第二十話 『新たなる剣は敵の罠!? 暴走する友』
「金属音……か?」
俺達が謎の施設に侵入すると、甲高い金属音のような物が聞こえ、俺達は足を止め耳をすました。
「金属音だけじゃない、かすかにだけど人の声が聞こえるね……あれ? でもこの声……聞き覚えが……」
「確かに……この声ってまさか!!」
俺とリサは顔を見合わせると、一気に音のした方に向かって走り出す、金属音は剣で何かを弾いた音、そしてこの、少しざらつきのある声から発せられる、高い声色……間違いない……。
「この強大な魔力、間違いないター君! その部屋にいるよ!!」
「ここか。よし! ハチマキ!おるんかぁいっ!!」
俺は、リサの指差す部屋の扉に向かって刀を振り下ろすと、扉を破壊しながら叫び部屋に侵入した!
するとそこには俺達の予想通り、ボロボロになった鎧を着こみ、剣を構えている卓也の姿があった。
「誰がハチマキじゃ、俺はヤマキじゃ!!」
俺の言葉に反応した、卓也は軽く飛びあがり右から飛んできた何かの攻撃を躱すと俺達の傍に着地した。
「おお、良かった無事みたいやな……」
「やかましいわ、奇妙な確認の仕方するな!」
卓也はそう言って口角を上げると、すぐに正面に立つ巨大な、鹿のようなモンスターを睨んだ。
「卓也さん大丈夫なの? こいつ以外にもやり合ったみたいだけど……」
リサはそう言い、周囲を見渡す。俺もつられて周囲を見ると部屋の片隅には目の前のモンスターに似た、銀色に輝く複数の鹿の死体……いやコードや火花が散っていることから考えるとロボットか……その残骸が転がっていた。
「まさかその傷もこいつに?」
「いや、安心しろ。これはウォーシールの時のダメージや、こいつらには一回も喰らってない……」
卓也はそう言いうと、剣を両手で握り刃先を、大鹿のモンスター、いや推察するにロボットだな……その鹿のロボットに向けた。
「詳しい経緯はこいつをしばいたら話すが、この狭い部屋で、こいつら相手にしたせいで、スタミナがきついんや、やからター君! 援護は任せろ!!」
「ター君言うな!!」
俺は刀を引き抜くと、肩で息をしている卓也にリサと一緒に並び立つ。いつものおふざけで援護は任せろと言ったみたいだが、この状態を見るにかなり、疲れてるみたいやな、しゃーない……俺がメインで戦うか……。
「しゃーないな、きっちり援護してくれよ……」
俺はそう言い刀を抜くと、二人よりやや前に出た。
「よし、行くぞ! サンダーブレード!!」
卓也は声を上げると、剣を両手で握り勢いよく剣を振り下ろし部屋の床ごと、大鹿のロボットに向かって稲妻の斬撃を放った!
「いまだリサ!!」
「ええ分かっているわ……ロック・エッジ!!」
リサは稲妻の斬撃により、前足を大きく振り上げ、狼狽えている大鹿のロボット目掛けて鞭を振るうと、奴の左前脚と右後ろ脚を鞭で拘束した! よし!!
「今よ、ター君!!」
「ああ、くらえ。無双!!」
俺は一気に大鹿のロボットに距離を詰めると、刀を両手で握りそのまま縦横無尽に振り、ロボットの体をバラバラに切り裂いた!!
「ふぅ、まぁ。こんなもんか……」
俺は呟くように言うと、床に振っていく大鹿のロボットの残骸を見ながら刀を納めた。
「それにしても卓也、お前が無事でよかった……貴明は見当たらんようやけど、何処におるんや?」
俺はこちらに向かって歩いてくる卓也に向かって言った。だが、卓也の表情は一瞬険しくなった。
「ああ、説明する……」
卓也はそう言い、口を開こうとした。その時!
「二人とも話はあと、何かくる!!ター君は後ろを警戒して!!」
リサが力強い口調に俺は思わず返事をし、背後を振り返った。すると、白衣を着た女が卵型の椅子に腰かけた状態でゆっくりと、大鹿のロボットの残骸を踏みつける様にして上から降りてきた。
「ヴィケーノ⁉」
リサは突然現れた女の名前を叫ぶ。なるほどこいつがヴィケーノか。
「あ~あ、私が作った人形を粉々にするなんて、流石よね……」
「まずいな……いきなりボス戦やとは思わんかった……剣がもうボロボロでな。こんな事なら、入り口でしばいたゴブリンが持っとった変な剣パクったらよかった……」
「変な剣?」
「ああ、魔力で刃が生成されるっぽい剣でな、ゴブリン自体は雑魚なのに剣の方が強くて苦戦したんや、戦利品にとも思ったけどゴブリン倒したらそれがどっか行って回収できんかったんや」
「もしかしてこれの事か?」
俺は卓也に向かって先程、回収した奇妙な剣の柄を見せながら言う。ゴブリンがもっとんたんか……。
「おおそれや! それがあったら戦える!!」
「あ、おい!」
卓也は俺から奇妙な剣を奪うように取ると、魔力を流し始める。バチバチと音を立てながら鍔の中央の宝石から黒と緑の光が稲妻のように迸った!!不味い!!
