第十六話 『聖なる階段をあがれ 頂上で待つ男その名はアリグム』
「こ、ここが次の相手がいる所か……」
視界が戻った俺は周囲を見渡し呟く、此処もまた俺達が勉学に励んだ教室とは全く違っていた。
白いタイル張りの床に同じような色の壁、電柱のように太い柱。まるでそこはゲームに出てくる神殿のような場所だった。
「神殿……みたいだな……次の敵は騎士かな? 確か七つの大罪とか言ってたな……」
「いや、そんな騎士みたいなのはいないわ。ただ、ごめんね。私もあいつらがどう言う趣向をしているか知らないの。でも、間違いなく次戦うべき相手の趣向や戦いやすいフィールドに変更はされているはず」
リサは周囲を見渡しながら言う。
「ま、とりあえず。上に行こう。ここで考えても戦ってみんことにゃ意味ないからな……」
俺はリサの肩に手を乗せると、目の前に伸びる白銀の階段を指さした。
「そうね、行きましょう」
リサの言葉に俺は頷くと、警戒を怠らずいつでも戦えるよう、俺は左手に鞘、右手は柄に軽く添えるようにし階段を上がる。リサも同様に、鞭のグリップ部分を右手に、左手には魔導書を持っていた。
「っ! ター君……気が付いてる?」
突然、リサは足を止めてゆっくりと鞭をベルトから引き抜き、ゆっくり構える。俺もゆっくり頷くと、刀を抜いた。すると、階段を下りてくる亜人の群れがあった。
「ゴブリンに、オークに、エルフ……亜人族のパーティだな!!」
俺はそう言い、魔力を流すと龍光斬りで一気に前方に突撃すると刀を真横に振り賞めにいる、斧を持ったオークとゴブリンの体を切り裂いた!
ゴブリンたちは声を上げ、その場に倒れる。しかし、隊列を組んでいたのかその後ろにいたエルフたちが俺に向かってすでに構えていた弓を放ってきた!?
不味いと思ったその時だ、リサが鞭を振るい俺に迫るすべての矢を払い落した!
「ナイス!」
俺は刀に炎の魔力を流すと真上に刀を振り上げ、炎の斬撃をエルフに浴びせ、奴らを一気に切り裂いた!
すると奴らの体は、バラバラになりながらもゆっくりと粒子のようなりその場から姿を消すと、固形の何かがその場に転がった。
「なるほど、エルフとゴブリンが組んでいるのはおかしいと思ったけど、理由が分かった……。そしてここにいるのが誰なのかも……ね」
リサはそう言いゆっくり歩き出すと転がる固形物を拾った、楕円形の石のような、バッジのような物だった。
「それは……?」
「これはここにいる奴らの一人……アリグムが能力で作った鉱石よ。これを使って魔物を作り出すことができるの」
リサはそう言って、俺に鉱石を見せる、そこには怒った顔文字のような物が描かれていた。
「やはり、雑魚共ではお前たちの実力を測る物差しにもならんか……」
リサから鉱石を受け取ろうとしたタイミングで声が聞こえ俺達は振り返る、すると上の階からゆっくり降りてきている男の姿があった。
「アリグム!!」
リサは睨みながら名を叫ぶ、こいつがここのボスか……銀髪に褐色肌を持ち、黄土色のマントを羽織り、皮膚なのか洋服なのかはたまた装甲なのかは分からないがアンダーシャツのような肌に張り付くようなものを身に纏った男だ。
「行くぞ、貴様らに正義の力を見せてやる!」
アグリムは叫ぶとマントをはためかせるとこちらに向かって飛び降りてきた。そして右腕を振り下ろそうとしているのか、大きく後ろに構えていた。
「こいつは武闘家、気を付けて!」
リサはそう言い、ムチを構える、俺も刀に魔力を流した。そして
「喰らえ、正義の鉄拳!!」
奴の叫びに呼応して右腕が勢いよく黄色く光り輝いた! そして、奴はそのまま拳を俺たち……いや、リサに向かって振り下ろした!
しかし、リサはそれを読んでいたのかムチに魔力を流した。そしてアグリムの振り下ろす拳に重ねる様に、魔力で硬化したムチを振り上げた!!
リサの振るムチは宙でアグリムの拳と激突、一瞬火花を生むが特にダメージは無いのか奴は俺たちの背後に着地した。
「………俺の正義の鉄拳を防いだうえ、この拳に傷をつけるとは……異世界の影響で衰えているとは言え六賢者の名は伊達ではないか」
アグリムは俺達に背を向けたまま呟くように言う、すると奴の拳から血が流れ落ち、白く輝くタイルを汚す。
「だが……あまいな……」
そして奴は立ち上がると、こちらを振り返る。その時だ、背後から金属製の何かがぶつかる……落ちたような音が聞こえた。
「リサ!?」
俺は音の方を振り向く、するとそこにはムチを落とし、手首を抑えているリサの姿があった。
「だ、だいじょうぶ……ちょっと痺れただけだから……」
「それだけで済む……か、力が衰えていても面倒な……」
アグリムは右腕を振り血を払うと、右拳に魔力を纏わせた。先ほどよりも輝きが強い!?
