かに言うとドアが開いた。私たちは外に出る。そこには、数名の兵士が洞窟の周りにいた。
「兵士がいるの?」
「ええ、あいつが何かのタイミングで出てきたり、冒険者たちが勝手にここの鉱石を掘りに来たら大変だからね」
「なるほど……」
私は歩きながらマーシャの言葉にうなずく、強力な魔物が出るから規制している区域で勝手に素材集めをして魔物に襲撃される冒険者を数多く見てきたから、しっかりと管理するというのは大事よね。
「ルキウスだ、ミノタウロス討伐に来た」
すでに洞窟の前におりその前にいる兵士に話しかけた、兵士は敬礼をすると、洞窟の入り口から離れた。
「行くぞ、準備は良いな?」
私とマーシャはルキウスの言葉にうなずくと、洞窟に入っていった。
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