「まずいよ、それには虚無のエネルギーが内包されている。下手に魔力を流したらどう、なるか……って? コントロールできている?」
俺もリサも卓也を止めようとする、しかしだ、虚無のエネルギーの特徴的な禍々しい光を白や青といった閃光が覆った。すると、刃が生成され、俺でも感じていた禍々しさが剣から消えていた。
「これならいける!」
卓也の言葉に俺達は、笑みを浮かべるとヴィケーノに向き合った。すると、奴の肩が震えていた。
「あ? なんや、何を振るえてるんや……」
卓也が静かに呟くとヴィケーノは高笑いを……ちがう、大笑いし始めた。なんやこの状況に気でも触れたんか?
「アッハッハッハ! そう、それを拾ってくれたの! よかったわぁ~ゴブリンに持たせたら暴走しちゃって探してたのよ~」
ヴィケーノは少し笑っていながら言う。マジかよ、じゃあ。あの剣は……まずい!
「いやな予感がする。卓也さん、その武器手放して……」
「俺も同感や、なんかやっばいぞ……」
俺とリサの言葉に卓也は頷くと、剣を投げ捨てようとした、その時! 鍔の宝玉が怪しく。そう、虚無のエネルギーと同じ紫と緑の禍々しい色に輝いた!!
「は、離れへん!?」
「なんやて!?」
俺は、卓也の腕を掴むと剣を引き離そうとする。だが、強力な磁石でもくっついているのではないかと思うくらいの力で握られており、剥がせなかった、すると
「うおッ!!」
剣から、虚無のエネルギーが勢いよく発生し、俺は大きく弾かれた!
「それね、虚無のエネルギーの結晶を鍔に埋め込んで作った剣なの、使用者の魔力によって刃が変化する優れモノなのよ? フォーシールにはいらんと言われ、アリグムに持たそうとしたけど……あんたたちがぶっ壊してくれた! 私の最高傑作であるあの子をね!!」
ヴィケーノの声に反応したのか、剣から稲妻のように虚無のエネルギーが放出された!
「あなた、何をする気なの⁉」
「決まっているじゃないの、彼を暴走させるのよ。同調しているD-105は虚無のエネルギーの欠片を埋め込まれている。欠片は摘出しても、神経にこびりつくの……高い同調率は強力な力を生む、でもそれと同時に、お互いが罹患している病気や怪我、状態異常も引き継ぐの、さぁ、D-105。いえ、ヤマキ・タクヤ、その力を解放しなさい!!」
ヴィケーノが叫ぶと、卓也は一人でに右手を掲げる、すると奴の剣に虚無のエネルギーと同じ禍々しい光が稲妻のごとく落ちた!!
「うおぉっ!」
「キャアッ!!」
その衝撃波はすさまじく俺達は後方に大きく弾かれた!
「ま、まずい……卓也さんが……飲まれる……」
俺達は立ち上がりながら、卓也を見る。するとそこには、体が大きく変化した卓也がいた。右手に握る剣は、巨大な鎌のようになり、体全身の鎧は禍々しい棘が至る所から生えている漆黒で、背中からは悪魔のような、翼が生えていた。
そして、鎧の各部から、虚無のエネルギーと思われる緑の光がラインのように漏れ出し、奴の目は大きく開き、瞳は異様な形を例えるなら渦のような輝きをしていた。
「はっはっは、面白いわぁ。さあ、仲間内でつぶし合いなさい!!」
ヴィケーノはそう言うと、椅子ごと宙に浮かび上がると、卓也がゆっくりと動き出した。
「まずい、来る!!」
リサがそう言い、魔導書を構えた。その時! 急に卓也の握る鎌が、剣に変化し、姿もデモンがあちら側で纏っていたような重厚な物へと変った。
そして、ヴィケーノの方を振り向きながら刀を振りそこから、稲妻を放った!!
「な、なめんなよ……このくらい……ぐう……」
卓也はヴィケーノに向かって言うが、次の瞬間、また元通りの禍々しい物へと変わった。
「ちぃ! 流石はあいつと同調しているだけのことはあるわね……まぁ良いわ、意識がある状態で仲間と戦って潰しあいなさい!」
卓也の放った斬撃は、ヴィケーノに命中するが、バリアのような物で身を包んでいたのか、攻撃は弾かれていた。そして、ヴィケーノは高笑いしながら姿を消した。
「ター君、ヴィケーノはあと。今は卓也さんを……彼は今、虚無のエネルギーにあらがっている……何とかなるかも!!」
ヴィケーノを睨む俺に対し、リサは静かに強く言う、その強い言葉に促されるまま卓也を見ると、奴の姿が通常になったり、禍々しくなったりと繰り返していた。
「わ、わるいな……抑え込んでお前ら斬らんようにするから、この武器を何とかしてくれ……」
卓也は左腕で右腕を抑えながら言う。喉を絞める様に出すその声だけで奴の今の状況は伝わってきた。
「よっしゃ、思いっきり行くぞ。痛いのは我慢しろよ!!」
「ええ、早く助けてあげるからね!!」
俺とリサは力強く言うと、卓也に向かって走り出した!!
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