第十九話 『大穴の下を抜けて……森林の中での戦い』
「っ、思ったより風が強い上に浅い!?」
大穴に飛び降りると、予想していたよりも吹き抜ける風が強く、出口である下が見え始めた。まずい、風が強くてバランスが取れない……。
「リサ、掴まれ。このままだと、着地の時にダメージ受ける!」
俺はそう言いながらリサに向かって、左手を伸ばす、するとリサは軽く笑った。
「だいじょうぶだよ。フライ!」
リサはそう言うと俺に手を伸ばし魔法を唱える。フライ。飛行魔法だ。こんなものも覚えていたのか……。
リサのフライを受けた俺の体は自分の意思で浮かび上がることができ、俺達はそのままゆっくりと、大穴を降りた。
「ふぅ、風が強くてびっくりしたけどター君大丈夫?」
リサは着地した際に巻き上げ、スカートについた埃を手で払いながら俺に向かって言った。
「ああ、リサが途中でフライの魔法を使ってくれたから、難なく着地できたぞ」
俺は立ち上がりながらリサに向かって言う。ここだけの話、着地時にフライの間隔になれずバランスを崩してしまい座り込むように着地してしまった……。
「そ、それにしても今度の所はまた一気に変わったな、森の中だぞ……」
リサに着地でミスしたことをバレないように俺は周囲を見渡す。
「そうだね……まぁ熱帯から寒冷地じゃないだけましとしましょう、それだけでも体を壊しかねないから」
リサはそう言って、苦笑いをする。まぁ確かにな、今いるエリアは森の中ではあるが彼女の言う通り、温度の落差が激しいと確実に体力を持って行かれかねない……。
「なんか小部屋みたいやな……とりあえず、前の通路を歩いてみるか?」
「ええ、そうしましょう……」
リサは俺の言葉に頷くと、土姫を引き抜いた。目の前の通路は人が二人並んで歩ける程度の広さだ。鞭より、短刀の土姫の方が良いと判断したのか……流石だな……。
俺も刀に手を掛けるとそのまま、通路を歩きだした。
「完全な、森の中……だね……どこからモンスターが来るか分からないから……警戒しましょう……」
「ああ、虫系に囲まれたら結構厄介だからな……右は俺がカバーする。リサは左を頼むぞ」
リサは俺の言葉に頷いてくれた。そしてしばらく歩くと俺達は広い空間に出た。
「なんじゃありゃ……」
しかし、俺はそこに出て思わず言葉を漏らす、なぜなら森の中のはずなのに、そこには似つかわしくない、鉄製の建造物が佇んでいたからだ。
「いきなりボス部屋か……」
俺は呟くと、刀を引き抜いた。そして左に立つリサと顔を見合わせた。
「この感じだと、ヴィケーノね……気を付けて奴は、直接戦闘能力は低いけど特殊な魔道具を駆使するタイプよ……」
「分かった……よし行くぞ!」
俺は声を上げると、建造物に侵入しようと足を一歩踏み出した。その時だ!
「ター君、上!!」
リサの声が響き、俺は足を止めると上を睨む。すると、生い茂る木々の隙間から銀色に輝く何かが降ってきた!
「ちぃ!」
俺は刀を上段に構え、その降ってきた何かから振り下ろされる一撃を弾き飛ばす、俺に弾かれた何かは宙で一回転し、そのまま着地した。
「こいつ……ゴブリン……か? でもなんか違うぞ……」
俺は目の前に立つゴブリンのような魔物を見ながらつぶやく、いや、見た目は完全にゴブリンだが、腕や足などは傷だらけで瞳も光を失っていた。
「そうね、まるで瀕死の状態よ……でも、あの不気味な剣を操れるんだもの、何をしてくるか分からないから、十分に注意しよ」
リサの言葉に俺は強く頷くと刀をしっかり握りそのまま一気に走り出した!
「まずは妙なことをされる前に拘束する……影縫斬!!」
ゴブリンに接近すると、刀に魔力を流し両手で握ると、右下から左上に向かって斜めに切り上げた!!
俺の放った漆黒の斬撃はゴブリンの体に命中、奴の体を拘束した!
