第十一話『次なる敵を目指して 進め!ダンジョン化した教室を』
「なんじゃこりゃ……」
俺は教室を見ながらつぶやく、俺は教室に、学生時代に何度も入った実習室に入ったはずだ。だが、俺の目には記憶とは違う実習室の風景があった。
土の地面に、土のレンガをいくつも積み重ねた様な外壁。まるでゲームで出てくるピラミッドや遺跡ダンジョンのようだった。
「外と同じだと思うわ、虚無のエネルギーの影響で空間が歪んでる……ここにいる奴を倒せば元に戻るはずよ……虚無のエネルギーに交じって奴らの一人の魔力を感じるから……」
俺の様子を見たリサは、肩に手を置きながら優しくも力強く言う。
「なるほど、それなら急ごう、あいつらが時間を稼いでくれたんだ……一人でも多くの奴らを倒そう……」
拳を握りながら言う俺の言葉にリサは強く頷き、歩き出した。
「気を付けて、魔物が出てくるかもしれない」
土姫を引き抜きながら、言うリサ。俺はリサのその言葉にうなずくと鞘を左手に握り臨戦態勢を取る。そして周囲を見ながら歩いて行った、その時だ!
「っ! ター君!!」
「分かっている!!」
リサの言葉に俺は頷くと、後ろを振り返る。そこには、耳の尖った魔物『ゴブリン』が俺を殴ろうと手に持った棍棒で、飛びかかってきた。
俺は刀を握り軽く息を吐くと、そのまま引き抜き、ゴブリンの頭を切り飛ばした! 頭を落とされたゴブリンはぱたりと前方に倒れ、しばらく痙攣し、動きを止めた。
「消滅しない……どういうことや?」
「虚無のエネルギーのせいでこの部屋は私達の世界に近づきつつある。だから君が倒したのはこちら側で実態を保てない魔物じゃなくて、正真正銘の本物のゴブリンを倒したのよ……」
「なるほど……」
俺は呟くと刀を二、三度振り血を払った。その時だ、今度は矢が飛んできて、俺の足元に刺さった。
「っ!」
俺はその方向を睨む、そこには数匹のゴブリンが武器を構え、こちらに迫って来ていた。
「ゴブリンは集団で動く魔物だものね、一匹だけじゃないってわけか……ター君、いくよ!!」
リサはそう言って、魔導書を開いた、そして土姫に魔力を集め始めた。
「喰らえ、タウラス・ホーン!!」
リサの詠唱に合わせる様に土姫に魔力がこもる、そしてリサは勢いよく土姫を突き出した! 牛の角のような鋭い魔力がゴブリンたちに向かっていき命中、吹き飛ばした。
「よし、今だ……行くぞ!!」
俺は刀に魔力を込めると同時に、自身の身体にも魔力を集める。そして一気に走り出し、バラバラに飛んでいくゴブリンたちの間を縫う様に走り抜け、切り裂いた!!
俺に切られたゴブリンたちはそのまま地面にたたきつけられ、動きを止めた。
「よし、じゃあ行こう、このままどこに進んだらええ?」
俺は振り返りながらリサに尋ねた。
「えっと……下……かな……」
リサは目を瞑りながら言うが俺はその言葉に眉間にしわを寄せる。
「下ってことは階層があるってことけ?」
俺の言葉にリサは目を開いてゆっくり頷く、マジかよ……。
「じゃあ、どこかに下に続く階段があるってことか……だるいけどしゃーないな、探すぞ」
俺はそう言い、歩き出した、するとだ、リサが俺の肩を掴んだ。
「ん? どうしたん?」
「そんなことしなくても大丈夫。私に任せて……」
リサはそう言うと俺にウィンクをしながら前に出ると魔導書を開いた。
「さてと……この虚無のエネルギー渦巻く場所でうまく使えるかは分からないけど、試してみますか……」
リサは息を吐く、すると彼女の足元に魔法陣が現れ、それが黄土色に光り輝いた。
「土の精霊たちよ、この地に居座る邪悪なものを探し出せ……索敵魔法……サーチ!」
リサは魔法を詠唱すると彼女の周りを小さな黄土色の人型の光が数個飛び回る。リサが右腕を上げた時、その光は拡散したようにどこかに飛んで行った。
「今のも誰かの魔法なのか……?」
俺は魔導書を閉じたリサを見ながら尋ねた。
「ええ、さっき撃ったタウラス・ホーンと同じルキウスの技よ」
リサは俺の方を振り返りながら言った、ルキウス……金牛騎士団とか言うのにいた、切れ長の目をしたあいつか……。
「お、意外と早かった……」
リサがそう言うと、俺もリサの視線の先を追う、すると正面から先ほどリサが飛ばした光が一つ、帰ってきた。
「あれ? さっきと色が違う……」
俺はリサの元に戻り彼女の周りを飛び回る光を見ながらつぶやく。先ほどは黄土色の光だったが、今は赤……というよりピンク色の光に変わっていた。
「探したものを見つけたからね……この子が教えてくれるの……さ、行こうか」
リサの言葉に俺は頷くと二人で歩き出した。帰ってきた光は俺たちを右に左に、道を案内してくれた。その時だ、リサが飛ばした別の光が強い赤で点滅しながら戻ってきた。
「警戒反応……ター君! 構えて!!」
リサはそう俺に向かって叫ぶと、土姫を構える。すると、俺達の目の前から剣を構え重厚な鎧を身に纏ったゴブリンが走ってきた。
そして一番先頭にいたゴブリンが握った両刃の剣を、リサに振り下ろした。
「ゴブリンソルジャー⁉」
リサは土姫を真上に突き出しゴブリンソルジャーの振り下ろした剣を受け止めた!