「行くぞ、今度は痺れ程度で済むと思うなよ……」
アグリムはそう言い、輝く拳を俺達の方に、というより、リサに突き出す。まだリサは痺れが取れていない……か……。
「おいおい、相手はリサだけちゃうぞ」
俺は刀を構えながら、アグリムとリサの間に立ちながらアグリムを睨んだ。
「この世界の人間か……リサの力のお陰でアロタロス……様を倒しただけで粋がるなよ……?」
アリグムは苛立った様子でそう言うと、俺に輝く拳を向けた。
「粋がってるかどうか……試してみるか?」
俺は刀を両手で握ると、腰を低く落とし、剣先を奴の方に向けながら、軽く笑う。
「ほぅ、大した自身だ。見た所、この世界におけるただの一般人に見えるな、そんな奴で俺を倒せるのか?」
「あ~ゴチャゴチャうっせ。お前の方こそ自信がないんちゃうんケ? 弱い犬程良く吠えるつってね」
俺はアリグムを睨みつつ、笑いながら言う。すると奴の方が震え出した。そして
「はっはははははは!」
と、奴は大笑いし始めた。俺もそれにつられるように奴に負けないような声量で大きく口をあけて笑う。神殿という場所なのか声はよく通り俺たちの笑い声が木霊した。
「何がおかしい!!」
ひとしきり笑うと、アリグムが声を荒げ俺に向かって突撃してきた。怒っているのか、奴の右拳がより強く輝いていた。
「油断したな! 俺を煽ったことを後悔させてやる! 正義の鉄拳!!」
「油断? 違うね、これは余裕という奴だ!!」
俺は叫び、後ろに下がると奴が突き出している右拳に合わせる様に刀を真下から振り上げた! 炎と風の魔力を流してだ!
刀の刃先から、勢い良く燃え上がる炎が飛び出し、奴の右腕を切り裂くと奴は驚いた表情をして後ろに下がった。
「……成程、口先ではないようだな……」
アリグムは俺の方を睨みながら言うと、手を振り血を払う。ち、クリティカルしたと思ったんだがな……。予想より浅いか……。
「リサの力だけでゲコゲドンとポテージャを倒し、フォーシールを退けたと思っていたが、精神態だけでアロタロス……様を倒しただけのことはあるな」
アリグムはそう言うと、自分の髪の毛を数本引きちぎると、そこに魔力を流した。そして
「いっ!?」
「うっそ!」
俺とリサは奴の次の行動を見て驚く、なぜなら奴は魔力を流した自分の髪の毛をそのまま口に入れ食べ始めたからだ。
「! そう言うことか、まずい! ター君今の内に攻撃して! 奴はあれで回復と強化を同時にしてる!!」
リサの声に俺は奴を睨み、そのまま一気に走り出し、刀を大きく振り下ろした!
「流石は六賢者だ、良く俺の能力を見破ったな……だが遅い!!」
アリグムが叫ぶと急に奴の体が俺の目の前から消え、俺の振るった刀は空を切るだけであった。
「ちぃ、どこ行った!」
俺は見渡しながら言う。奴の姿は見えない……となれば……。
「リサ!!」
この状況、今までの敵の傾向からして俺への攻撃と見せかけてリサのはず! 俺は、リサの名を叫びながら彼女を見た。
しかし、俺の視線の先には奴の姿はなかった、
「ター君! 私が狙いじゃない! 君だよ! 後ろ!!」
その時だ、リサの声が響いた! マジか!?俺は刀を構えながらすると奴は俺の背後に立ち輝く左腕を俺に突き出そうとしていた。
「ちぃっ!!」
俺はアリグムの方を振り向きながら刀に魔力を灯す、弱点が分からんがとりあえずこれだ!!
「サンダーブレード」
刀から稲妻が迸り、俺は刀を真っすぐ振り下ろした! 刃と奴の拳がぶつかりそうになった! その時!!
「ター君!?」
リサの声が響いた瞬間、腹部に激痛が走り俺は後方に弾き飛ばされた!
「があっ!」
そして、柱に背中を大きく強打、体が大きく前方に倒れそうになるが俺は右足を前に出して踏ん張った。
「くそ、何をしやがった……」
俺は腹部を抑えながら正面を、アグリムを睨んだ。するとそこには右足を光り輝かせている奴の姿があった。
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