「いまだリサ!」
「ナイス! まずはそのヤバそうな剣を奪わせてもらうわ!!」
リサはそう言い鞭を構え、縦に振るうとゴブリンの握っている剣に鞭を絡めた。
「よし、これで引っぺがせば……」
リサは鞭を両手で握り腕を引こうとした、その時だ、影縫斬を受け動けないはずのゴブリンの体が、小刻みに揺れていた。
「まずい! リサ離れろ!!」
俺はリサに向かって叫ぶはそれよりも速く、彼女はリサの鞭から手を離すと、後ろに買飛び、ゴブリンと距離を取った。
すると、奴の身体から勢いよく蒸気のような物が発生、そのまま間髪入れずに右腕を動かしリサの鞭を払いのけた。リサの鞭は勢い良く弾け、草木の生い茂る床を転がった。
「結構、強く絡ませたと思ったのに……」
リサはそう言って転がるように飛び鞭を拾うとゴブリンを睨んだ。するとゴブリンは右腕を大きく掲げていた。
「くそ、影縫斬の効果が切れてやがるのか!!」
俺は悪態をつきながら刀に魔力を込めた、その時! ゴブリンの握る刃先が黒く輝き始めた。
「ター君、ストップ! この魔力結構不味いよ!!」
「だったら、斬り払ってやる! オロチぃっ!!」
ゴブリンが剣を振り下ろした瞬間、俺も同時に刀を振る。奴の刃先から黒い斬撃が飛ぶが、俺のオロチによる追加斬撃はそれをすべて弾いた。
「なんて無茶なことを……魔力同士がぶつかったらどうするつもりだったの……?」
俺の後ろに立つリサは、腰に手を当てながら、子供に言い聞かせるような口調で俺に言う。正直これも悪くない、口がにやけてしまいそうだ……。
「防ぐよりもその方が良いと思ったんやけど、ただの斬撃なのに結構重かった……もう一度、動きとめるか……」
「いえ、たぶん効果ないと思うわ。さっきのあの蒸気、たぶん消散剤だと思うからすぐに効果消されちゃうわよ……だから……ね!」
消散剤……状態異常を打ち消す、アイテムだったな……。そう思っているとリサは魔導書を開き魔力を込める。するとゴブリンの周りに魔法陣が現れそこから黄土色に輝く鎖が出現した。
「これなら、消散剤でもかき消せない魔法の鎖よ、これで縛り上げるから、腕をぶった切ってでも、あの剣を落としてくれる?」
「分かった……じゃあ行くぞ!!」
俺はそう言うと、ゴブリンに向かって走り出した!
「土の精霊たちよ、眼前に佇む悪しき者を封じたまえ……拘束魔法……アース・バインド!!」
リサが魔法を詠唱した瞬間、ゴブリンの周りに展開していた鎖が奴の体に向かって突撃し、奴の体を拘束した、良し、今だ!!
俺はゴブリンに接近しようとした、その時だ、ゴブリンの握る剣の鍔から黒と緑の禍々しい光が稲妻のように発生、リサの鎖をその稲妻は破壊した!!
「嘘だろ、なんて光だ!?」
俺は足を止め、ゴブリンを睨む、すると奴は右腕を大きく掲げ構えていた。
「まずい……あれ、虚無のエネルギーだ。しかも尋常じゃない。向こうでカイゼルを暴走させたとき以上の力だ……」
「なんだと!?なんでそんなものをゴブリンが!?」
「分からない……でもとにかく何とかしないと、あれを振られたらヤバい……」
「だったら、その前に奴をバラバラにする!!」
俺はリサに向かって言うと、龍光斬りを放ち、止めるリサの声を背に聞きながらゴブリンに接近した! すると、俺が近づいていることに気が付いたゴブリンは剣を俺に向かって振り下ろし、虚無のエネルギーの禍々しい光の斬撃を放ってきた!!
「なめんなよ! そんな斬撃、切り飛ばしてやる!!」
俺は叫ぶと、体を回転させ虚無のエネルギーの斬撃に突っ込むと、それを勢いよく斬り飛ばした!!
「ター君! 虚無のエネルギーは剣から出てる。ゴブリンを無視して、その剣を攻撃して!!」
「分かった!!くらえ、オロチ……縦一閃!!」
俺は驚き慌てているゴブリンの右腕に向かって、刀を振り下ろし、奴の右腕をバラバラに切り裂くと、追加斬撃が剣を襲い、禍々しい光を放つ鍔の方行を切り裂いた!!
「ふぅ、まぁザっとこんなもんか……」
俺は刀を納刀すると剣を手に取った。
「なんでこんなものが虚無のエネルギーを……ってあれ? 刃が消失している……」
俺の後ろにいたリサは俺が拾った剣を見ながら言った。確かに、鍔から先が無くなり柄だけになった剣が折れの手には握られていた。
「なんなんやこの武器、不気味すぎるわ……これどうする?」
「これ、刃は虚無のエネルギーで生成されていたんだと思う……だから、こその辺に放っておくのは危険すぎるよ……」
「じゃあ、どうするんだ? 君が持っておくか……?」
「……いえ、君が持っていて、ター君」
「お、俺が? だ、大丈夫なのか?」
「君は向こうで、その剣よりも強大な虚無のエネルギーを持ったラビュルスの斧の力を抑え込んでいたんだもの、私は行けると思うわよ。それに今は落ち着いているしね」
「まぁそれもそうか……分かった……」
「あ、でも下手に魔力流しちゃだめよ、君の魔力に反応して動き出したらいけないから」
リサの言葉に俺は頷くとリサから剣の柄を受け取ると刀とは反対側の右腰に挿した。
「よしじゃあ、早速行くか!」
「ええ!」
リサは力強く頷く、そして俺達は目の前にそびえたつ、風景とミスマッチをしている施設へと走りだす、そして入り口と思われる扉の前に来た瞬間、突然ドアが開いた。
「あら? 向こうから迎えてくれるみたいね……ター君注意していくわよ」
俺はリサの言葉に頷くと、そのまま奇妙な建物内に足を進めた。
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