「ゴブリンソルジャー……確か成長し武器の扱いが熟練したゴブリンだったな? だが隊列が悪い! 火炎オロチ」
俺は刀を構え、炎を灯す。そして突きタイプのオロチを放った! 俺の刀から炎と共に針のような斬撃が飛び出し、前方から迫ってきている魔物たちを切り裂いた!
「ナイス!」
リサはそう言うと、一気に仲間たちが倒されたのか狼狽えているゴブリンソルジャーの首を撥ね飛ばした!
「ふぅ、まさかゴブリンソルジャーも出てくるなんて……」
「ああ、大したことはなかったけどびっくりしたな。雑魚だとは言え、何が出るか分からんからな油断せずに行こうか」
「ええ、まだ警戒反応出てるから油断せずに行きましょ」
リサがそう言うと先ほど戻ってきた赤く点滅していた光はいまだ点滅していた。彼女の言葉に俺は頷くと点滅していない光に導かれるまま足を進めた。
迷路のような通路を抜け、階段を下りる。ゴブリンが次々と現れるが、俺達は最小限の力でそいつらを薙ぎ払っていった。そして、裏路地のような、狭い通路に侵入した、その時だ。
「! ター君! 何かくる!」
リサは魔導書を開くと叫んだ、その時だ、リサの右横にある外壁が崩れた、いや違う。何かに壊された様にはじけたのだ!
「リサ!」
「っ、だ、大丈夫だよ!」
リサがそう言うと魔導書が光り輝いており、うっすらとだが彼女の半身に半透明の盾のような物が召喚されていた。
しかし、それでも壁が崩壊した勢いに吹き飛ばされてしまい、地面に膝をついており、打ち身のように赤くなっていた。
「大丈夫か?」
俺はリサの傍に駆け寄り、リサは彼女は優しく微笑んだ。良かった打ち身以外にはダメージは受けていないらしい……だが一体どこのどいつだ俺のリサを傷つけた野郎は……。
「ター君危ない!」
リサは俺の背後を見ながら目を見開いて叫んだ。後ろか……俺はリサを見つめたまま刀を振った!
「っ……お前がリサを傷つけたのか……」
俺は刀の刃で後ろにいる何かの攻撃を受け止めると、静かに呟くと立ち上がるように重心を動かし受け止めていた何かの武器を弾き立ち上がった。
「ゴブリンキング! こんなのまでいるの⁉」
リサは俺の背後にいる、二メートルは優に超えている手に大木をそのまま切り出したような巨大な棍棒を握っている、ゴブリンを見ながら叫んだ。
「ゴブリンキング……すぐに倒されるゴブリンが生き延び力を付け、成長したゴブリンの王か……だが……それがどうした……!」
俺は刀を構え、魔力を体に溜め、一気に走り抜けながら、刀を振るい、奴の背後に着地、するとゴブリンキングは振り返り、口角を上げ、何もないぞ人間めと言いたげな顔で俺を見た。
その時、奴の右腕が血しぶきを上げながらゴトンという音を立て棍棒とともに地面に落ちると、次々と体が切れていき、奴は血を噴き出しながら細切れになり絶命した。
「すごい! 太刀筋が見えなかった……今のは? 初めて見る技だったけど……」
リサは立ち上がると俺に近寄りながら尋ねてきた。
「体にデモンの魔力を纏って自分の身体機能を上げたんだ、それですれ違いざまに無双をあいつらに使ったんだ」
俺はそう言うとリサに笑顔を向けた。
「リサ、傷は大丈夫か?」
「ええ、あの程度大丈夫よ」
リサは右腕を左手で抑えながら俺に笑いかけた。その時、彼女の左手が淡い緑色の光に包まれた。回復魔法……あの程度じゃないじゃないか……。
「もう、大丈夫だって、ほらもうすぐだよ行こう!」
俺の様子に気が付いたのかリサは笑顔で言うと、進行方向を指さし、歩き出した。俺はその様子を見ると軽く息を吐いてリサの後を追った。
リサの不調は想像以上だな……だったら、俺が守るしかないな。
そしてリサと共に俺は狭い道をそのまま進む、魔物が出てくる可能性を考慮しながらだ、すると、ひらけた場所が目に留まり、リサは足を止めた。
「誰かいる……」
リサがそう言うと、俺達の目の前に、左右にステップのような物を踏んでいる人影があった。
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